『リバーズ・エッジ』(2017)
2017年、ある程度のキャリアを重ねてきた吉沢さんは、演技の幅を広げるべく挑戦的な役柄に挑むようになります。その代表格と言えるのが、『リバーズ・エッジ』でしょう。
同作は、90年代にカリスマ的人気を誇った伝説的漫画の実写化。古いビデオを彷彿させる映像で、若者たちの生と死についてリアルに描き出す作品のなかで、吉沢さんはゲイの青年・山田一郎役に扮しています。二階堂ふみさん演じる若草ハルナと、ある秘密を共有し、恋とも友情とも言えない関係性を構築していきます。
本作における俳優・吉沢亮の美しさが最も際立つ瞬間。それは、内に秘めた狂気を滲ませた瞬間だと筆者は考えます。本作の吉沢さんは、終始、退廃的なオーラを醸し出し、何を考えているのか、どこを見ているのかさえ分からない表情。そんな吉沢さん演じる山田が、恋人のフリをしていた女子生徒の死を目の当たりにした瞬間、満面の笑みを見せるのです。
この時の吉沢さんは一層の輝きを放ち、その危うさを漂わせた笑顔には、思わず目が釘づけになってしまいます。抗うことのできない美しさとはまさにこのことだと実感させられること請け合いです。
『青くて痛くて脆い』(2020)
その美しさと演技力を武器に、人気俳優の地位を欲しいままにするようになった吉沢さんですが、決して安易な作品選びをしないことでも知られています。
2020年の『青くて痛くて脆い』では、そんな吉沢さんの俳優としての心意気を感じさせる演技を堪能できます。
吉沢さん扮する大学生の田端楓は、他人との距離を保つことで、上手く生きてきた青年。ある日、彼は周囲から浮いている個性的な同級生・秋好寿乃(杉咲花)と出会います。彼女と共に、世界をより良くするためのサークル「秘密結社モアイ」を作ることになった楓の人生は良い方向へと向かうはずでした…。大学生は大人になる一歩手前。まだまだ青くて脆くて、痛みを伴う生活を送らなくてはなりません。
前述のように、吉沢さんの美しさが最も際立つ狂気めいた魅力が本作でも遺憾なく発揮されているのです。
本当は自分の正直な感情を表に出したい。けれどもなりたい自分にはなれなかった。そのもがきが狂気となり、吉沢さんの緩急自在の演技を呼び起こします。
狂気めいた鋭い眼差しを杉咲花さん演じる寿乃へと向ける姿、闇堕ちし復讐に走る姿、そしてストーカー紛いのことを繰り返す姿…そんなメンヘラ粘着質な演技が逆に美しさを醸し出しているのです。
危険な香りを漂わせた男がカッコ良く映ることはよくありますが、たとえ普通に近くにいたらとことんキモすぎる男を演じていたとしても、その要素がより美しさを助長させるなんて…そんな俳優は、この世に吉沢さんしかいないのではないでしょうか。
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