エロとオカルトの意外な接点…異色の“エロ怖い”漫画でタッグ組んだエモホラーの旗手とオカルト研究家に聞く

更新日:2025-12-04 17:03
投稿日:2025-12-04 17:00

【文野紋(エモホラーの旗手)×角由紀子(オカルト研究家)】

 バラエティー番組やYouTubeでオカルトブームが続く中、オカルト専門サイト「TOCANA」の元編集長と気鋭の若手ホラー漫画家がタッグを組んだ。異色の“エロ怖い”漫画「トムライガール冥衣」(扶桑社)の第1巻がリリースされ話題になっている。エロとオカルトの意外な接点について聞いた。

■文野「私の周りにも性に悩んでいる人は多い」

 ──連載開始のきっかけは?

角 私がラジオで“エロい幽霊”がいる心霊スポットの話をしていたら、それを聴いた担当編集の方から声をかけていただきました。心霊体験はたくさんありますが、それをストーリーにしたのは初めてです。

文野 私は心霊体験は多くはないのですが、オカルトは好きだったので、声をかけていただいて始めることになりました。

 ──お話は、男性体験の少ない主人公の冥衣が、オカルト雑誌編集部に配属され、生前の性生活に後悔している霊たちが見えるようになり、それを鎮めるというもの。「エロチャクラ開眼!」「おイキなさい!」などのキメぜりふも印象的ですが、“性の未練”を抱えたまま死んだ幽霊は多いのですか。

角 はい。オカルトとエロは実はすごく親和性が高いんですよ。そもそも人間はエロス(生への衝動)とタナトス(死への衝動)を抱えている生き物ですし、セックスすることで神と一体化するような土着の儀式もたくさんあります。でも女性の7割が一度もオーガズムを感じたことがないというデータがあったり、セックスに未練を残したまま死んでいく例は男女問わず多いと思います。

文野 私の周りにもパートナーと性の不一致やセックスレスに悩んでいる人は多いですね。バリキャリで仕事ができるある知り合いは、仕事で疲れて帰宅して、時間もないのに、なんで毎回旦那さんの求めに応じなきゃいけないんだって悩んでいました。それで旦那さんと交渉して、コトの最中に大好きなラランドのYouTubeを見てもいいってことになったそうです(笑)。

■角「“色情霊”も増えていくと思います」

 ──ラランドを見ながらっていうのはすごい。

角 今は、セックスに関する情報があふれていて、なんでもバーチャルになっている時代だからこそ、直接、五感を使ったセックスの体験は、よきにつけ悪しきにつけ、一番記憶に残ると思いますね。だから今後、“色情霊”も増えていくと思います。「もっといい女とやりたかった」とかね。

 ──「エロチャクラ」が覚醒しないまま死んでいったわけですね。

文野 冥衣ちゃんもまさにそういうタイプで、最初は普通のOLなので、オカルトに興味のない女性でも読みやすいと思います。それがだんだん“性長”していくという……。

 ──主人公が可愛いと同時に、目玉がベロンと飛び出したり、結構グロいシーンがありますね。

文野 一話の中に、すごくエッチなシーンとすごく怖いシーンを必ず入れようと心がけています。あと角さんのオカルトの知識がすごいので、絵がズレてないか確認していただきながら描き進めています。

角 文野さんの作画の力もお借りしつつ、ここまで本格的に「エロ×オカルト×OL」を扱った漫画は初めてではないかと。男性に限らず、女性の方にもぜひ読んでいただきたいですね。 

(取材・文=平川隆一/日刊ゲンダイ)

▽角由紀子(すみ・ゆきこ)(原作) 1982年東京都生まれ。上智大学文学部を中退後、編集者に。2013年にオカルト専門サイト「TOCANA」を立ち上げ、約8年間編集長を務める。自身のYouTubeチャンネル「角由紀子のヤバイ帝国」は登録者数30万人超。主な編集本に「見つけてください」(横澤丈二著/徳間書店)、最新刊に「引き寄せの法則を全部やったら、効きすぎて人生バグりかけた話」(扶桑社)などがある。

▽文野紋(ふみの・あや)(作画) 1996年神奈川県生まれ。2020年「月刊!スピリッツ」掲載の「君の曖昧」で商業誌デビュー。翌年「呪いと性春 文野紋短編集」を刊行し注目を集める。「月刊コミックビーム」で連載した「ミューズの真髄」(全3巻)は重版を重ねる人気作に。テレビ朝日「logirl」ではコラム「文野紋のドキュメンタリー日記」を連載するなど、多ジャンルで活動。X(旧Twitter)のフォロワーは約7万人。

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