三度目のデートで見えた彼の本性
さらに決定打となったのは、三度目のデートでの発言だった。
その日は映画を観ようと誘われたが、映画館に入る前から「本当は犬を置いてくるのは不安なんだよね」と落ち着かない様子。上映中も何度もスマホを確認しては、ペットカメラで犬の様子をチェックしている。
エンドロールが流れた瞬間には「やっぱり早く帰ってあげないと」と足早に立ち上がった。
帰り道、リョウタはぽつりとこう言った。
「前の彼女は犬に好かれなかったんだよね。だから結婚は無理だと思って別れた」
その瞬間、マイの心は一気に冷めたという。
犬に好かれない人間はダメなの?
犬に懐かれるかどうかで人間関係の価値を測られるのは、あまりに極端だ。
しかも彼の言い方は「犬に好かれない人間はダメ」と言い切っているようで、マイにとっては価値観の押しつけ以外の何物でもなかった。
デートの帰り道、マイは「彼にとって私は、恋人というより“犬の世話係候補”でしかなかったのかも」と虚しくなったという。
最初は優しいと思った態度も、振り返れば犬を介しての気配りばかりで、自分自身を見てもらえていなかったのではないかと感じたそうだ。
誰かを大切にすることと、自分のこだわりを押しつけることは全く別物だ。その境界を混同する彼と一緒にいたら、どれだけ頑張っても満たされない未来しか想像できなかった。
大切なのはバランス感覚
後日、友人同士で集まった時にマイがその話をしてくれた。私を含めた全員が「さすがにそれは重すぎる」と苦笑い。中には「犬に負けてるって気分になるね」と笑いながらも、「でも本人にとっては深刻だよ」と同情する声もあった。
動物を愛する気持ちは尊重したいが、恋人にまで“犬ファースト”を強要するのは違う。
むしろ人間関係を築く上では、バランス感覚こそが大事だと痛感させられる出来事だった。
「犬はかわいいけど、私は犬の代わりに生きてるわけじゃない」
マイの最後の一言に、場の空気は妙に納得して静まり返った。
ラブ 新着一覧