女性初の競馬アナだった井口保子さん いまは小説執筆に没頭中

更新日:2025-12-29 17:03
投稿日:2025-12-29 17:00

【あの人は今こうしている】

 井口保子さん
 (伝説の女子アナ)

  ◇  ◇  ◇

 政界では女性初の総理が誕生し話題だが、競馬界では50年以上も前に女性の実況中継アナウンサーが誕生し、世間の注目を大いに集めたものだ。ラジオ関東のアナウンサーだった井口保子さん、今どうしているのか。

 井口さんに会ったのは、都営三田線白金高輪駅から徒歩7分のビンテージマンションの一室。井口さんの個人事務所だ。

「50年以上前に、ローンを組んで購入しました。3回リフォームして、やっと私好みの部屋になりました」

 部屋の壁は大理石で覆われ、天井には大きなシャンデリアが輝く。ゴージャスで、まるで西洋のお城のようだ。

「このマンション内に、もう一室持っています。そちらは自宅で、25、26年前に一括で購入しました。その自宅から、毎日この事務所に来て、日中はここで過ごしています。昼夜逆転の生活でして、起きるのは午前0時。何をしてるって? 小説を書くための勉強をしているんです」

 小説? 競馬の世界を書いているのか。

「いえ、馬の世界のことは私には難しすぎて書けません(笑)。馬とは全然関係のない、現代社会に生きる人々の心の機微を書いています。もちろん、男女の恋愛を含めて……。70代から書き始め、今は小説家の先生に習いながら……。生きているかぎり、続けたいと思っています」

■競馬場には大きなGⅠレースのときは必ず行きます

 ラブロマンスとは意外。井口さん自身は独身だ。

「残念ながら、この人の子どもを産みたい、という男性に巡り合うチャンスがありませんでした。でも、私はいつも夢を見ながら生きている“夢見る夢子”ですから、全然寂しくありません」

 3歳下の妹や学生時代の友人がよく電話をかけてきて、1、2時間しゃべっているし、知人が突然訪ねてきたりもしますから。『今日はあまりしゃべってないわ』という日は、キーボードを叩きながら、中学生の頃に習っていた日本歌曲を大声で歌うと胸がすっきりします。ピアノや歌を、子どもの頃に習っていましたから。

 食べることも楽しみだ。

「1日5回食事をとり、ブランデーを少し飲んでフワ~ッといい気持ちになって寝るという毎日です(笑)。食欲旺盛で、お酒のおつまみのようなおかずを、毎日5種類は作り、牛乳以外は何でもよく食べるので、太らないよう気をつけています(笑)。これまでのところ、大病はしていません。実はこの夏、突然胸に痛みがはしり乳腺外来を受診したら問題なしでした(笑)」

 井口さんは体形が変わらないだけでなく、テンポよく話し、表情が生き生きしている。年齢知らずのようだ。

「現在は競馬専門テレビ局『グリーンチャンネル』で放送番組審議会委員を務めております。競馬場には大きなGⅠレースのときは必ず行きます。また、ラジオ日本退職後も、函館や札幌、九州の小倉競馬場にも行きたいと思って、退職金の一部でANAの株券も買いました。チケットが半額で買えると知って(笑)」

 競馬場へ行く際には、猛勉強して馬券を買う。今秋の天皇賞では馬連と馬単を当て、ホクホクなんだそうだ。

■“2代目”女子アナから来年誕生?

 さて、4、5歳ごろからアナウンサーに憧れていた井口さんは、東京学芸大在学中にラジオ関東(現・ラジオ日本)に入社。71年、女性初の競馬実況中継アナとなり20年以上も務めた。

「しゃべるのが好きだったから、休日は結婚式などの司会やナレーションなど、365日仕事をしていました。男女差別の激しい時代でしたが、私には毎週たくさんの男性の聴取者からおはがきが届きました。それらをすべて読んで、喜んだり、励まされたり、ときには落ち込むことも……。今思えば、本当に楽しい時代でした。私が競馬の実況中継を引退して、長い年月が流れましたが、いよいよ来年あたり、若い女性アナウンサーの実況が、ラジオから聞こえてくるようになりますよ。ただ、ラジオ局は私の古巣ではなく、ラジオNIKKEIです」

(取材・文=中野裕子)

▽井口保子(いぐち・やすこ)東京・葛飾区生まれ。東京学芸大学在学中の60年、ラジオ関東(現・ラジオ日本)入社。71~95年、「競馬実況中継」で競馬中継を担当。騎手らに取材する「調教だよりジョッキールポ」などのコーナーも好評を得て78年、日本女性放送者懇談会賞受賞。2024年、JRA理事長特別表彰を受けた。

エンタメ 新着一覧


「あんぱん」ヒロインの着物がオレンジ色の納得。ドキンちゃんのモデルゆえの演出
 昭和初期、家族の愛情をたっぷり受けて育った少女が高知の町中を勢いよく駆けていく。「ハチキンおのぶ」こと朝田のぶ(永瀬ゆ...
桧山珠美 2025-03-31 17:20 エンタメ
朝ドラ「あんぱん」男性俳優陣がめちゃ豪華! 赤楚衛二路線で大ブレーク必須な最注目の若手は?
 31日(月)から新しい朝ドラが始まります。その名も連続テレビ小説「あんぱん」。あの「アンパンマン」の作者やなせたかしと...
【おむすびにモヤっと】伏線をまき散らして放送終了、そしてモヤモヤが残った。結はとんでもなくヤベ~やつ?
 歩(仲里依紗)から詩(大島美優)を引き取ろうとするのは甘かったかもしれないと聞いた結(橋本環奈)は、仮定の話を気にして...
桧山珠美 2025-03-29 06:00 エンタメ
【写真特集】倖田來未の美し過ぎるバスト♡ギリギリショット5連発
【この写真の本文に戻る⇒】40代の倖田來未が《全盛期と変わってない》と話題に…20年前と同系ファッションでも、なぜ痛くな...
2025年「冬ドラマ」を調査! 独走状態の『ホットスポット』、疲れた大人世代に『御上先生』は難しかったか
 2025年1月よりスタートした冬ドラマ。惜しまれつつ最終回を迎えたドラマがあった一方で、期待されていたものの視聴率が振...
【おむすびにモヤっと】一瞬の表情で孤独をにじませる歩。最後の最後でヒロイン逆転!?
 結(橋本環奈)は大腸がんで入院している患者・丸尾(細川岳)を担当し、食欲不振の対応に苦慮する。  一方、歩(仲里...
桧山珠美 2025-03-26 17:20 エンタメ
【おむすびにモヤっと】最終週は最後の顔見世? 糸島移住“言い出しっぺ”の愛子さん台詞を深読みすると…
 福岡・糸島に移住することが決まった聖人(北村有起哉)と愛子(麻生久美子)。ヘアサロンヨネダを翔也(佐野勇斗)が継ぐこと...
桧山珠美 2025-03-24 17:20 エンタメ
【募集】冬ドラマの感想は?面白かった&ガッカリを教えて!『御上先生』『ホットスポット』『べらぼう』etc
 コクハクでは2025年冬ドラマを対象としたアンケートを実施します。1月よりスタートした冬ドラマ、「面白かった」作品や「...
刮目! STARTO所属“歌うま”な佐野晶哉、ジェシー、田中樹以上に目が離せないアーティストは?
 田原俊彦(64)に初孫が誕生しました。おめでとうございます。「NINJIN娘」のトシちゃんも今やおじいちゃん…なんだか...
timeleszは一般人も加入、菊池風磨が逆風の中でタイプロを仕掛けた納得の理由と予想される快進撃
 一大ムーブメントを巻き起こした新メンバー募集オーディション「timelesz project -AUDITION-」(...
こじらぶ 2025-03-22 06:00 エンタメ
【おむすびにモヤっと】懐かしの風見先輩降臨でも願わくば…最終週はナベベ×詩のご対面?
 結(橋本環奈)は栄養失調の少女・詩(大島美優)になんとか食べてもらおうとラーメンを出してみるが、結局手をつけない。 ...
桧山珠美 2025-03-24 13:58 エンタメ
【おむすびにモヤっと】「米田家の家訓」のほうが良かった? 悔やまれる「米田家の呪い」のネガティブ要素
 結(橋本環奈)の娘・花(新津ちせ)は、病院で未成年の田原詩(大島美優)が人目を盗み隠れる手助けをしようとする。しかし詩...
桧山珠美 2025-03-24 14:02 エンタメ
【おむすびにモヤっと】リーダーの結、栄養失調の患者対策に献立本をパラパラとめくるだけの物足りなさ
 2023年。一人前の理容師となった翔也(佐野勇斗)は、娘の花(新津ちせ)が中学生となり大人びるのを心配するが、結(橋本...
桧山珠美 2025-03-17 18:05 エンタメ
“桃尻”といえば佐野勇斗!? 翔也の何十倍も生き生きと見えた「あさイチ」出演でのはっちゃけぶり
 14日放送の「あさイチ」(NHK総合)の「プラチナトーク」は、朝ドラ「おむすび」でヒロイン結(橋本環奈)の夫・翔也役を...
【おむすびにモヤっと】コロナ禍を描いた1週間。結の不可解な言動が目につく中、ピークだったシーンは?
 結(橋本環奈)は職場で、医療従事者の子どもたちが学校で除者(のけもの)扱いされる現状を同僚たちと嘆く。  それを...
桧山珠美 2025-03-15 06:00 エンタメ
NHKの峰不二子・中川安奈のフリー転身で恐れる女子アナら。森香澄との「あざと女」対決で勝つのはどっち?
 3月いっぱいでNHK退局を発表している「NHKの峰不二子」こと中川安奈アナウンサー。  彼女が世間から注目を集め...
堺屋大地 2025-04-03 10:41 エンタメ