【おむすびにモヤっと】一瞬の表情で孤独をにじませる歩。最後の最後でヒロイン逆転!?

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2025-03-26 17:20
投稿日:2025-03-26 17:20

最終週「おむすび、みんなを結ぶ」#123

 結(橋本環奈)は大腸がんで入院している患者・丸尾(細川岳)を担当し、食欲不振の対応に苦慮する。

 一方、歩(仲里依紗)はブランドの営業先から事務所に戻ると、詩(大島美優)がマネキンのコーディネートを担当していて、そのセンスの良さに感心する。そして歩は、他のコーディネートも詩に任せてみることにする。

【こちらもどうぞ】【おむすびにモヤっと】最終週は最後の顔見世? 糸島移住“言い出しっぺ”の愛子さん台詞を深読みすると…

【本日のモヤっと】


明暗を演じ分けた大島美優

 ※※以下、ネタバレあります※※

 詩を自宅に住まわせ、KING OF GALで仕事をさせる歩。そこで、詩が思わぬコーディネート力を発揮します。みんなに褒められて、笑顔を取り戻す詩。凍っていた心が徐々に溶けていく感じが伝わってきました。真紀ちゃんと詩という真反対の2人を見事に演じ分けた大島美優。実年齢も詩と同じく15歳、これからが楽しみです。

 その詩と歩が心を通わせていくシーンも良かったです。ともに仕事することで働く喜びを教える歩。「生きている意味がない」と言っていた詩が、歩と笑いながら食事する姿にはこみ上げてくるものもありました。ただそうなると、詩に生きる希望を見させてあげられなかった児童相談センターってどんなに劣悪な環境なのか、と疑問も。風評被害が心配です。

 そういえば、前回の放送で詩のために料理の作りおきをテキパキと作る結に、歩が「おかあさんみたい」と言ったところ「おかあさんやけん」と当たり前のように返した結に、少し微妙な表情をしていた歩。そこに歩の孤独を見た気がしたのですが、詩という存在が歩の中でも大きくなり、それが真紀ちゃんと重なり、親子のような親友のような関係性が出来上がったのかもしれません。

カウンセラーおむすびちゃん

 一方の結はといえば、食欲がないという手術を控えた大腸がんの患者に対して、食べ慣れた妻の味付けと同じ肉じゃがを作るスペシャルサービスを試みますが、一口食べるだけ。あれこれあって、結は父・聖人(北村有起哉)が入院していた際、心理的なストレスで食欲が湧かない、と言ったことを思い出します。

 急いで病室に行き、「丸尾さん、手術のこと不安に感じてませんか? 手術のことだけじゃなくて、仕事のこととか、これからのこととか?」とカウンセリングを始めた結。いつ、そんな資格を? 今に始まったわけではありませんが、あきらかに管理栄養士の領分を超えた行為です。入院患者はみんな何かしらの不安を抱えているわけで、それが食欲不振の原因だと今の今まで気づかなかったとしたら、NST不要論が出ても仕方がないのでは? と思ってしまいました。

 案の定、結のおかげで、丸尾は笑顔に。最後は結がマスクをとって満面の笑顔を見せました。なぜマスクをとったのかは謎でしたが…。

最後の最後でヒロイン逆転!?

 そして、終盤です。結に「詩を引き取ろうと思ってる」と打ち明ける歩。未成年後見人として、詩を18歳まで親代わりになって育てる、と。「いやあ~もうマジ、ここにきて米田家の呪いが発動するとはね~」と照れ隠しでおどける歩に対して、「おねえちゃん、これはいままでの人助けとは違うと」「おねえちゃんはこれから詩ちゃんの人生を背負うことになるんよ」「子どもを育てるってそういうことやけん」と結。

 ところが私たち視聴者は、結が娘の花の人生を背負うような覚悟を感じるシーンを一度たりとも見ていないので、結の言葉がちっとも響いてこないのはどうしたものでしょう。

 ラスト3話にして、ヒロインが結から歩になったようなそんな回でした。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


母ツヤ(水川あさみ)笑顔の最期、「ナレ死」に救われた
 大阪に戻ってきたスズ子(趣里)は病床のツヤ(水川あさみ)と再会する。ツヤの病状のことを受け止めきれないスズ子は、梅吉(...
桧山珠美 2023-11-23 16:05 エンタメ
六郎役・黒崎煌代の将来性、母ツヤとやり取りに泣けて泣けて笑える
 六郎(黒崎煌代)の出征の日がせまり、六郎は頭を丸め恥ずかしそうにしている。相変わらず体調が悪いツヤ(水川あさみ)は専門...
桧山珠美 2023-11-21 17:30 エンタメ
「下剋上球児」で“令和のキムタク”になりそうなイケメン俳優は?
 2019年のドラマ、「3年A組-今から皆さんは、人質です」(日本テレビ系)を覚えていますか?  菅田将暉が教師役...
「らんまん」のデジャヴ? ヤバ藤化するダンサーの中山、秋山逃げて~
 内緒の話があると松永(新納慎也)から呼び出されたスズ子(趣里)は、梅丸のライバルである日宝に一緒に移籍しないかと誘われ...
桧山珠美 2023-11-14 16:15 エンタメ
木下優樹菜から迸るガチヤンキー魂!前言撤回、TV再登場するタチの悪さ
木下優樹菜様(元タレント・35歳)  やっぱりユッキーナ(木下優樹菜)様のヤンキー魂には惚れ惚れしてしまいます。 ...
堺屋大地 2023-11-14 06:00 エンタメ
市川染五郎は眉毛、堅あげポテト、ラ・マンチャの男なくしては語れない
 先日、歌舞伎で「ルパン三世」をやることが報じられました。題して、新作歌舞伎「流白浪燦星(ルパン三世)」。  ルパ...
上原多香子は不倫を繰り返す“恋愛単発ドラマ”の女王!続編不要体質の業
上原多香子様(女優、美容家・40歳)  元SPEEDの上原多香子様は、あまり役者業のイメージはないと思いますが、す...
堺屋大地 2023-11-14 16:23 エンタメ
スズ子覚醒!茨田りつ子(菊地凛子)と渋谷のり子の表情がオーバラップ
 歌うコツを掴んだスズ子(趣里)は、羽鳥善一(草彅剛)とのレッスンを続け、その歌声はぐんと熱を帯びてきていた。  ...
桧山珠美 2023-11-10 14:30 エンタメ
“おぼこ娘2人”の初々しい恋バナ! つよぽん演じる羽鳥は「まさに笑う鬼」
 スズ子(趣里)と羽鳥善一(草彅剛)の厳しいレッスンは相変わらず続いている。しかし、羽鳥はスズ子の歌に相変わらず満足しな...
桧山珠美 2023-11-09 15:46 エンタメ
BLACKPINKの再契約なるか?「7年目のジンクス」結末に4つのシナリオ
 世界的なK‐POPブームの昨今。「コクハク」読者の中にも、K-POPにハマっている方も多いのではないでしょうか? ...
2023-11-09 06:00 エンタメ
「マイホームヒーロー」を嗜む!なにわ男子高橋“俳優武者修業”に高好感度
 すっかり忘れていました。佐々木蔵之介(55)の存在を。最後の独身大物俳優などと言われ、過去には、小野真弓や丸山桂里奈な...
大和玲子(蒼井優)の戒名に「礼」と「優」、位牌の細部にまで抜かりなし
 スズ子(趣里)たちは、大和礼子(蒼井優)が出産後に病院で亡くなったと知らされる。スズ子はお別れの会で、大和が梅丸少女歌...
桧山珠美 2023-11-03 14:30 エンタメ
スズ子のナレ出世、股野のナレ求婚…感動のシーンを描いて欲しかった!
 昭和12年、スズ子(趣里)が香川から戻ってきて3年。梅丸少女歌劇団は、秋山(伊原六花)のタップダンスとスズ子の歌を二本...
桧山珠美 2023-11-01 15:37 エンタメ
SMILE-UP.(旧ジャニ)俳優部の演技&将来性、飛躍の片鱗見せたの誰?
 嵐の二宮和也(40)がSMILE-UP.(旧ジャニーズ)からの独立を発表しました。  中丸雄一、山田涼介、菊池風...
スズ子出生の秘密に迫る香川編、ナニワの至宝&大地真央のヅカ同期が登場
 スズ子(趣里)と六郎(黒崎煌代)のふたりは、梅吉(柳葉敏郎)とツヤ(水川あさみ)の故郷である香川を訪れる。スズ子が小学...
桧山珠美 2023-10-28 06:00 エンタメ
平手友梨奈に平野紫耀ら事務所移籍組が躍動!俳優と歌手の二刀流はあるか
 平手友梨奈(22)が出演するドラマ「うちの弁護士は手がかかる」(フジテレビ系)が好評を博している。  平均世帯視...
こじらぶ 2023-10-28 06:00 エンタメ