中山美穂さん急死から7カ月…"育ての親"がついに明かすトップスターの素顔と生い立ち

更新日:2025-06-29 17:03
投稿日:2025-06-29 17:00

 2024年12月6日、"ミポリン"の愛称で親しまれた中山美穂さん(享年54)が急死して、間もなく7カ月が経つ。1985年、大ヒットドラマ『毎度おさわがせします』(TBS系)でブレークし、スターダムを駆け上がる美穂さんを中学1年生の時ににスカウトし、トップスターに育て上げた芸能プロダクション「ビッグアップル」の創業社長である山中則男氏が、当時の衝撃をこう振り返る。

■訃報を聞いた日は「ベッドで横になるしかなかった」

「当日の午前11時過ぎに私のガラケーが高い音で鳴りましてね。出たらビッグアップルの鈴木伸佳現社長が『美穂が亡くなりました』って言うんです。病気の話なんて全く聞いていなかったし、美穂は翌日から40周年でコンサートもあってドラマの話も決まっていた。信じられませんでした」

 それから山中氏の目まぐるしい日々が始まった。

「とにかく誰にも言わないでほしいと頼まれましてね。美穂と私が長きにわたってお世話になってきたバーニングプロダクションの周防郁雄会長からも連絡があって、情報解禁までは関係者にマスコミにも黙っていて欲しいと。自分が何を話したか分からないほど混乱していて、電話を枕元に置くのも嫌で離れた所に置きました。心臓もバクバクして、このまま起きていたら倒れてしまうんじゃないかと思って、布団をかぶって寝るしかなかった。親兄弟が来ても、話せなかったでしょうね」

 今年4月にはお別れの会が開かれ、美穂さんと親交のあった人たちが別れを惜しんだ。その中には山中氏の姿もあったが、今年6月20日に初の著書「中山美穂『C』からの物語」(青志社)の出版に踏み切った。本には育ての親の山中氏しか知らない美穂さんの複雑な生い立ちから、原宿駅竹下通りで当時中学1年生だった美穂さんをスカウトした時のこと、大スターに駆け上がるまでの過程が詳細に書かれている。

 山中氏はどんな思いでこの本を書いたのだろうか。

「最近の美穂のことを知っている方はたくさんいますが、私と出会った40年前の頃の話は知らない方がほとんどだと思うんですね。私じゃなければ知らない話もたくさんありますし、出版社から『本にしたらどうですか』という話をいただき、歴史的な意味もあると思って書くことにしました。これまでのいろいろなことが頭の中をかけ巡って、正直、辛い気持ちもありましたが、『中山美穂というタレントを作って良かった』と改めて思いました」

「目の輝き」がスカウトの絶対条件だった

 著書には美穂さんとの出会いについて、《身長はおよそ160センチあるかないかで細い身体つきだが、小顔で目鼻立ちがはっきりとして特に目の印象が強く、人を惹きつける瞳に、この少女の1年後、2年後、3年後の顔を想像した。スター性を持っている。すでにちょっとした仕草が大人びていてこの少女が持つ芯の強さを感じた。年齢を聞くと「12歳です」と答えた》《笑うと八重歯が見えて、チャームポイントになっている。何よりも表情に人を惹きつける力を持っている。あの大女優夏目雅子さんの少女時代を思わせる顔立ちだった》と出てくる。

「久しぶりに美少女を見たという印象でしたね。目がとにかく良かった。プロの私たちから見ると、目の輝きはスカウトの際の絶対条件なんです。そして私は夏目雅子さんみたいな雰囲気を持っている子だなと感じました。美穂自身、中森明菜さんと同じくらい夏目雅子さんのファンだったわけですが、まさか美穂が夏目さんと同じように若くして亡くなるとは思いもしませんでした..」

■「ママに家を建ててあげたい」と涙の告白

 山中氏が美穂さんを語る上で欠かせないのが、美穂さんの生い立ちだという。美穂さんの母親は、18歳で美穂さんを私生児として産み、苦労しながらも大切に育てたそうだ。その母親を交えた"三者面談"で、こんなやりとりがあったという。

《「私は、お母さんを楽にさせてあげたい。いままでお母さんは苦労して、私と妹を育ててくれました。お金がないのに、私の我儘を何でも聞いてくれた。だから頑張って楽をさせてあげたいのです」と涙ながら僕に伝えた。隣に座っている母も涙ぐみながら、「美穂が選んだ道です。美穂、やりたいんなら、やりなさいと言いました。どうかよろしくお願いします」そう話して深々と頭を下げた》

「そうなんです。お母さんを呼んで3人で話していた時に、美穂が『ママがすごく苦労してきた。家を建ててあげたい』と泣いたんですね。その時、なんとかこの子の夢をかなえてあげたいという思いが生まれました。それで自分が勤めていた事務所を退社して、新たな事務所を作ることになったんです」

中森明菜、斉藤由貴、松本伊代みたいな“狸顔”がモテた時代に…

 しかし、それからは苦労の連続。東京都渋谷区の参宮橋に事務所兼自宅を構え、家賃は3万5000円。中学生だった美穂さんは学校が終わると小金井から電車でやってきて、オーディションを受けまくるもいつもあと一歩のところで落選してしまう。その理由について、山中氏は著書でこう振り返っている。

《1982年(昭和57)から1983年(昭和58)にかけて、芸能界はアイドルとして活躍していた歌手やタレントは、いわゆる狸顔がモテた時代で、斉藤由貴、中森明菜、松本伊代、菊池桃子、石川秀美らがいて、猫顔の美穂のような顔立ちは時代が少し早すぎた》

■「次に来るのは猫顔」と信じてついにつかんだビッグチャンス

 しかし、「この次に来るのは、絶対に猫顔」と信じ、美穂さんを連れて広告代理店参りを重ねる間に、ついにビッグチャンスが訪れる。最終回で視聴率26.2%を叩き出したTBSの伝説的テレビドラマ『毎度おさわがせします』のオーディションに受かったのだ。美穂さんも山中氏も大いに喜んで、二人だけでステーキ店でささやかなお祝いをしたという。しかし、いざじっくり台本を読むと、男の子の部屋になったり、下着姿になったりと、エッチなシーンがワンサカ。当時14歳だった美穂さんに本当にこの役を演じさせていいのか…。山中氏にはそんな葛藤が生まれたという。

「ところが美穂に聞くと『チャンスだよね』と。確かに台本は過激でしたが。私たちは2人きりの小さな事務所。失うものはなかった。そしてじっくり本人と話し合って、『やってみようよ』と。彼女は苦労もしていたので、根性もあったんでしょうね。撮影現場では泣き出したり、制作スタッフに怒鳴られたりもしましたが、そのたびに励まして、『このドラマが放送されたら話題になると思うよ』と話しました」

 一夜にしてスターとなった美穂さんは、1985年(昭和60)7月18日、デビュー曲「C」でTBS系の「ザ・ベストテン」に初登場。翌週から「C」は9週連続でランクインし、一躍レコード大賞新人賞のダークホースの一人となる。さらに1987年放送のドラマ『ママはアイドル!』は最高視聴率28.6%を記録。NHK紅白歌合戦には1988年から7回連続で出場した。

■天国に行けたら「お疲れ様」とねぎらいお礼を伝えたい

 もし天国で美穂さんと再会できたら、山中氏にはかけたい言葉があるという。

「『お疲れさま』ですね。頑張ったなって。いつも言うんですが、美穂のおかげで私はいろんな人と出会えました。もし美穂と出会わなくて、違うタレントをやっていたら、これだけの素晴らしい人たちとは会えなかったかもしれない。美穂のおかげで私の人生が作られたんです。向こうに行ったら改めてきちんとお礼を伝えたいですね」

  ◇  ◇  ◇

 突然の最期を迎えた中山美穂さんの死因は入浴中の事故だった。関連記事【もっと読む】中山美穂さんの死因は入浴中の事故…全国の「入浴中急死者数」は年間約1万9000人で交通事故より多い…では、意外に多い、その死者数について伝えている。

エンタメ 新着一覧


【おむすびにモヤっと】“不揃い”な春キャベでロールキャベツ? 平成のバカップルにこうのとりが…
 2010年春、結(橋本環奈)と翔也(佐野勇斗)は大阪のアパートで新婚生活を始める。家事を分担しながら共働きをして公私と...
桧山珠美 2025-01-13 18:30 エンタメ
横浜流星は“まだ誰のモノでもない”感も含めて尊い! NHK大河が「べらぼう」に面白い
 NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~」がスタートしました。主人公の蔦屋重三郎を...
【おむすびにモヤっと】メンチ切り合った2人がなぜ? 見たいシーンを出し惜しむのが「おむすび」クオリティ
 結(橋本環奈)と翔也(佐野勇斗)は、保留とされていた結婚を進めるため2人が考えた生活プランを親たちに説明する。会社で初...
桧山珠美 2025-01-11 06:00 エンタメ
【おむすびにモヤっと】サザエさん風に「歩、スマホを買う」「結、節約に目覚める」「翔也、仕事する」の3本
 歩(仲里依紗)に、聖人(北村有起哉)がまた携帯電話を買ったのか問うと、歩はスマートホンだと答える。新しい出始めの商品に...
桧山珠美 2025-01-08 17:30 エンタメ
「べらぼう」初回、セクシー女優3人が裸死体姿に…AV業界人どう見た?「裸に意味を語らせる照明が必要」
 5日にスタートした横浜流星(28)主演のNHK大河「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~」(NH...
【募集】冬ドラマ何見る?『べらぼう』『家政夫のミタゾノ』『日本一の最低男』など期待&ガッカリ教えて!
 コクハクでは2025年冬ドラマを対象としたアンケートを実施します。あなたが現時点で「楽しみにしている」ドラマ、そして「...
【おむすびにモヤっと】「プロフェッショナル」で壮大なネタバレ感!14週は元スケ番vs元レディースの様相
 結(橋本環奈)が糸島から神戸に帰ってきて愛子(麻生久美子)や歩(仲里依紗)が迎える。だが、一緒に永吉(松平健)と佳代(...
桧山珠美 2025-01-31 16:57 エンタメ
【2024年人気記事】伊藤健太郎は破局して正解! “小栗旬軍団”加入でバーター出演の機会にも恵まれる
 あけましておめでとうございます。2024年は「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記...
【2024年人気記事】悪評だらけの天才、平手友梨奈が遅刻やドタキャンを繰り返す本当の理由
 あけましておめでとうございます。2024年は「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記...
堺屋大地 2025-01-04 06:00 エンタメ
【2024年人気記事】松本人志はいまや「憧れの芸人」ではない。若手芸人が話す3つの理由
 あけましておめでとうございます。2024年は「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記...
帽子田 2025-01-02 06:00 エンタメ
【2024年人気記事】なぜ塚地武雅、藤井隆はドラマ出演が続く? 不人気芸人との決定的な違い
 2024年も「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記事を再掲載します。こちらの記事初...
【2024年人気記事】『新宿野戦病院』小池栄子の英語、海外はどう思う?「下手というより…」
 2024年も「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記事を再掲載します。こちらの記事初...
映画「聖☆おにいさん」全力でおバカを演じる松ケン&染谷将太たち。評価は真っ二つだけど…
「M-1グランプリ2024」の準優勝バッテリィズに元気をいただきました。エースでしたっけ。やはり“おバカ”は最強です。優...
ラウール、高橋文哉…2024年「国宝級に検索されたイケメン大賞」TOP5の最も検索された日は…?
 2024年もあとわずか。今回は今年1年を通じて活躍したイケメンが、いかに世間の人々の注目を集めたかを調べてみたいと思い...
こじらぶ 2024-12-28 06:00 エンタメ
【最新回のおむすびにモヤっと】「豚肉と玉ねぎのニンニク炒め」はサラダの後に作ったほうが…
 スナック「ひみこ」で、佳代(宮崎美子)と話す結(橋本環奈)。永吉(松平健)とただいるだけで幸せだと言う佳代の言葉を聞い...
桧山珠美 2024-12-27 19:30 エンタメ
「M-1」令和ロマンが主人公なら、エバースは裏主人公。泥臭い秀才コンビを応援したくなるのが人のサガだ
 今年も最高の盛り上がりを見せた「M-1グランプリ」(ABC・テレビ朝日系)。令和ロマンが史上初の2連覇を果たしたものの...
帽子田 2024-12-27 06:00 エンタメ