信じられない朗報が舞い込む
それは、突然の連絡であった。
「ネガミさん、おめでとうございます。応募作品を、国際エンタテインメントフェスティバルのメインキャラクターに選定させていただきました」
開店して3か月。イベントの開催を諦め、相変わらずカフェは赤字状態の中でのこと。
3年後に開催される国を挙げてのイベントのコンペになぜか朱里の作品が通ったのだという。その募集は、東京にいた2年前に行われており、ダメ元で応募したものであった。
選考過程は逐一伝えられていたものの、期待しておらず、カフェ開店のバタバタもあり、全く気にしてもいなかった。寝耳に水とはこのこと。
――信じられない…うそでしょ??
うそでしょ?――突然、賑わいを見せるカフェ
そこからは、怒涛の日々であった。
記者会見、取材の連続。別件イラストの発注まで沸いて来た。
「お姉ちゃんはイラストの仕事に専念してよ。私、コーヒーくらいは出せるから」
理子のそんな言葉に甘えて、土日だけの営業にしてしばらくカフェの運営を任せることにした。どうせ客はほとんど来ない。育児中の彼女の息抜きにぴったりだと思ったのだが…。
「なにこれ!!」
東京での仕事が一段落つき、ひさびさに地元を訪れると、店内は多くの若いお客さんで溢れていた。
どうやら、報道で朱里の名が報じられ、この地のカフェ店主だと聞き付けた人々がこぞってやってきたのだという。理子だけで店が回るわけはなく、家族総出で出動しなければいけないほどにぎわっていた。
「昨日なんてね、お姉ちゃんのお友達のアート作品が売れたの。10万円もする、あのへんなオブジェ。あと、お姉ちゃんがスケッチした海の絵も」
忙しそうにレモネードをグラスに注ぐ妹の姿。そしてそれをおいしそうに飲むお客さん。作り置いたスパイスカレーも業務用食材も、完売御礼だった。
「もしかして、ネガミ先生じゃない!?」
「地元の誇りです!」大輝の言葉を思い出す
どこからか声が聞こえてきた。なにげなく店のフロアに姿を見せると、歓声と拍手が朱里を包む。
「おめでとうございます! 地元の誇りです!」
「あ、え…ありがとうございます…」
笑顔と祝福で胸がいっぱいになる。戸惑いと共に、自分がここにいることで、これだけの人が集まる現実を目の当たりにする。
――ど、どうして??
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