それ“和牛”違いですよ! コントのような「おばさん」二人の会話に更年期の私が救われたわけ

小林久乃 コラムニスト・編集者
更新日:2025-11-19 11:45
投稿日:2025-11-19 11:45
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まった老化現象についてありのままに綴ります。第54話は「自分に都合がいいおばさんの会話」。

齟齬のある“和牛”問題

 年末が近づいてきた。この時期になると思い出す、ご婦人2人の会話がある。2年前の年末、私は明治通り沿いのスタバにいた。店内のテーブル席に座ってコーヒーを啜っていると、背後の席からご婦人の会話が聞こえてきた。推定年齢は2人とも60代後半。

【こちらもどうぞ】あれ?誰とも喋ってない… 「コミュニケーションにはお金がかかる」という現実。孤独と戦うおばさんの生存術

A「息子夫婦がね、あ、福岡に住んでいるんだけど、息子が誕生日だからお酒を送ったのよ」

B「まあ、喜んだでしょう」

A「あの夫婦、飲兵衛だからね。でもね、いやね、お礼も言ってこないのよ。だから私、電話しちゃったわ。そしたらもう飲んじゃいましたって」

B「…まあ」

 こんな普通の会話が繰り広げられていた。なんだろう、おばさんの会話はテンポもトーンも独特で面白い。自分もその軍勢に参画しているのは百も承知だけど、面白い会話が整理しているとかどうかと聞かれると、自信がない。で、会話の続き。当時、お笑いコンビ・和牛の解散が話題になっていた。相方の遅刻癖などに愛想を尽かしたのが、解散理由と言われている云々。

A「そういえばご存知? 和牛、解散するんですってよ。何でも水田さんとかいう人の遅刻が原因らしくてね。あんなに人気があったのに…遅刻なんかが理由でチャンスを失っちゃうなんてもったいないわよね」

 Bさん、Aさんの話している内容が掴めなかったのか、会話に一瞬の間が空く。ただ次の瞬間“和牛”のキーワードだけは分かったのか、自分なりの和牛語りが始まった。

B「ねえ、そんな遅刻で品評会に遅刻しちゃうなんて…もったいないわよねえ」

 2人の会話に齟齬が生じている。私も(…品評会?)と考え込んだが、解釈をするとどうもBさんは食べるほうの“和牛”だと思い込んでいるらしい。おそらく彼女の脳内では「生産者の怠惰によって、和牛の品評会に遅刻をしてしまって、売買するチャンスを失った」と情報が流れている。盛大な“和牛”違いだ。背後席が急に静かになったので、そっと様子を伺うと二人は向かい合って、静かにコーヒーを飲んでいた。

小林久乃
記事一覧
コラムニスト・編集者
出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」にてデビュー。最新刊はドラマオタクの知識を活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社刊)。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディアの構成と編集、プロモーション業が主な仕事。正々堂々の独身。最新情報は公式HP

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


主婦vs丸の内バリキャリの「マウント合戦」は漫才よりも笑える。“負け顔”ができる女芸人の観察
 かつて西大井にあったお笑い養成所に通っていた3人の女。SNS・mixiのコミュニティに麻梨乃が書き込むと、2人の同期生...
早稲田卒、商社OLの称号は「貧乏な夢追い人」とは違うの。誰よりも高い“現在地”は私だよね?
 かつて西大井にあったお笑い養成所に通っていた3人の女。約20年後、懐かしさで当時使用していたSNS・mixiのコミュニ...
ゲッ…まだ「mixi」見てるの? 独身女2人の即レスに“意地悪な幸せ”を感じる上から目線の主婦
 mixiでの呼びかけに、応答があったのは2人だけだった。  当然だろう。そこはもう誰もいない公園なのだ。あの頃は...
否定ばかりする人のLINEがしんどい…。我慢せず、受け手側ができる3つの対応策とは?
 LINEのやりとりで、相手から否定ばかりの内容が届いたら対応に困りますよね。  腹が立ち、関係をやめたいと思って...
金運を上げる花5選!植物で開運を狙う基本のキ。黄色いお花だけではない【開運花師おすすめ】
 いくらやりくりを頑張っても、追いつかない物価高。こうなったらもう金運を呼び込むしかないかも?  お花や開運に関する...
辻希美は第5子妊娠の衝撃度。長女希空とは18歳差に…年の差きょうだいの良さと熟考すべきこと
 元モーニング娘。の辻希美(37)と夫の俳優・杉浦太陽(43)が3日、第5子妊娠を発表した。  2007年6月に結...
一気に距離が縮まる会話術! 社長も平社員も、みんな笑顔になる「あの話」は鉄板エピソード
 例えば今目の前に距離を縮めたい相手がいたら、みなさんは何をしますか? 私なら、その人の子供時代の話を聞きます。 ...
「子持ち様」認定されないように…非常識な親バカママ友あるあると3つの対処法
 子供がいると避けて通れないのが、ママ友とのお付き合い。  今回は、思わずイラッとしたママ友の親バカ行動をご紹介。周...
職場の「1on1ミーティング」を苦痛に感じる3つの原因。今すぐ取り入れたい対策方法は?
 近年、企業で取り入れられている「1on1ミーティング」をご存知ですか? 新しい手法を取り入れるのは良いことですが、蓋を...
堤防の上は“たまたま”のランウェイならぬ、ニャンウェイ♡ 見せ場のターンの瞬間をパチリ
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
意外に難しい「ミモザの鉢植え」を成功させたい! ほっぽらかし園芸好きの花屋が教える5つの失敗と対策
 暦の上では3月、ポカポカを通り越して半袖脇汗が止まらない日中があれば、突然寒くなり雪が降る…これは本当に三寒四温なのか...
想定外しかない商店会ワーク。文句ばかり言うおっさんにブチ切れ寸前、寅さんの名台詞で堪えました
 本コラムは、地元の“幽霊商店会”から「相談がある」と言われ、再始動の先導役を担う会長職を拝命することになったバツイチ女...
ぎっくり腰再発かも…? 運動不足解消のため、水泳を始めた中年おばさんの“まさか”
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まっ...
“春ピンク”は女性ホルモンを刺激!【調香師が解説】指先から幸せになるピンクフラワー香り術
 色とりどりの花が咲く春は、気分も明るくなって幸せな気分になりますね。花の色に多いピンクですが、女性ホルモンを刺激する色...
40代の同窓会はどこで差がつく? モテる人とモテない人それぞれの共通点
 若かりし時代を一緒に過ごしたクラスメイトと、定期的に同窓会を開いている人は多いですよね。でも、40代にもなってくると見...