「あなたの秘密は?」毎夜、女に探られて…“ハニートラップ”にハマった豪傑な男の末路

MARO(上馬キリスト教会ツイッター部)
更新日:2025-09-02 11:45
投稿日:2025-09-02 11:45

長い髪こそパワーの源

 そんなわけでサムソンは大人になっても一度も髪を切らず、長い髪を持っていました。その長い髪こそが、彼の人間離れしたパワーの源だったんです。

 たしかにサムソンは強く、ペリシテ人を何度も打ち破り、イスラエルの民を守りました。

 しかしその一方で、あまり素行が良いとは言えません。

 敵であるペリシテ人たちと一緒に宴会をやったり賭け事をしたり、その賭け事に負けるとその支払い金を他のペリシテ人から奪い取り、それで文句を言われると暴れ回って1000人もの人を殺したり…筋も義理もあったもんじゃありません。

 そんな言動のせいで縁談を断られると、その家の一帯を焼き払い、それを咎められるとまた暴れて何人もの敵を殺したり…。

 賭けをした相手も、婚約をした相手も、焼き払った相手も、殺した相手も、みんな敵であるペリシテ人なので、考えようによってはこれもペリシテ人を困らせるためのサムソンの策略のようにも思えないこともないのですけれど、それにしてもやることがメチャクチャすぎる…。

 他の歴史ドラマに登場する剛力無双の英雄というのはたいてい、多少乱暴なところはあっても彼らなりの義理や筋は通すものです。だからこそ、英雄は英雄として後世まで愛されるものです。しかしこれではほとんどただの乱暴者です。

ハニトラにまんまとハマる

 挙句の果てに、サムソンはペリシテ人の女性を愛し、「あなたの力の秘密はな〜に?」と夜ごとに何度も聞かれ、ついに「僕の力は僕の髪の毛を切ったらなくなってしまうんだ」と教えてしまいました。

 そしてその愛する人に髪をそられ、そこに押し入ったペリシテ人の兵隊に囚われてしまいました。絵に描いたようなハニートラップにハマって身を滅ぼしてしまったんです。

 どんな人でも、愛する人には自分の弱点をさらけ出したくなってしまうものです。

 愛する人の前では「強さ」の鎧を脱いで楽になりたいと願うものです。その思いはもしかしたら強い力や権力を持てば持つほど大きくなるのかもしれません。

 この人の前だけは、この夜だけは、子どものような弱い自分として眠りたい。そんな気持ちは古今東西あらゆる英雄の最後の弱点でもあり、また英雄ではない僕たちでも同じように持つ、避け得ない弱点なのかと思います。

 そしてそんな気持ちを持つ限り、僕たちはサムソンのことを「ハニートラップにハマった残念な人」と、他人事のようには笑えません。聖書随一の強さを誇る豪傑でさえ避け得なかった弱さを、僕たちもまた同じように持っているのですから。

MARO(上馬キリスト教会ツイッター部)
記事一覧
1979年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒、バークリー音楽大学修了。宗教法人専門行政書士。約11万人のフォロワーを持つXアカウント「上馬キリスト教会」(@kamiumach)の運営を行う「まじめ担当」。著書に『上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)、『人生に悩んだから「聖書」に相談してみた』(KADOKAWA)、『上馬キリスト教会ツイッター部のキリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)など多数

ライフスタイル 新着一覧


「私は一応慶応卒」学歴マウント炸裂!ママ友から届いた地獄LINE6選
 子育て中の女性が避けて通れないのが「ママ友との付き合い」ですよね。中にはドン引きするようなマウント女や、辛辣な物言いを...
10年分のカネの流れが怪しい。会員数が集まり⼤喜びしたのもつかの間…
 本コラムは、地元の“幽霊商店会”から「相談がある」と言われ、再始動の先導役を担う会長職を拝命することになったバツイチ女...
円満退職に必要な最低限のマナー6選、「立つ鳥跡を濁さず」は社会人として当たり前!
 終身雇用の時代は終わり、今では6割の社会人が転職経験ありだというデータも出ています。読者の皆さまのなかにも、「転職しよ...
更年期、それはある日突然に…45歳女の体が『倦怠感で満タン』になった
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まった老...
生理前を穏やかに過ごすご機嫌アロマ術【調香師が解説】タイプ別おすすめの香り・精油・香水は?
 女性の体は生理が近づくとホルモンのバランスが崩れ、精神的なイライラや落ち込みに加え、むくみや便秘、疲れやすさなど、PM...
兄弟姉妹なのになぜ不仲? 怒る前に知っておきたい原因5つと対応策3つ
 子育てをしていると、兄弟姉妹の不仲に悩む人が多いですよね。一体何が原因なのでしょうか? また、自身が親になっても兄弟姉...
思わず二度見!『バブ』新商品・MEGA級のボコボコ泡の実力は? 自宅の風呂がジャグジーになるのか
 話題のコスメや、広告でよく見かける化粧品や日用品。「webでよく見るあの商品、本当にイイの? 」「買ってみたいけれど、...
手のぬくもりとともに
 自然と手を合わせるときの気持ちって、  みんな、おんなじだよね。
実りの秋! 澄みわたる青空の下“たまたま”狩りに出かけませんか?
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
女と水がいっぱいだ…『娑婆』は何て読む? ヒント:「娑婆はいいな」
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
ほっこり癒し漫画/第83回「迷いインコ歌をうたう 前編」
【連載第83回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽのお...
中目黒「ダコー」はまだ大混雑? 代官山「無印良品」新店はオサレな店員さんだらけだった!【秋の東京散歩】
 8月のオープン時には話題を呼び、大行列をなしていた中目黒のパン屋「ダコー(dacō)」。あれから2カ月が経ち、やっぱり...
下世話な仕事がバレた? 夫や息子の「意外な反応」で主婦が気づいたこと
 大崎の高層マンションに暮らす華は、テレビ局に勤める夫・大輔と二人の子供に囲まれ悠々自適な専業主婦生活を送っている。毎日...
地味な女に負けた? 夢を諦めた“こたつライター”の「プライド」が砕かれるまで
 大崎の高層マンションに暮らす華は、テレビ局に勤める夫・大輔と二人の子供に囲まれ悠々自適な専業主婦生活を送っている。毎日...
私の「仕事」は夫に内緒。専業主婦が下世話なゴシップにのめり込むワケ
 夫を仕事に、ふたりの息子を小学校に送り出してからが、自分の時間だ。  長時間かけて丁寧に淹れたブルーマウンテンを...
プロ作家・村上龍先生をリスペクト。64歳のプロ童貞が語る「自己啓発本を好きなこれだけの理由」
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(64)。多忙な現役時代を経て、56歳...