更新日:2026-02-07 11:45
投稿日:2026-02-07 11:45
もう一生会わないだろう
15分ほどでバスは来た。一緒に乗り込んで、駅へと向かう。駅まで10分ほどの乗車だったが、肩を並べて、無言で同じシートに座る。
「そのモンクレール、あったかい?」
絞り出すように、優梨愛から尋ねられる。
「ふつう。デザインは気に入っているんだけれどね」
奈江は目を合わせずに答えた。
「そうなんだ。私が初めて着た時は、世の中にこんなに暖かいダウンあるんだって感動したのに」
「これは、人に譲ってもらったヤツだから。年季が入っていると、湿気とかで品質が下がると聞いたことがあるよ」
「あ…やっぱり」
そしてまた彼女は口をつぐんだ。
「あ、やっぱり」の意味はよくわからなかったけど、聞かないことにしておく。奈江は優梨愛にいらぬ気を使わせているかもしれないと思った。
「あげようか。彼氏に新しいのをおねだりするから」
「いい。私はユニクロで十分よ。ユニクロでしあわせ」
首都圏郊外の一般家庭の一人娘で、小さなころから愛されて育ったという優梨愛。恵まれていた分、幸せの感性も敏感なのだろうか。
優梨愛に、もう一生会わないだろうという予感がした。同時に、彼女の感覚を「うらやましい」と思いはじめている自分がいる。
私はまだ高嶺を見あげていたい
そんなフツーの女にはなれないから。
なりたくないけど――まだまだ背伸びをしたい。地に足がついていないと言われようが、自分はキラキラの中で生きていたい。花になれなくとも、もっと高嶺を見あげていたい。
奈江は、上り電車に逃げるように乗り込む。
グリーン車にかけこみ、本当に会えるかどうかわからない、恋人かどうかわからない人の元へ向かう。
約束まで、まだまだ早い時間だったけども。
Fin
ライフスタイル 新着一覧
都会の喧騒の中で見つけた祭り。
そこにははしゃぐ子どもの姿はなかった。
たまにはいいかな、自分のためだ...
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
【連載第81回】
ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場!
「しっぽのお...
最近では、小学生でもスマホを持っている子が増えていますよね。連絡ツールとして友達とLINEを使いこなし、時代は変わった...
いまだ残暑が残る9月の初め。月曜日のAM7:30。
すでに汗ばむ陽気に包まれながら、西村咲子は新宿西口の高層ビ...
西新宿のビル内にある大手食品会社のデザイン室に勤務し、初台に暮らす咲子。実家とはほぼ縁を切ってはいるものの、おひとりさ...
西新宿の高層ビル内にある大手食品会社のデザイン室に勤務し、初台に暮らす咲子。実家とはほぼ縁を切ってはいるものの、悠々自...
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
人の気持ちを不快にさせる、ちくちく言葉。子どものちくちく言葉は「アホ」「バカ」「マヌケ」などストレートですが、大人にな...
前回、ポンコツ商店会再起動という渦に巻き込まれた私。とりあえず、様々な問題解決のため、床屋さんと元酒屋さんとの密なミー...
南海トラフ地震の危機感が高まる中、「我が家も地震対策を見直さないと」と思っている人は増えているようです。ただ、実際に被...
台風10号の遠隔豪雨は、神奈川にあります猫店長「さぶ」率いる我がお花屋にも様々な影響を及ぼしました。大雨を睨みなが...
適度な運動で汗をかくと健康になるのはもちろん、達成感で幸福ホルモンが刺激され、心や肌にも潤いを与えます。今回は、フェロ...
セックスレスやセルフプレジャー、夫婦の在り方などをテーマにブログやコラムを執筆している豆木メイです。
最近、フ...
9月1日は「防災の日」でした。地震や台風などに対する不安が高まっている今、災害に備えていますか? 私は、しなきゃしなき...
















