既婚、さらに子供も
私は直樹さんの整った横顔にキュンとなりながら、たずねていました。
――ええ、女装の時はもちろん。
――では、女装じゃない時は、普通に男性の声色や言葉づかいで?
――そうよ。私は女性になりたいんじゃなくて、あくまでも女装が趣味なの。結婚だってしてるし、子供だっているわ。
――えっ、ご結婚されているんですか?
――そうよ。悪い?
直樹さんはアイラインに彩られた瞳をキッと吊り上げたんです。
それがまた色っぽくて…。
低音ボイスが甘く響いて
――い、いえ…とんでもない…もちろん、ご家族には内緒ですよね。
――内緒にしていたけれど、3カ月前に妻にバレちゃったのよ。車のトランクに入れていたドレスやランジェリー、ハイヒール、メイク道具、ヌーブラを詰めたバッグが見つかっちゃって(笑)。
――えええっ、奥さまは何て?
――驚いていたようだけど、別に離婚などの話は出なかったわね。子供もまだ小さいし。あ…私は43歳で、息子は5歳なの。将来は女泣かせになるイケメンよ。
――直樹さんもイケオジですものね。
――ちょっとぉ、今はナンシーなんだからイケオジじゃなくて、美女って言いなさい!
――す、すみません!
ツッコまれながらも私のときめきはエスカレートするばかり。女装しているとはいえ、彼の顔立ちはタイプで、耳触りのいい低音ボイスが鼓膜に甘く響いてくるんです。なぜ、こんな魅力的な人が女装を…?
そう思った時、直樹さんは私をじっと見つめてささやきました。
――ねえ菜々美ちゃん、アンタ今、私がどうして女装子になったか、気になっているでしょう?
急に、図星をさされてしまったので、笑ってごまかすだけで精一杯でした」
菜々美さんは、心の中まで見透かされて、ますますドキドキが止まらなかったという。
まさかの再会
しかし翌週、彼女はさらに驚かされることになった。
「翌週、 働いている赤坂のクラブでママと黒服に呼ばれて、私は凍りつきました。
――菜々美ちゃん、ご指名よ。新規のお客様ですって。
――先週はどうも。名刺をもらったから来てみたよ。
通された席には、スーツ姿の直樹さんが座っていたんです」
続きは次回。
関連記事
ラブ 新着一覧
