「あんぱん」蘭子と豪の秘めたる恋に“過去の名作”を思い出す。河合優実は百恵ちゃんによく似ている

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2025-05-01 19:16
投稿日:2025-05-01 16:00

第5週「人生は喜ばせごっこ」#24

 縁談の返事をしに出掛けた蘭子(河合優実)を連れ戻したのぶ(今田美桜)に、蘭子は本心を明かす。季節は巡って秋になり、うさ子(志田彩良)は薙刀の腕を上げていた。週末も稽古をしていたという彼女に、のぶは圧倒される。

 年が明け、嵩(北村匠海)の受験の日。家族の応援と草吉(阿部サダヲ)の合格あんぱんを受け取った嵩は、夢に向かって出発する。2校のうち1校が呆気なく散った嵩は、一縷の望みをかけ、東京高等芸術学校の試験に臨む!

【こちらもどうぞ】共亜事件は「虎に翼」のオマージュか。あんぱん、ブギウギの3人が同時代を生きている

【本日のツボ】

岩男、撃沈!

 ※※以下、ネタバレあります※※

 岩男(濱尾ノリタカ)、結婚相手としては申し分ないのでは。いきなり「蘭子さんをください」とやってきたのは驚きましたが……。

 たしかに、昔はガキ大将だったかもしれませんが、今はなかなかの好青年。なにより、材木問屋のお金持ちというのがポイントです。そんな岩男に見初められて嫁になるというのも悪い話ではないように思います。

「豪ちゃん、うちの縁談どう思う?」と、彼への思いを秘めて、豪(細田佳央太)に聞き、「お金持ちやし、えい話やと思います」と言われたあとの、蘭子のせつない表情がなんともいえません。

 豪ちゃんも蘭子のことが好きなのでしょうが、親方の孫娘に手をだすわけにはいかないと自制しているのでしょう。お嬢さんと使用人の秘めたる恋。谷崎潤一郎の「春琴抄」を思い出しました。遠い昔、山口百恵&三浦友和の映画を観に行ったような……。

河合優実に百恵ちゃんの面影を見る

 いまさらですが、見ればみるほど河合優実はあの頃の百恵ちゃんによく似ています。翳りがあるというか憂いがあるというか。蘭子と豪のが、結ばれますように、と願わずにはいられません。

 それにしても、蘭子と岩男の結婚話を聞きつけ、寄宿先から飛んできたのぶ。いまのようにラインで繋がっていたわけではないでしょうから、どうしてそんなに早く、情報を掴んだのか謎です。

 昭和の初期と令和の今では情報のスピードがまるで違うはずなので、フィクションとはいえ、その辺のところをおざなりにされるとムムムとなってしまいますから。

 結果、蘭子と岩男のところへのぶが乗り込んできて、家計を助けるために結婚することはない、と蘭子を引き止めます。

「それじゃ、まるで蘭子さんは好きでもない男と金目当てで結婚するみたいやんか」と岩男が言うも、間髪入れず、「はい」とのぶ。

 さらに、のぶを追ってやってきたメイコ(原菜乃華)が、パン食い競争の時に、ずるをした岩男に対し蘭子が「食パンの角に頭ぶつけて死んでしまえ、あんなやつ!」と言っていたと暴露し、さすがの岩男も撃沈しました。岩男にも幸あれ!

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


寅子「あきらめたらそこで終わり」はもしや…名作漫画のイズムにニヤリ
 傍聴した裁判について尋ねた寅子(伊藤沙莉)に対し、穂高(小林薫)は皆で議論してみるよう促す。  暴力を振るう夫か...
桧山珠美 2024-04-11 15:25 エンタメ
トラコ入学、伊藤沙莉は表情筋を自由に操る女優…男装の山田よねにも注目
 昭和7年。晴れて「明律大学女子部法科」に入学した寅子(伊藤沙莉)のクラスには女子の憧れの的の華族令嬢・桜川涼子(桜井ユ...
桧山珠美 2024-04-08 18:38 エンタメ
“お騒がせ”青井実アナが心機一転、なにわ男子の道枝駿佑と似てるって⁉
 世の中の人がNHKに持つイメージといいますと、「真面目」「お堅い」「地味」といったところでしょうか。  そんな中...
逃げ恥の百合ちゃん役が“頭のいい女は頭の悪いふりをするしかない”発言
 穂高(小林薫)に出くわしたことで女子部への出願が母・はる(石田ゆり子)にばれてしまった寅子(伊藤沙莉)。  娘に...
桧山珠美 2024-04-05 15:30 エンタメ
「虎に翼」語りは尾野真千子 NHKアナと俳優のナレーションの違いは?
 寅子(伊藤沙莉)がお見合いに苦戦する中、親友の花江(森田望智)は寅子の兄・直道(上川周作)との結婚準備を順調に進めてい...
桧山珠美 2024-04-05 15:14 エンタメ
「虎に翼」シン・朝ドラの予感!わずか1話、たった15分で心つかんだ描写
 昭和6年・東京。女学校に通う猪爪寅子(伊藤沙莉)は父・直言(岡部たかし)、母・はる(石田ゆり子)から次々とお見合いを勧...
桧山珠美 2024-04-01 22:28 エンタメ
僥倖!世界に挑む赤西仁ほど「サムライマック」のCM向きな俳優はいない
 マクドナルドのCMにイケメンあり!  そんな声をちらほら耳にするようになりました。たとえば4月2日から全国放送さ...
平野らTOBEがドーム公演大成功の一方、暗雲立ち込める旧ジャニの逆転は
 3月14日から17日にかけて、滝沢秀明氏創設のTOBE所属アーティストによる東京ドーム公演「to HEROes ~TO...
こじらぶ 2024-03-30 06:00 エンタメ
ブギウギ最終回、水を差すようでスンマセン! 残念すぎる4つの演出と描写
 スズ子(趣里)のさよならコンサートが始まる。客席には懐かしい多くの面々がかけつけている。茨田りつ子(菊地凛子)、愛子(...
桧山珠美 2024-03-30 11:41 エンタメ
スズ子引退会見、“天敵の文屋”鮫島の「シャッポを脱ぐ」演出を読む
 歌手・福来スズ子(趣里)の引退会見の当日。スズ子は結局、羽鳥善一(草彅剛)とは話ができないまま会見に臨むことになってし...
桧山珠美 2024-03-27 14:30 エンタメ
超鈍感力! 羽鳥の絶縁宣言を屁とも思わないスズ子とタケシは似た者同士
 歌手引退――。スズ子(趣里)はその決断を、愛子(このか)や大野(木野花)に伝えた。  羽鳥善一(草彅剛)に絶縁す...
桧山珠美 2024-03-26 15:40 エンタメ
「GTOリバイバル」注目の新人イケメンは?松嶋菜々子は本当に出るのか
 反町隆史主演「GTO」が26年ぶりに帰ってきます。反町演じる元ヤン教師・鬼塚英吉がさまざまな問題を解決する学園モノで、...
ドヤ顔のアユミとヘイヘイブギー歌唱シーン温存の理由がわかる回だった
 昭和31年、大みそか。第7回オールスター男女歌合戦当日。スズ子(趣里)は、楽しみに会場へと向かう。スズ子が楽屋で支度を...
桧山珠美 2024-03-22 14:30 エンタメ
最終回秒読み…スズ子はブレずにお人よし、NHKと沼袋勉の手腕いかに!?
 愛子(このか)は、翌日の体育の時間に足の早い転校生と競争することになっていた。しかし、勝てる見込みがなく、愛子は学校を...
桧山珠美 2024-03-21 16:07 エンタメ
和田勉が転生したら中村倫也に!? 強烈インパクトで霞んだ礼子娘の初登場
 東京ブギウギのヒットから9年、ブギブームも下火になってきつつある中、スズ子(趣里)や羽鳥善一(草彅剛)のブギは古いとい...
桧山珠美 2024-03-18 14:30 エンタメ
「光る君へ」主人公バージン喪失!大石静氏が描く平安エロ&バイオレンス
 NHK大河ドラマ「光る君へ」は、平安中期の貴族社会を舞台に、吉高由里子演じる主人公のまひろ(紫式部)の生涯を描くもので...