紙上再録「TAMORI80~勝手にタモリ80歳大生誕祭‼」(1)

更新日:2025-12-29 17:03
投稿日:2025-12-29 17:00

 間もなく「戦後80年」が暮れようとしている。「終戦の日」からちょうど1週間後、1945年8月22日にタモリ(本名:森田一義)が生を受けてから今年で80年。その記念すべき誕生日の前夜に東京・南青山「BAROOM」で「スージー鈴木のレコード研究室 特別編」として、「TAMORI80~勝手にタモリ80歳大生誕祭!!」(日刊ゲンダイ後援)が開催された。

「戦後民主主義の申し子」が桑田佳祐なら、タモリは「日本の戦後そのもの」だ──。

 そう言い切る音楽評論家・スージー鈴木氏(59)の呼びかけの下、「タモリ論」の著者で作家の樋口毅宏氏(54)、「タモリ学」の著者でライターの戸部田誠氏(てれびのスキマ=47)という当代きってのタモリ論客が集結。日刊ゲンダイの奇人・今ラチ夫(51)も加わり、タモリの大きな功績を語り合った伝説のトークショーを紙上再録する。

 第1回は「私たちのいちばん好きなタモリ・イヤー」(全3回の前編/中編後編

  ◇  ◇  ◇

■フジテレビの昼は「いいとも!」を再放送すべし

スージー鈴木(以下=ス)タモリの本当のストーリー。もっと言えば「戦後80年」、「タモリ80年」というテーマのシンポジウムということで行きたいと思います。

樋口毅宏(同=樋)僕、この今、会場にいる中で一番タモリについて詳しくないですよ。

ス)めっちゃ書いてますよ。(タモリ論は)10万部くらい売れています。

樋)ぜんっぜん、詳しくないのにタモリについて書いて、それがまかり間違ってベストセラーになって、それを読んだ頭がおかしい女に「泣きながら一気に読みました」って言われて、その女と結婚して今、子供がいるっていう。本当に自分でもよくわからない状況に巻き込まれちゃったの。

ス)それ、よくテレビに出てはる方ですよね。

樋)三輪記子(弁護士)って言う。きょうは珍しく「子守り」をやってもらっています。いつも自分がやってることを。

ス)じゃあ、きょうは記子さんがいないので、好き勝手しゃべってください。

樋)なんでこいつ、タモリについて詳しくないのにタモリの本を出してんだって。大丈夫、中澤新一だってチベットに行ってないのにチベットの本書いてるんだから。

ス)「笑っていいとも!」が終わったのは、2014年。

樋)あっ、じゃあもう10年経ってんだ。お昼が退屈になってから。もう10年を迎えますか。

ス)今、フジテレビって、あの枠なんだっけ?

今ラチ夫(同=今)「ぽかぽか」です。

ス)名前が浮かばないですもんね、番組のね。

樋)だから、もう常々言ってんの。もうお昼12時、毎日「いいとも」の再放送しろって。

(会場拍手)

ス)それ見たいな、初期のやつ。

樋)「今日は1987年の6月13日からお送りします」とか、ちゃんとテロップ入れて。「現代的視点から見れば問題なところもありますけれども、オリジナルを尊重してそのまま放送します」って。ゼッタイ! その方が(視聴率の)数字いいから。

ス)リクエストがあるといいですね。「安産スッポン!」とか。

■1981年36歳で自らインテリを表明

ス)ひとネタ目はこれでございます。「私のいちばん好きなタモリイヤー」。何年のタモリが好きかということであります。まず、私が好きなのは「1981年のタモリ」です。先に僕、司会なんで言いたいこと、言っちゃいます。

「今夜は最高!」(日本テレビ系)とか、10月から始まった「夕刊タモリ!こちらです」(テレビ朝日系)っていうニュースをパロディーにした番組があって。製作は「フルハウス」なんですよ。後の「ハウフルス」。知的な、割と〝インテリ殺し″みたいなところがあって。この番組では時事ネタとか、タモリがインテリに向けて喜ぶようなネタをやり始めて。その時、批判が多かったんです。もう、イグアナのモノマネじゃなくて、ちょっとそういう方向に行くのか、とか。覚えているのは、ビートたけしが「タモリなんてエセ・インテリだよ」とか批判して。僕ね、グッときたんですよ。81年のタモリチルドレンです。

「今夜は最高!」にコメディアンの藤村有弘がゲストで出演し、灰皿を持って、偽フランス人のタモリが灰皿を持って「あいざー」って言ったんですよ。これ、何かっていうと、フランスでは「ハ行」(の発音)がないってネタです。それを見て、エセ・インテリのウチのおかんが「この人は頭ええな。フランス語、知ってるわ」とか言って。僕も「タモリ、頭いいな」と思ったんですよ。後に、たけしが「あんなものはエセ・インテリ」って批判して、80年代後半はね。僕、その言葉を聞いて、ちょっと俺は騙されたのかと思ったんですよ。

 でもね、今日言いたいのは、そこから平成以降、「芸人はバカじゃなきゃダメ」って空気になるじゃないですか。インテリとかじゃなくて。みんな松本人志以外だって、みんな松本人志の奉仕にする、同型にならなくてはいけないようなムードになって。「あー、コメディアンだけど、インテリとかっていうのをちゃんと表明したタモリはいいなー」って思ったのが、81年でございます。しゃべりすぎました。ありがとうございます。

戸部田誠(同=戸)81年ってタモリさんの本当のターニングポイントのひとつ。それを象徴するのが、タモリさんを起用した新聞広告の秀逸なコピーです。「1年前、女性たちが一番嫌いに挙げた人なのに、今年は一番好きな人です」っていう。だから、もう本当に「普通の人たち」に受け入れられた年なんですよね。

ス)翌年が「いいとも!」(の放送開始)ですよね。スキマさん、そのTシャツは何ですか?

戸)福岡でイベントした時に、主催した人が作ってくれたんです。「中洲産業大学」。

ス)メッチャ欲しいな。どこかで売ってるんですか?

戸)売ってないです。

■1982年37歳で「夜の顔」から「昼の顔」に

ス)樋口毅宏さんは、その次の1982年。好きなポイントはありますか?

樋)やっぱり、「いいとも!」と「タモリ倶楽部」(テレビ朝日系)が始まる年ですかねえ。

ス)「いいとも!」の放送開始がこの年の10月4日ですって。その頃はもちろんリアルタイムですよね? どんな印象でした?

樋)やっぱり、(番組)プロデューサーの横澤(彪)さんがよく言っていたように、(当時の)タモリって、もう「夜の時間の人」だったですよ。イグアナの芸とか、とにかく変な人が「何でお昼に出てるんだ!」っていう感じですよ。覚えてる人も多いと思うんですけど、「いいとも!」の前はね、「笑ってる場合ですよ!」(フジテレビ系)があって、大漫才ブーム。「B&B」とかが出演していて。九十九一さんも後半にその曜日のMCを担当して。当時は「MC」なんて言葉もなかったですけど。

ス)いいワードですね。「ツクモハジメ。皆さん覚えています?

樋)で、子供心にまだ漫才ブームが続いてるのに、まだ視聴率とか安定してるだろうと思っていたら、横澤さんがバッサリと「笑ってる場合ですよ!」をやめて。後になって何で横澤さんが終わらせたかと言うと、楽屋に行ったら芸人たちが女とカネの話しかしていない。それにイラついたので「タモリがいい」と。そう横澤さんが言い出して、10月に今度は「笑ってる場合ですよ」から「笑っていいとも!」と。正直、漫才ブームは社会現象になっていたし、その後釜なんですよ。おっきい、おっきい穴をそんなもので埋まるはずがないって、子供心に思っていたんですよ。そしたら、もう、とんでもないことが起こったっていう。

 タモリさんもタモリさんで、多分、そんなもの続くはずがないっていう風に思っていたと思うんです。現に10月に番組が始まって、年末年始には奥さんとハワイ旅行に行くチケットを買っていたって言うんですよね。

ス)いい話ですよね。

樋)でも、それはタモリさんなりの、芸人としての「願掛け」だったなと思う。これをフイにするっていう。その願掛けがまさに叶うわけなんですけれどもね。本当に僕、タモリさん、そんな詳しくないんですよ。だけど、以前、本当に好きだった番組が「笑っていいとも!」と「タモリ倶楽部」で、大体、意識しなくても見た番組がクッだらないくらい頭の中に色々と入っている。本当に2大番組ですね。他は僕、(タモリの番組は)全然覚えていない。この間も「プラタモリ」(NHK)とか見たけど、どこが面白いのか全然わからないし。

ス)「いいとも!」が始まった頃は見ていらっしゃいました? リアルタイムで。

戸)僕はまだ幼すぎて。1978年生まれなんで。

ス)あ、そうか。4歳じゃまだ見てないか。後から振り返って「いいとも!」の誕生の瞬間とか、どんな感じですか?

戸)やっぱり、それはタモリさんを選ぶっていう、すごさですよね。

ス)確かに異物感あったもんなあ。初め2年ぐらいまで。なんか、異物感があった気がします。けどね、いつか突然、どっかで跳ねるんだよなあ。

中編につづく)

エンタメ 新着一覧


芦田愛菜"好感度トップレベル”でも女優で空振り続きのナゾ…映画「果てしなきスカーレット」が危険水域
 芦田愛菜(21)が主人公・スカーレットの声を務めた11月21日公開の映画「果てしなきスカーレット」が、事前予想を大きく...
2025-12-14 17:03 エンタメ
草彅剛がもったいない!「終幕のロンド」鬱展開に感動の押し売り…それでも1つだけ“再確認できた”こと
 多くの作品が最終回に向けクライマックスを迎える2025年の秋ドラマ。その中でも、屈指の演技派・草彅剛さん(51)主演作...
こじらぶ 2025-12-14 11:45 エンタメ
【芸能クイズ】2025年「今年の漢字」は熊! クマは訓読み、では“音読み”では何と読む?
 テレビやネットでふと耳にした、あのひとこと。記憶の片隅に残る発言の背景には、ちょっとした物語があるのかも?  ネ...
手越祐也は小6で12時間の猛勉強の末に明大中野中学に合格 =大学は早大人間科学部eスクール
【続続・あの有名人の意外な学歴】#3  手越祐也   ◇  ◇  ◇ 「ヤンチャなイメージが先行している手越祐也(...
2025-12-13 17:03 エンタメ
国分太一の活動再開とTOKIO復活のための起死回生の一発
【城下尊之 芸能界ぶっちゃけトーク】  元TOKIOの国分太一(51)のコンプライアンス違反による日本テレビの番組降板...
2025-12-13 17:03 エンタメ
羽鳥慎一アナが「好きな男性アナランキング2025」首位陥落で3位に…1強時代からピークアウトの業界評
 オリコンニュースによる「好きな男性アナウンサーランキング2025」が12月12日発表され、1位になったTBSの南波雅俊...
2025-12-13 17:03 エンタメ
横浜流星は自作の小説でプロデューサー業を宣言…佐藤健や岡田准一は? 俳優が続々と進出する“裏方業”の成否
 俳優の横浜流星(29)が12月11日に都内で行われた「2025 小学館DIMEトレンド大賞」に出席し、「20代も今年最...
2025-12-13 17:03 エンタメ
渡部建「多目的トイレ不倫」謝罪会見から5年でも続く「許してもらえないキャラ」…脱皮のタイミングは佐々木希が握る
 2025年も残すところあとわずか。そんな中、騒動から5年以上たっても“許してもらえない芸人”がいる。アンジャッシュの渡...
2025-12-13 17:03 エンタメ
「ばけばけ」吉沢亮、“国宝”俳優の本領発揮。錦織の“一瞬で見せる表情”が素晴らしかった
 リヨ(北香那)の恋が終わった。翌朝、出勤するトキ(髙石あかり)の前にリヨが今までの応援のお礼に現れる。お礼のついでに発...
桧山珠美 2025-12-13 11:09 エンタメ
永野芽郁と広瀬すずが広域通信制の知名度を押し上げた
【続続・あの有名人の意外な学歴】#2  永野芽郁&広瀬すず   ◇  ◇  ◇  文部科学省の調査によると現在、通...
2025-12-12 17:03 エンタメ
趣里の好感度にもいよいよ影響が…パスタ店開業の三山凌輝は「物言えば唇寒し」の悪循環
 その言動を《大丈夫かな?》と不安視する人が多いようだ。元BE:FIRSTの三山凌輝(26)の話。妻は女優の趣里(35=...
2025-12-12 17:03 エンタメ
2025年のヒロイン今田美桜&河合優実の「あんぱん」人気コンビに暗雲…来年の活躍危惧の見通しも
 2025年、日本中を沸かせたNHK朝ドラ「あんぱん」。ドラマを牽引した2人の若き女優に、相次いで暗雲が立ち込めている。...
2025-12-12 17:03 エンタメ
「ばけばけ」“ただの通りすがり”に落胆したのは錦織(吉沢亮)の方? 複雑な胸の内は
 ヘブン(トミー・バストウ)が自分の過去をリヨ(北香那)や錦織(吉沢亮)に語っていた頃、トキ(髙石あかり)は胸のモヤモヤ...
桧山珠美 2025-12-11 17:12 エンタメ
国分太一“コンプライアンス違反疑惑”で日テレが情報開示を拒むワケ…背景にある「ジャニオタ暴走」の恐怖
 日本テレビの対応に疑問を持つ人は、“ジャニオタの暴走”を忘れているのではないか。11月26日の記者会見で、元TOKIO...
2025-12-11 17:03 エンタメ
女優業邁進の田中みな実がバラエティー全降板のワケ…今も独身の理由とウワサの亀梨和也との関連
 元TBSアナウンサーのタレント田中みな実(39)が自らのキャリアについて語り、耳目を集めている。  田中は2014年...
2025-12-11 17:03 エンタメ
波瑠「フェイクマミー」で33歳俳優が魅せた“怪演” 評価爆上がりで《ジェネリック綾野剛》も返上
 12月12日に最終回を迎える、波瑠(34=写真)と川栄李奈(30)がダブル主演の連ドラ「フェイクマミー」(TBS系)。...
2025-12-11 17:03 エンタメ