一人でも小さくても筋を曲げずにいて欲しい

更新日:2025-12-29 17:03
投稿日:2025-12-29 17:00

【私と日刊ゲンダイ】

 湯川れい子さん
 (作詞家・音楽評論家)

  ◇  ◇  ◇

 音楽評論家、作詞家として知られる湯川れい子さんは政治に対しても遠慮せず、ビシッとものを言う人だ。原発に反対し、安保法制にも「おかしい」と迫った。法案成立後も樋口陽一東大名誉教授らと国民運動を展開、「立憲主義を取り戻せ」と訴えた。本紙にも何度も登場してもらっているが、こうしたオピニオンの発信だけでなく、「ヒットチャートめった聴き」「おふくろメシ」などの連載でもお世話になった。長いお付き合いなのである。

「本当にそうですね。日刊ゲンダイといえば、新幹線に乗るときに必ず買います。新聞の上にデカデカと見出しを出すでしょう。赤い大きな字で。あれを見るとついつい、手にしちゃうんです。そうか、50年ですか。本当におめでとうございます」

 こう言う湯川さんは現在の言論空間は「息苦しい」と嘆いた。

「以前、吉永小百合さんが反原発の発言をされたときにネトウヨみたいな若い人が『左翼ばばあの一人』みたいな言い方をしているので、驚いたことがあります。私は自分で右でも左でもないと思っているんですが、最近もSNSが炎上したり、パヨクと呼ばれたり。非常に差別的な言い方をされてビックリしています。相手の言論を尊重するのではなくて、否定し、攻撃する。それが言論空間で圧力的な集団と化している。安倍政権以降、大手メディアが萎縮しましたね。リベラルな意見はますます、発信しにくくなりました。過激な政党が登場し、言論空間が歪められ、社会の分断が進んでいる。米国もそうなのでしょうが、とても怖いと思います」

 芸能界にも政治的発言には差別があるという。

「どうせ、ヤクザの世話になって生きてるんだろう、とかね。平気で言ってくるんです。いまだに。政治的な意見もいまだに言えない。テレビが許さないし、大衆も芸能人には単なる娯楽。癒やしだけを求めているのでしょう。そういう環境下で、反戦を唱えた忌野清志郎さんはとても稀有な存在でした」

 こうした言論空間の中で、湯川さんが期待するのは「公平中立なマスメディア」ではなく、れいわの山本太郎のような存在だという。

「一人でも小さくても筋を曲げずに頑張っていく。ピリッとしている。そんなメディアが今こそ必要ですよ。ゲンダイさんもそうあって欲しいと思いますね」

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