ジャンルMIXなJホラーがこの夏のトレンド 注目は「近畿地方のある物件について」と「事故物件ゾク 恐い間取り」

更新日:2025-07-31 17:03
投稿日:2025-07-31 17:00

 世情が不安な時代にはホラー映画がはやるというが、今年はトランプ関税による経済状況や、いつ沈静化するかわからない群発地震などを思うと、まさに不安の要素が多い年。だからだろうか、秋にかけてホラー映画が続々と公開される。

 今年6月から10月までの日本のJホラー映画(公開日の表記がないものは公開済み)を俯瞰してみると、幽霊が見えることを人には隠したい女子高生を描いた「見える子ちゃん」と、童貞少年の血を吸いたいバンパイアが主人公の「ババンババンバンバンパイア」は、“青春コメディーホラー”。

 現実には存在しない駅から異世界へ向かうヒロインが、他人を救うために何度も同じ旅程を繰り返す「きさらぎ駅 Re:」や、見たものに違和感を覚えたら来た道を戻らないと地下道の出口にたどり着けないゲームが原作の「8番出口」(8月29日公開)、ある体のパーツを全部見つけないと同じ時間軸の中で何度も殺されてしまう高校生たちを描いたヒット作の続編、「カラダ探し THE LAST NIGHT」(9月5日公開)は、体を探す舞台を学校から遊園地に変えて描いている。これらはミッションをクリアしないと、繰り返す時間の中から出られない“ループホラー”作品だ。

 他にも、長澤まさみ主演、念のこもった人形と出合い、家族がメンタル崩壊していくドールミステリー「ドールハウス」、異世界で行われている古代からの神事にまつわる恐怖を描いた「男神」(9月19日公開)、死者の日記をきっかけに予測不能の怪異が起こる、第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作を映画化した「火喰鳥を、喰う」(10月3日公開)と、バラエティーに富んだ作品が揃った。

 その中でもこれぞホラーという2作品に注目したい。1本目は70万部を突破した背筋の小説を、菅野美穂と赤楚衛二主演で映画化した「近畿地方のある場所について」(8月8日公開)。失踪事件や怪奇現象が起こる場所として、噂になっている地方を特定するために動き出した主人公たちが見舞われる恐怖を描く、虚構の都市伝説を題材にしたモキュメンタリータイプのホラー映画だ。監督は「ノロイ」(05年)や「口裂け女」(07年)などを発表し、特にフェイクドキュメンタリー作品で注目を浴びた白石晃士。彼が本領を発揮した正統派ホラーである。

 もう1本は「リング」の中田秀夫監督による「事故物件ゾク 恐い間取り」。こちらは事故物件に住む芸人・松原タニシの実話を映像化したシリーズの最新作。タレント志望の主人公をSnow Manの渡辺翔太が演じ、彼は4つの事故物件で驚愕の体験をする。この作品が面白いのは、ホラーの部分を怖く描きながら、新人タレントの成長物語や畑芽育演じるヒロインとのラブロマンス、驚きのファンタジー的な展開まで、さまざまなエンタメの要素を詰め込んでいること。ホラーと青春映画、太極拳アクションを組み合わせて痛快な娯楽映画にした昨年の「サユリ」(24年)のように、今後のJホラーはジャンルをミックスさせることで、さらに魅力が広がっていく気がする。そういう意味でも同作が“ホラーベースの”エンタメ映画としてどう受け止められるか、気になるところだ。

(金澤誠/映画ライター)

  ◇  ◇  ◇

 亡くなったことが7月17日に発表された遠野なぎこさんの演技には、常に「重さ」が伴っていた。【もっと読む】追悼・遠野なぎこ“重い演技”の裏にあったもの…朝ドラ女優の確かな演技力でも抜けきれなかった哀しい生い立ち…では、その深層に迫っている。

エンタメ 新着一覧


怪演・市原隼人に「ヤバい超大物」2人が熱烈ラブコール。迫真すぎる“ガンギマリ”の演技がモテる理由か
 大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)にて、盲目の大富豪にしてゾクッとする異様な雰囲気を放つ鳥山検校を怪演...
堺屋大地 2025-04-21 06:00 エンタメ
ラランド・サーヤは「名誉男性」なのか? お笑い界の“女すぎる”という悪口に思うこと
 ラランド・サーヤが参加するバンド「礼賛」が大阪で行ったライブで、痴漢行為が発生。被害女性がSNSで被害を訴えたことで発...
帽子田 2025-04-20 06:00 エンタメ
「あんぱん」松嶋菜々子の“毒”さえチャーミングにする厄介な美しさ。ドキンちゃんにも見えてしまった
 8年間音沙汰のなかった登美子(松嶋菜々子)が突然帰ってくる。登美子に対してわだかまりが残ってはいるものの、自分の漫画を...
桧山珠美 2025-04-19 06:00 エンタメ
「あんぱん」登美子(松嶋菜々子)の登場が不穏…色っぽいけど。貴島中尉(市川知宏)は“あのキャラ”を意識?
 新聞社に出した漫画で賞金をもらい、ご機嫌の嵩(北村匠海)。一方のぶ(今田美桜)は、パン食い競走で転びそうになったところ...
桧山珠美 2025-04-17 16:02 エンタメ
カトパンへの嫌味に物議…新井恵理那は承認欲求のカタマリか、悪役を演じる聖人か?
 昨年3月、8年間出演して総合司会も務めていたテレビ朝日系の朝の情報番組『グッド!モーニング』を降板したフリーアナウンサ...
堺屋大地 2025-04-17 06:00 エンタメ
【募集】春ドラマ何見る? 面白かった&ガッカリを教えて!『最後から二番目の恋』『あんぱん』etc
 コクハクでは2025年春ドラマを対象としたアンケートを実施します。4月よりスタートした春ドラマ、「期待している」「面白...
笠松将、柳楽優弥を超えなければと思っていた。俳優業の“わからなさ”は「自分自身にビビッている感覚」『ガンニバル』シーズン2インタビュー
“この村では、人が喰われているらしい……”    2022年の年末にディズニープラス スターにて独占配信がスタートす...
望月ふみ 2025-04-15 06:00 エンタメ
「あんぱん」嵩(北村匠海)の“ジェラシー”がなんとも可愛い! 寛(竹野内豊)の診察シーンが見たかった
 昭和10年、高等女学校の5年生になったのぶ(今田美桜)は、ある日、貴島中尉(市川知宏)と再会。祭りのパン食い競走で使う...
桧山珠美 2025-04-14 19:03 エンタメ
15分の朝ドラで高揚感を得られるんだ! のぶ&嵩の“子役最終回”が見せた未来の夫婦関係
 久しぶりに登美子(松嶋菜々子)の顔を見て胸がいっぱいになる嵩(木村優来)だったが、登美子は困惑した表情を浮かべる。のぶ...
桧山珠美 2025-04-12 06:00 エンタメ
旧ジャニ会見から1年半、STARTO社の再興成否…CD売上と人権意識から考察、ファンは一体何を望む?
 2023年9月および10月、旧ジャニーズ事務所は創業者問題で2度記者会見を開いた。その後、同社所属タレントのテレビ・C...
こじらぶ 2025-04-12 06:00 エンタメ
「あんぱん」阿部サダヲの配合絶妙な演技。高知つながりで“しょくぱんまん”登場!
 元気のない家族のために力を貸してほしいというのぶ(永瀬ゆずな)の頼みに、草吉(阿部サダヲ)は1回きりの約束であんぱんを...
桧山珠美 2025-04-09 17:20 エンタメ
『あんぱん』RADWIMPSの主題歌は本当に「合っていない」のか? 正統派・朝ドラOPの真逆を貫いた意味
 2025年3月31日より、NHK連続テレビ小説『あんぱん』の放送が開始された。国民的キャラクター「アンパンマン」生みの...
「R-1」さや香・新山や吉住らベテラン勢はなぜ負けた? 売れっ子は予選で有利、決勝で不利な理由
 最もおもしろいピン芸人を決める「R-1グランプリ2025」(フジテレビ系)が3月8日に開催された。決勝常連組やベテラン...
帽子田 2025-04-09 09:48 エンタメ
ヤムおんちゃん草吉はあんぱん代をきっちり集金。ジャムおじさんとは違う“先導”に期待膨らむ
 草吉(阿部サダヲ)のあんぱんを食べて、生きる力をもらった朝田家。羽多子(江口のりこ)は内職の仕事を始め、釜次(吉田鋼太...
桧山珠美 2025-04-07 17:20 エンタメ