それ以上でもそれ以下でもない関係
彼は見た目も心も少年のような人だ。齢35にもかかわらず、28歳の私と同じくらいの感覚だ。
舞浜のテーマパーク、カラオケ、スポッチャ、歌舞伎町タワー。大学生みたいな、楽しい場所に彼はいつも行きたがった。そして、めちゃくちゃはしゃぐ。どうやら学生時代は陰キャだったらしい。
わたしたちは恋人同士というより、時間や記憶をなくすまで、呑んで、笑いあって、遊ぶ同志のような関係である。
元々は上司という存在だったけど、私の転職によって波風が立って、男女関係があるだけの単なるフツーの飲み友達で、遊び友達になった。
もしこの繋がりが共通の友人や、彼の奥さんと小学生だという子供にバレた時、周囲に言い訳する準備もできている。
お互い同意の上の『遊び友達』。それ以上でもそれ以下でもない。楽しい、だけの関係だ。
割り切ってはいるけれど…心が消耗するのはなぜ?
目の前にある飛び込み台。
12歳くらいの男の子が、家族に見守られながら飛び込んでいた。きっと、彼も喜んで飛び込むだろう。想像するだけで微笑ましい。でも……。
――本当に、仕事なのかな?
よぎる疑念。流れるプールで大はしゃぎする家族連れを眺め、根拠のない勘繰りがぐるぐる回っている。
彼と交際しだしてから、他人の言葉をそのまま受け取れない病気にかかってしまった。そして、悪い妄想をして意味もなくドプンと沈む。
何の得もないのに。
なぜ自分だけこんな嫌な気分にならなきゃいけないのか。そこのところ、フェアじゃないのが悔しい。だからインスタでは、例えひとりきりのおでかけでも、他にいい人がいる雰囲気を匂わせる演出をしている。
何の得もないのに。
ただ、その行為は私の精神衛生上は必要なのだ。
話しかけてきた子連れの女は誰なの
「すみませーーん」
しばらくビーチで昼寝していると、隣のパラソルの下にいた女性に話しかけられた。
自分と同い年くらいのビキニの女性だった。6、7歳くらいの兄妹と生後半年もしていないであろう赤ちゃんを携えていた。
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