老眼は関係ないよ? アイドルグループが皆同じ顔に見える現象で決意したこと

小林久乃 コラムニスト・編集者
更新日:2025-04-16 06:00
投稿日:2025-04-16 06:00
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まった老化現象についてありのままに綴ります。第26話は「アイドルグループ、皆同じ顔に見えるフェノメン」。

取材時の失敗に学ぶ

 若かった頃、情報番組のコメンテーターのおっさん、おばさんがこんな話をしていた。

「アイドルグループのメンバーが全員、同じ顔に見えるんですよ。これは年を取った証拠なんですかねえ」

 両親や親戚たちも口を揃えて同じような愚痴をこぼしていた。祖父母に関してはもはやアイドルグループが視界に入ってこないらしく、話題にも上がってこなかった。アイドルたちと同年代だった当時、「みんな個性があって、違う顔に見えるんだけど?」と、年寄りたちの意見に疑問に思っていた。

 それが最近、音楽番組を見ていると、どのグループも全員、同じような顔に見えてくる。どうも老眼は関係ないらしく、意識の問題。

 負け犬の遠吠えだと思ってもらって構わないが、グループメンバーの顔と名前を記憶する能力に関しては自信があった。なぜなら私の職業は“ライター”。数十年、芸能人を取材し続けているし、グループの写真集も何冊も制作をした経験がある。取材が決まれば名前と顔をデスク周辺に貼って、何度も復唱して記憶する。その合間にメンバー各々のエピソードや性格を読み込み、現場へ向かう。今でこそ、この準備は徹底しているけれど、実はかつて失敗した経験もあった。

【こちらもどうぞ】まさか痴漢に遭うとは…更年期真っ最中のおばさんの身に降りかかった「性的な危険」

 とあるデビューしたばかりの男性アイドルグループの撮影だった。連日の徹夜作業が続き、心身ともに疲弊していたことを理由にメンバー全員の名前と顔を覚え切らずに、現場へ向かった。この日の私のポジションは“編集者”。撮影全体を仕切っていく役目を担っていた。

 7~8名のメンバーを横一列に並ばせて、ハイ、撮影…のはずが、センター部分に隙間が空いている。ここを埋めたい。が、メンバーの名前がうろ覚えなうえに、撮影時間も限られていたので、調べ直している時間もない。

「AさんとBさん、ちょっと間をつめていただいてもいいですか?」

 一か八かで中心メンバーの名前を口にしてみた。が、名前当てクイズは不正解。Aさんは横並びの端に立っていたので「え…? 俺?」といぶかしげな表情で、センターのBさんに近づいていく大移動をさせられる羽目に。ああ、編集者、大失態。こんな失敗から私の「メンバーの名前と顔を一致させる、なんなら性格も趣味も好物も覚える」と、プライドの牙城が誕生したのに、それなりの年齢になったら覚えられないとは…。

髪型は一定でお願い

 また負け犬の遠吠えが続くと思って欲しいのだが「皆、同じ顔に見える現象」の原因に、ヴォーカルグループが増え過ぎている、ことも挙げられる。現状、活動中の男性グループだけでも新旧合わせておそらく100組以上は存在していて、ここに韓流系のグループが食い込んでくると総数は皆目見当がつかない。そのうえ、グループ名がほぼ英字となると脳への吸収率は格段に下がる。「なにわ男子」のグループ名が非常にありがたい。なんとなく興味を持って顔と名前を一致させても、若い男性は探究心が強いのかなんなのか、次々に髪型やメイクで雰囲気を変えてくる。こうなるともう「ウォーリーを探せ!」状態。

 ここまで下心をむき出しにして男性グループのことばかりを挙げているが、女性アイドルグループになるともう脳内迷宮入りである。年末のNHK紅白歌合戦で全員、黒髪ロングヘアの同じドレスを着られると、本当に全員同じ顔に見える。顔判別の“坂道”はどうも困難を極めるらしい。

推し活は偉業

 若い子の顔がわからなくなってくるとはなんだかな、とため息をつきたくなるけれど、特に生活へ支障は出ていないし、インタビューの仕事であれば原稿料のために記憶することはできる。問題はない。ただふと思ったのは昨今、現代人の生きる糧のようになっている“推し活”とは、カウント不可能なほどの数多の器量良し軍団から、お目当てを発掘することだと思い知らされる。目を凝らして探すのか、はたまた偶発的な出会いなのかはわからないけれど、改めて偉業だとしみじみ。今、私には推しが存在せず、誰かいないかと探しているけれど、一筋縄では行かないことをこの原稿で理解をした。明日からちゃんと歌番組を見よう。

小林久乃
記事一覧
コラムニスト・編集者
出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」にてデビュー。最新刊はドラマオタクの知識を活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社刊)。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディアの構成と編集、プロモーション業が主な仕事。正々堂々の独身。最新情報は公式HP

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


「おニュー」は昭和言葉認定なの!? 若者キョトンなアラフォー“あるある”LINE5選
 愛すべき昭和の時代に生まれた女性は、平成、令和と3つの時代に順応しながら生きています。でも、やっぱり幼い頃に体に染み付...
10年前に買った水着で区民プールへ出陣! 更年期障害と闘うおばさんの体力作り
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まっ...
同僚、元カレ、親友…感謝しかない!「頑張って」より心の支えになった応援LINE3選
 緊張している同僚、落ち込んでいるパートナー、前進するのを怖がっている友達。そんな人を支えたいときは、こんな応援LINE...
職場で嫌われる5つのタイプ。距離を置きたいよ…1番苦手なタイプは?
 どこの職場でも、「あの人とは距離を置きたいんだよね…」と周りから嫌われている人ってひとりやふたりいますよね。今回はどこ...
人生、時に足元を見よう。道端の“たまたま様”が厳かに「撫でるがよい」
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
転職10回以上、それでも非正規雇用から抜け出せない。51歳独女が語る『就職氷河期』の理不尽な現実
 パートナーなしの51歳独女ライター、mirae.(みれ)です。最近何かと話題になっているバブル崩壊後の「就職氷河期世代...
育ちがいい人がしないこと7選。無意識でも出がちな“その差”は何にある?
 育ちがいい人と育ちが悪い人、その差は一体どこにあるのでしょうか。今回は、育ちがいい人がしないことを7つ紹介します。逆に...
遺されゆくものに時間はゆっくりと過ぎてゆく
 岩手・陸前高田市の震災遺構「奇跡の一本松」と「ユースホステル」にて
【動物&飼い主ほっこり漫画】第91回「院長のオシゴト」
【連載第91回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽのお...
【女偏漢字探し】「禍」の中に隠れた漢字は?(難易度★★★☆☆)
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「校閲婦人と学ぶ!意外と知らない女ことば」では、女性...
対面トークが苦手ならなおさら…! LINEで反省の気持ちを効果的に伝える3つの極意
 人間誰しも、失敗します。でもその後の対応次第で相手に許してもらえるかどうかが決まるのも事実ですよね。  今回は、...
40代ならやめたい「やばい口癖」と「嫌われる相づち」。周囲はイライラしているかも?
 口癖は、なかなか自分では気がつかないものですよね。中にはネガティブだったり、相手をイライラさせるやばい口癖も…。  ...
我慢し過ぎてやられないで。自慢、のろけ、マウント好き女を返り討ちにした胸スカLINE3選
 世の中には、どうしても相手より優位に立ちたいがために、マウントを取ってきたり、のろけ話をしてきたりする人がいます。 ...
いつも余裕でいるために「お金よりも大事」なこと。スナックのママに教わった“人モテ”のコツ
 スナックに通うようになると、お客さんが一人だけ、なんて日に遭遇することもあります。そういう時、私は貸し切りで嬉しい気持...
キラキラ女子が嫌いな理由5選。職場でもチヤホヤされがち、嫉妬しないようにするには?
 陰キャ女子、集合! 今回はキラキラとは無縁な女性がキラキラ女子を嫌う理由のあるある5選を紹介します。「キラキラ女子が苦...
【45歳からの歯科矯正】2年後の47歳でひとまず終了。ワイヤー矯正をやって後悔、失敗したことは?
 価格は100万円前後、治療期間は最低2~3年はかかるとされる歯科矯正。決して安くはない金額をつぎ込んで、40代でやる必...