ワーナー・ブラザース ジャパンの劇場配給年内終了にみる視聴システムの変化

更新日:2025-12-26 17:03
投稿日:2025-12-26 17:00

 ワーナー・ブラザース ジャパンが、日本国内での映画の劇場配給業務を2025年12月31日で終了する。2026年からは東和ピクチャーズが洋画作品の配給を担当するので、日本でワーナー・ブラザースの映画が見られなくなるわけではないのだが、大手洋画会社の配給業務終了は余波を生みそうな気配がある。

 2010年ごろからワーナー・ブラザース ジャパンは本格的に邦画の製作へ参入し、「最後の忠臣蔵」(2010年)を皮切りに、「るろうに剣心」シリーズや実写版の「銀魂」2部作、「東京リベンジャーズ」3部作、「はたらく細胞」など、大ヒット作を発表してきた。25年にもホラー映画「近畿地方のある場所について」、現在も公開中の「爆弾」といった話題作を世に送り出している。26年にも、小川哲の小説を「沈黙の艦隊」シリーズの吉野耕平が監督する「君のクイズ」「近畿地方のある場所について」と同じく背筋の原作を、清水崇監督が板垣李光人や綱啓永など注目の若手俳優を配して描くホラー「口に関するアンケート」の公開が控えている。しかしこれらの新作は配給先を失い、新たな配給先を探すことになる。

 他にもアニメーション作品では、1月9日公開の「ALL YOU NEED IS KILL」にはプロデュースで、2月公開の「新劇場版 銀魂─吉原大炎上」には配給でワーナー・ブラザース ジャパンが関わっていて、これらはすでに劇場がブッキングされているので、ワーナーが配給の業務を行うだろう。

 洋画系の配給、映画製作会社にはソニー・ピクチャーズエンタテインメント ジャパンもあり、こちらは25年に「父と僕の終わらない歌」「雪風YUKIKAZE」「宝島」「盤上の向日葵」「果てしなきスカーレット」などに出資していて、必ずしも好結果を残せなかった作品があったが、来年には『キングダム』シリーズの新作や山下智久主演の「映画 正直不動産」といった注目作品が控えている。

 洋画系の会社が製作・配給に参入したことで、日本映画の作品群は企画が多様化し、また海外へ発信する機会も増えてきていただけに、ワーナー・ブラザース ジャパンの配給業務終了は残念な気がしてならない。ただ作品の企画製作は継続すると宣言しているので、どんな体制で作品を配給していくのか、その動向が注目される。また配給業務の終了は“映画は劇場で観るもの”という基本的な視聴システムに対する考え方の変化なのかもしれない。

 アメリカに目を移せば、親元の会社ワーナー・ブラザース・ディスカバリーが現在、買収問題に揺れている。2025年12月の初めにNetflixがワーナー・ブラザース・ディスカバリーの映画スタジオ事業と動画配信の権利を、720億ドルで取得することが発表されたが、パラマウント・スカイダンスがこの買収計画に対抗。1080億ドルでワーナーを買収する案を持ち掛け、このふたつの会社のどちらに買収されるか、決着がついていない。ワーナーが持つ膨大な映像コンテンツの行方は、今後の動きを見ないとわからないが、「ハリー・ポッター」シリーズなどの世界的ヒット作を出してきた会社が買収先を探す現状を思うと、映画産業は大きな岐路に立っているのがわかる。Netflixがワーナーを買収すれば、映画は劇場で見るものではなく、配信メディアのソフトとして、捉えられる日が来るかもしれないのだ。

(金澤誠/映画ライター)

  ◇  ◇  ◇

 今年、世を席巻した「国宝」。関連記事【もっと読む】「国宝」が22年ぶりに邦画歴代興行収入1位を更新 大ヒット作“20年周期”の法則…では、同作をめぐるヒットの法則を分析している。

エンタメ 新着一覧


制作費の都合?「夜来香ラプソディ」音楽会シーンなしは残念すぎる
 上海の羽鳥善一(草彅剛)は、音楽会の準備を進めていた。羽鳥は、黎錦光(浩歌)が作曲した「夜来香」にブギを取り入れた音楽...
桧山珠美 2024-01-04 17:50 エンタメ
【2023年人気記事】マッチ様は逃げ上手と無責任のプロだった
【「残念プロフェッショナル」の流儀】  2023年も「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大き...
堺屋大地 2024-01-02 11:44 エンタメ
辻希美&杉浦太陽はニベアのCM…仲良しラブラブ芸能人夫婦はお金を生む
 元モーニング娘。のなかで1番の勝ち組は、やっぱり辻ちゃん(辻希美)でしょう。  先日も元モー娘。の中澤裕子、保田...
スズ子と愛助の無償の愛、平和ボケの今とは違って生きるも愛するも命がけ
 東京に戻ったスズ子(趣里)は、空襲で一面ががれきになっている惨状を目の当たりにする。  スズ子が三鷹の家に戻ると...
桧山珠美 2023-12-28 14:10 エンタメ
東京大空襲、愛し合うスズ子と愛助の運命は…金曜放送回を前におさらい
 トミ(小雪)の許しが出て、山下(近藤芳正)が正式に楽団のマネージャーとして加わることになった。  スズ子(趣里)...
桧山珠美 2023-12-27 17:40 エンタメ
コワモテ黒田の起用は大正解! スズ子派に寝返り、顔芸と手振りが秀逸
 結核が再発した愛助(水上恒司)の看病を、三鷹の家で続けることになったスズ子(趣里)は、日々愛助のために身を尽くしていた...
桧山珠美 2023-12-26 15:50 エンタメ
藤井風「いちすき」で見せた弾き語りに惚れ惚れ、黒髪に代わってホッ
 21日、木曜劇場「いちばんすきな花」(フジテレビ系)が最終回を迎えました。  昨年、社会現象を巻き起こした目黒蓮...
平野・神宮寺・岸のNumber_iデビュー間近 24年は注目多数の群雄割拠
 滝沢秀明氏創設のTOBEに合流し、本格始動が待たれている元King & Princeの平野紫耀(26)・神宮寺勇太(2...
こじらぶ 2024-02-16 10:40 エンタメ
朝ドラでは珍しい正面からの接吻!愛助ママ(小雪)来襲で“恋の炎”燃ゆる
 愛助(水上恒司)は母・トミ(小雪)に呼び出される。トミからは、スズ子(趣里)に会うのはやめるように言われ、山下(近藤芳...
桧山珠美 2023-12-22 14:40 エンタメ
北川景子に長澤まさみ…SNS離れの深層、イメージ戦略には逆効果?
 12月16日、女優の北川景子(37)の写真集『『「37」 20th anniversary』公式アカウントがInsta...
東京コミコン2023は大盛況 ひときわ異彩を放った“大衆演劇”
 千葉・幕張メッセにて、12月8日(金)~10日(日)に開催されたポップカルチャーの祭典「東京コミックコンベンション20...
熊田曜子のSNSが放つ鋼のメンタル ハレンチ不倫疑惑もよき母アピール
 プロデューサーとの不倫疑惑と元夫とのドロ沼離婚裁判を経て、離婚成立後はSNSでたびたびセクシーな姿を披露している熊田曜...
堺屋大地 2023-12-20 06:00 エンタメ
恋はつらいものよ…愛助への想いが募るスズ子に麻里(市川実和子)の名言
 スズ子(趣里)と愛助(水上恒司)の仲はすぐに広まり、羽鳥善一(草彅剛)や麻里(市川実和子)にもうわさについて追求される...
桧山珠美 2023-12-22 14:23 エンタメ
スズ子と愛助の恋路を妨害! メッセンジャー黒田のメッセンジャーぶり
 愛助(水上恒司)と坂口(黒田有)の話を聞いたスズ子(趣里)は、耐えきれずに部屋に押し入る。  ここで話をつけよう...
桧山珠美 2023-12-18 14:45 エンタメ
渡辺翔太が国宝級イケメンランキング初V!Snow Manはめめだけじゃない
 恒例の「ViVi国宝級イケメンランキング 2023年下半期」が発表されました。  NOW部門1位は、八木勇征(2...
スズ子と愛助「年の差恋愛」に障害…おでん屋台店主・伝蔵の台詞に注目
 愛助(水上恒司)から「恋人になってください」と言われ、スズ子(趣里)は「ちょっと考えさせてほしい」と答える。それ以来、...
桧山珠美 2023-12-16 06:00 エンタメ