慶応幼稚舎の願書備考欄に「親族が出身者」と書くメリットは? 縁故入学が横行していた過去の例

更新日:2025-05-06 16:38
投稿日:2025-05-06 16:35

【お受験のリアル】#6

 早実初等部vs慶応幼稚舎(6)

  ◇  ◇  ◇

 私立小学校最難関の慶応幼稚舎の入試攻略本を見ていると「家族に慶応出身者がいるのなら、願書に記入しておく」といった一文を目にすることがある。願書には父母と兄弟の氏名・年齢を記入する家族の欄があるが、学歴を書く場所は見当たらない。攻略本は、家族欄の横にある備考欄に慶応出身であることを書き加えておけば、受験に有利に働くとアドバイスする。だが、「まったく意味がない」と一笑に付すのは幼稚舎の関係者だ。「こざかしく映り、むしろ逆効果」とまで言い切る。

 誤った説が攻略本に堂々と載るのは、それが巷でずっと信じられてきた表れ。幼稚舎出身の慶応大教授も「かつて、近い親族に慶応OB・OGがいれば、合格しやすかったのは事実」と話す。

「幼稚舎の保護者会に集まるのはほとんどが塾員(慶応OB・OG)で、さながら同窓会のようだと父が語っていた」

■石原慎太郎の息子、森英恵氏の孫のパターン

 40年以上前の記憶をたどる教授だが、幼稚舎の生徒の家族に慶応出身者がやたらと目立つ状況は少なくとも四半世紀前までは続いていたようだ。それは親に塾員がいるケースだけではない。幼稚舎に合格しやすいもうひとつのパターンは兄や姉に塾生(慶応の現役生)がいるケース。それが幼稚舎ならなおさらだ。実際、幼稚舎出身の有名人を見ても、兄弟がそろって幼稚舎というパターンは多い。石原慎太郎・元都知事の息子4人のうち次男・良純、三男・宏高、四男・延啓が幼稚舎出身。

「慎太郎さんは一橋大出身で慶応とは関係がないが、叔父の裕次郎さんが塾高出身。何より大きいのは長男の伸晃さんが中学から慶応普通部に入学したこと。慶応への橋頭堡を築き、弟たちの幼稚舎への道を切り拓いた」(慶応大教授)

 慶応大理工学部教授だった千住鎮雄氏の子どもの博、明、真理子、ファッションデザイナー森英恵氏の孫の研、勉、泉、星の兄妹も幼稚舎出身だ。挙げだしたらきりがないが、ここに名前が登場したOB・OGたちはいずれも20世紀中に幼稚舎に入学している。21世紀に入ると、こうした例はガクッと減る。99年4月から3年半にわたって幼稚舎の舎長(校長)を務めた金子郁容・慶応大教授(現名誉教授)が入試改革に踏み切ったからだ。

「自身も幼稚舎出身の金子先生は縁故入学が横行していたことを承知していた。これを変えなければ時代に取り残され、名門小の地位も失うと危機感を抱いていた」と振り返るのは金子氏をよく知る前出の教授だ。入試は受験者本人の実力で判断するべきという強い意志を金子氏は持っていた。

 改革のひとつは、願書の家族の欄を簡素化したことだった。まず、祖父母の欄をなくした。それまでは、祖父母の氏名に加え、学歴や経歴まで書かせていたのだ。

「おじいさんが慶応の重鎮だったり、政財界の大物だったりすると、それだけで合格していた。そんなことはもうやめようというのが金子先生の主張だった」(同教授)

 前述の通り、親と兄弟も願書に記入するのは氏名と年齢だけにした。さらには「親の素性など関係ない」という方針を徹底するように、保護者面接もなくした。

 一方、ライバルの早稲田実業初等部は創設以来、入試の親子面接を続けている。「かつて親の入試とも称された幼稚舎が"らしさ"をかなぐり捨てたのとは対称的」と幼児教室経営者。「独立独歩」を校訓とする早稲田だが、小学校ではすっかり早慶が入れ替わったような感じである。

(田中幾太郎/ジャーナリスト)

  ◇  ◇  ◇

「慶應ブランド」はいつの世も最強カードかと思いきや、思わぬ事件で権威に傷がついてしまった。関連記事【もっと読む】櫻井翔、猿之助、岸田首相長男で「慶応ブランド」危うし…芦田愛菜がイメージ回復の救世主?…では、「ダメ慶應」の面々と、それを跳ね返せる人員について伝えている。

エンタメ 新着一覧


横浜流星は“まだ誰のモノでもない”感も含めて尊い! NHK大河が「べらぼう」に面白い
 NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~」がスタートしました。主人公の蔦屋重三郎を...
【おむすびにモヤっと】メンチ切り合った2人がなぜ? 見たいシーンを出し惜しむのが「おむすび」クオリティ
 結(橋本環奈)と翔也(佐野勇斗)は、保留とされていた結婚を進めるため2人が考えた生活プランを親たちに説明する。会社で初...
桧山珠美 2025-01-11 06:00 エンタメ
【おむすびにモヤっと】サザエさん風に「歩、スマホを買う」「結、節約に目覚める」「翔也、仕事する」の3本
 歩(仲里依紗)に、聖人(北村有起哉)がまた携帯電話を買ったのか問うと、歩はスマートホンだと答える。新しい出始めの商品に...
桧山珠美 2025-01-08 17:30 エンタメ
「べらぼう」初回、セクシー女優3人が裸死体姿に…AV業界人どう見た?「裸に意味を語らせる照明が必要」
 5日にスタートした横浜流星(28)主演のNHK大河「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~」(NH...
【募集】冬ドラマ何見る?『べらぼう』『家政夫のミタゾノ』『日本一の最低男』など期待&ガッカリ教えて!
 コクハクでは2025年冬ドラマを対象としたアンケートを実施します。あなたが現時点で「楽しみにしている」ドラマ、そして「...
【おむすびにモヤっと】「プロフェッショナル」で壮大なネタバレ感!14週は元スケ番vs元レディースの様相
 結(橋本環奈)が糸島から神戸に帰ってきて愛子(麻生久美子)や歩(仲里依紗)が迎える。だが、一緒に永吉(松平健)と佳代(...
桧山珠美 2025-01-31 16:57 エンタメ
【2024年人気記事】伊藤健太郎は破局して正解! “小栗旬軍団”加入でバーター出演の機会にも恵まれる
 あけましておめでとうございます。2024年は「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記...
【2024年人気記事】悪評だらけの天才、平手友梨奈が遅刻やドタキャンを繰り返す本当の理由
 あけましておめでとうございます。2024年は「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記...
堺屋大地 2025-01-04 06:00 エンタメ
【2024年人気記事】松本人志はいまや「憧れの芸人」ではない。若手芸人が話す3つの理由
 あけましておめでとうございます。2024年は「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記...
帽子田 2025-01-02 06:00 エンタメ
【2024年人気記事】なぜ塚地武雅、藤井隆はドラマ出演が続く? 不人気芸人との決定的な違い
 2024年も「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記事を再掲載します。こちらの記事初...
【2024年人気記事】『新宿野戦病院』小池栄子の英語、海外はどう思う?「下手というより…」
 2024年も「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記事を再掲載します。こちらの記事初...
映画「聖☆おにいさん」全力でおバカを演じる松ケン&染谷将太たち。評価は真っ二つだけど…
「M-1グランプリ2024」の準優勝バッテリィズに元気をいただきました。エースでしたっけ。やはり“おバカ”は最強です。優...
ラウール、高橋文哉…2024年「国宝級に検索されたイケメン大賞」TOP5の最も検索された日は…?
 2024年もあとわずか。今回は今年1年を通じて活躍したイケメンが、いかに世間の人々の注目を集めたかを調べてみたいと思い...
こじらぶ 2024-12-28 06:00 エンタメ
【最新回のおむすびにモヤっと】「豚肉と玉ねぎのニンニク炒め」はサラダの後に作ったほうが…
 スナック「ひみこ」で、佳代(宮崎美子)と話す結(橋本環奈)。永吉(松平健)とただいるだけで幸せだと言う佳代の言葉を聞い...
桧山珠美 2024-12-27 19:30 エンタメ
「M-1」令和ロマンが主人公なら、エバースは裏主人公。泥臭い秀才コンビを応援したくなるのが人のサガだ
 今年も最高の盛り上がりを見せた「M-1グランプリ」(ABC・テレビ朝日系)。令和ロマンが史上初の2連覇を果たしたものの...
帽子田 2024-12-27 06:00 エンタメ
面白かった「秋ドラマ」を調査!『海に眠るダイヤモンド』を抜いた1位は?期待外れに“あの作品”がまた…
 続々とクライマックスを迎えている2024年秋ドラマ。今期は見ごたえたっぷりの作品が揃い、ドラマに夢中になっていた人も多...