倦怠感、それは突然、嵐のように…
こんなにも自分の体が信用できなくなるとは思わなかった。これが更年期真っ只中の女の本音。完全な治療方法もなく、病状は十人十色で個性的。ゴールも見えないまま、今日もいつ勃発するか分からない症状に怯えている。そう、数多ある症状で一番厄介なのは、更年期障害の症状は神出鬼没であること。
先日、ちょっとした事件があった。
日中、カメラマンと共にロケハンをしてワンボックスカーに揺られていた。この時点ではなんともなかったのに、問題は解散後。家路に着くために今度はバスに揺られていた。混雑する車内、季節外れの暑さに対処したエアコンの冷風が当たる。発車して数分後、気分が悪くなってきた。胃がムカムカして、汗のせいか体は冷たい。まとめると倦怠感とでも言うのか。
(なんだろう、今日一日乗り物に揺られていたから、車酔い? いやそんなはずはない幼稚園から乗り物酔いだけはしなくて、むしろ酔って先生にお世話されている先頭席の友人がうらやましかったじゃないか。お昼はー……生物は食べていない。なんでこんな気持ち悪いんだろう、二日酔い? 今、もう夕方じゃん。あ、ちょっと待てよ。去年、卵巣がんになった友人、当初はすっごい気持ち悪い日々が続いたって言ってたよね。来たかな〜、来たかな〜。私ひょっとしてがん…? あれ、3月の人間ドッグ、胃酸が多かっただけだよね)
倦怠感の原因究明だけで脳はフル稼働。たった5分足らずで、がんの疑念を持つまでに…。ま、更年期は自律神経が乱れて、気分のアップダウンも激しいので、この程度の思考は通常運転。
途中、老人が乗車をしてきた。少し動けば譲れそうだとマナー精神が発動。が、今、立つような元気が本当にない。まんまるで小太りの元気そうなおばさん体型をしているので、見た目は俄然元気だけど、今だけ本当に具合が悪い。私は席を譲ろうと、少しだけ上げた尻をもう一度座席につけた。以前、この連載にも書いたけれどこう言うときこそ、更年期バッジが欲しい。
(もし、席を譲って、私が嘔吐したら座っている人に迷惑をかけるじゃない…? ねえ、そうだよね、ってこれ脳内の独り言か)
バッグから水筒を取り出して、お茶を飲む。少しだけ胃が落ち着いた。こんな時に役立つので、最近は水分を携帯するようになった。できれば炭酸水を飲んだほうがさらに胃は落ち着く。そして私はぼんやりと、違う思考を始めた。
(…夕飯、何食べようかな)
自分の体調が本当に信じられなくなる瞬間だ。バスに乗車して20分過ぎ、倦怠感がすごい、胃がおかしいとひとり脳内で騒いで病人ぶっておきながら、少し治ると、夕食に何を食べようと考え始めている。つまり食欲だけはある。悔しいけど、旺盛。これが更年期だ。知っておいてほしい。
(なんだろう、今日はカレーが食べたい。あと家にズッキーニがあったから白だしでジュワッと焼いて、ワカメとツナでマヨサラダでも作るかなあ。あ〜、気持ち悪い)
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