「あんぱん」八木(妻夫木聡)の“言葉”に心が動かされた…。トンデモ演出にちょっとだけ不安

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2025-07-24 16:39
投稿日:2025-07-24 16:39

第17週「あなたの二倍あなたを好き」#84

 地震から2日後。未だ高知と連絡がつかず、居ても立っても居られないのぶ(今田美桜)。そんなのぶに、八木(妻夫木聡)はあいつは死にはしないと声をかけ、戦地での嵩(北村匠海)の話をし始める。聞いていたのぶは、嵩の存在の大きさに気づき……! 同じころ、嵩を案じて何も手につかない東海林(津田健次郎)たち。

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【本日のツボ】

嵩の存在の大きさにようやく気がついたのぶ

 ※※以下、ネタバレあります※※

 史実と虚構が綯い交ぜの「あんぱん」ですが、この高知に起きた地震(昭和南海地震)は史実です。高知と連絡がつかないまま数日、心配で心ここにあらずののぶに、「あいつは死にゃしないよ」と話しかける八木。

「悪運が強いからな……。大陸の駐屯地に居た時、あいつは何度も死にかけているんだ。運よく戦闘には巻き込まれなかったが、飢え死にしそうになったり、マラリアにも罹った。もうあいつは駄目だとみんな思った」。

 八木の話に、「どういて助かったがですか」と尋ねるのぶに、「瀕死の時に救援隊から食料やら薬が届いて、ギリギリ助かったのさ」と八木。

「悪運と、もうひとつ。戦地に行く前に言ってたよ。自分はどうしても生きて帰りたい。何のために生まれてきたのか、その意味すらまだわからないからって」。

「嵩、そんなに大変な目をして帰ってきたがですね」と、初めて聞く戦地での嵩を知り、それにも関わらず、自分が辛い時に励ましてくれたことを思い出すのぶ。

「嵩はそういう人ながです。子どもの頃から、うちには、なくてはならん人ながです」。そんなことを言ってしまった自分に戸惑い、「うち、何言うがやろ」と、この時、のぶは初めて嵩の存在の大きさに気がついたようでした。ようやくです。

「ほんまに馬鹿ですねえ。今頃、気が付くらぁて」とのぶ。「まあ、失いそうになって初めて気づくこともある。その大切さに」と八木。

 この場面、久々に心が動かされるいいシーンでした。

人の恋路でおどけている場合なのか?

 そして、月刊「くじら」編集部。みんなが心配するなか、ぼーっと現れた嵩。「寝てました」。徹夜続きだったので、揺れで起きたものの、また寝てしまった、と。いかにも嵩らしいエピソード、これも史実らしいです。

 ようやく繋がった電話で、嵩の安否を知ったのぶ。安心するものの、嵩の「寝てた」発言にブチ切れます。そんなやりとりの後ろで、おどけているような薪鉄子(戸田恵子)と秘書の世良則雄(木原勝利)。

 のぶの一家は全員無事だったとしても、依然、緊迫している状況のなか、人の恋路でおどけている場合ではないと思うのですが……。キャラ崩壊のとんでも演出に一抹の不安が。

桧山珠美
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TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

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