57歳で俳優デビュー…好奇心を満たす限り田中泯は「わたしの子ども」を裏切らない

更新日:2025-09-14 17:03
投稿日:2025-09-14 17:00

【今週グサッときた名言珍言】

「後悔し始めてます」
 (田中泯/日本テレビ系「24時間テレビ48-愛は地球を救う-」8月30日放送)

  ◇  ◇  ◇

 映画「国宝」(東宝)で人間国宝の人物を演じた田中泯(80)。バラエティー番組はもちろん、トーク番組にもめったに出ない彼が、お笑い芸人中心のバラエティーパートにまさかの出演をして驚かせた。しかもネプチューン堀内健に自己紹介ギャグを伝授されるというむちゃぶりの餌食に。「田中みーんみーん、ビタミンちょうだーい」と抜群の切れ味で披露した後に、この番組への出演について漏らした言葉を今週は取り上げたい。

 現在は俳優として知られている田中だが、本職はダンサー。ほぼ全裸で街中で踊り、逮捕された経験もあるだけに、実際にはホリケンのギャグをやってみることなど造作もないことだろう。

 田中は既存のダンスの価値観に疑問を持ち、表現方法を模索した。彼の踊りには決まった形や振り付けは存在しない。

「できる限り、自分のそこで生まれた感覚に正直な動きをして、自分の心の中に生まれた衝動のようなものを動き化していく」(NHK・Eテレ「SWITCHインタビュー 達人達」2022年4月4日)という「場踊り」と呼ぶ即興ダンスは、世界的に評価されていった。

 そんな彼に転機が訪れたのは57歳のとき。田中の舞台を見に来ていた山田洋次に請われて、02年の映画「たそがれ清兵衛」(松竹)に出演したのだ。

 もちろん、演技は初めて。セリフを発するという方法からわからなかった。俳優は長い時間をかけてセリフの技を磨く。だが、それは自分にはできない。ならば自分は「体の技を磨いて、そしてその磨かれた体から出る言葉をセリフにしよう」(同前)と決めた。

 そうして踊るように演じた田中は日本アカデミー賞・最優秀助演男優賞などを受賞し、以後、さまざまな映像作品から引っ張りだこになっていくのだ。俳優の仕事も「好奇心を満たすものであるかぎり、続けよう」と思っているという(ほぼ日「ほぼ日刊イトイ新聞」22年1月28日)。

 彼が表現する中で大事にしていることのひとつは「わたしの子ども」という感覚だ。「子どものころに感じた違和感、ああいう大人にはなりたくない……だとか、あんな嘘だけはつきたくない……」、そう感じた「自分を、裏切っては生きられない、ということ」だ(「ほぼ日刊イトイ新聞」22年1月27日)。

 田中は自著に「若い頃から齢を忘れて生きることを常としてきた。年相応が土台分からない」(講談社「ミニシミテ」24年3月11日発売)とつづっている。彼の好奇心はいまだに「子ども」のように旺盛だ。

(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)

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