平手友梨奈&長濱ねる 欅坂46最後“ミニライブ”詳細レポ<後>

こじらぶ ライター
更新日:2020-03-29 15:00
投稿日:2020-03-29 15:00

欅坂46の楽曲を象徴する「黒い羊」

「厄介者」、「変わり者」を意味する“黒い羊”である平手=“僕”が自身のアイデンティティー、心の象徴である彼岸花を持ちながら、ゆっくり静かに、ダークな低いトーンで語り口調で歌い出す。

 欅坂46の楽曲は、他のどのアイドルグループより強いメッセージ性をはらんでいる。メンバーも、曲の主人公も、可愛く見せる、聞かせる以上に、社会や大人の常識、矛盾、非条理に抵抗しようという姿勢を持っている。そのためには女性アイドル特有の愛らしいネコ撫で声より、低音で力強く意志のある歌声の方が説得力や迫力を増すことができるのだ。

 平手は全身を使った“パフォーマンス”でアイドルとして異次元の評価を受けてきたが、彼女の“歌声”もまた、作詞する秋元康氏が託した社会性を帯びるメッセージを伝えるために備え持って生まれてきたのではないかと思わせる力強さがある。

 平手が先頭の真ん中にいるからこそ欅坂46を欅坂46たらしめていたように、平手の芯のある歌声が真ん中に一本響くことでそれが欅坂46の楽曲だとすぐに分かる。

 そんな力強い歌声でサビでは「僕だけがいなくなればいいんだ」と絶望しつつも、「白い羊なんて僕は絶対になりたくないんだ」「自分の色とは違うそれだけで厄介者か?」と自身のアイデンティティーを曲げずに抵抗する姿勢を見せる。

 振り付けでは“僕”は、メンバー=周りに同調し群れる“白い羊”たちに、自身のアイデンティティーである彼岸花を奪われたり、取り返したり、投げ捨てられたりする。

“僕”が必死に自己を開示し、本来“白い羊”も待ち合わせているはずの絶望を共有しよう、理解し合おうと“白い羊”それぞれを何度も抱きしめようとするも、拒絶され激しく突き飛ばされたりもした。

当時前例ない演出 小林由依が彼岸花をキャッチ

 平手を中心としたメンバー全員の気迫のこもったパフォーマンスによって、一曲が一つの劇になっているようだった。

 特に平手の「全部 僕のせいだ」と嘆き歌うパートは、悲しみの中にも一貫して力強さがあったCD音源とはまた違って、聞き取れるかどうかのか細い声から徐々に感情を爆発させ、絶望を最大限に表現していた。

 終盤「自らの真実を捨て白い羊のふりをする者よ 黒い羊を見つけ 指を差して笑うのか?」以降のパートは、MV同様の激しいソロダンス。“白い羊”たち相手に一人黒い羊である“僕”が全力で自己開示する。一対全員。それでも全身を使って、ステージを転げ回ったり理解されようと必死にもがき、訴えかける。

 全身全霊が込められすぎて、コンテンポラリーダンスなのだろうが、気持ちが入った“迫真の演技”……いや、それをも超え“僕”に憑依しすぎて完全一致した平手自身の心の奥底からの叫びのように見て取れた。

 ラストシーンは各音楽番組で演出が異なったが、ミニライブでは他の白い羊は去った中、取り残された“黒い羊”平手=“僕”から彼岸花を、白い羊の中でも最も“僕”を理解しようとしていた小林由依(20)が受け止めた。

 小林に彼岸花を託した平手は全力を使い果たし、肩で息を切っていた。

 曲が終わった。アイドルの、握手会前のミニライブ。その最後にヲタク特有の叫びやコールなどはなく、圧倒されすぎた会場中から「おおおーー!!」と感嘆の声が響き、割れんばかりの拍手で包まれた。こんな体験は数々のアイドル現場に足を運んだ筆者にとっても初めてだった。

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STARTO ENTERTAINMENT、秋元康系女性アイドル、ローカル、地下アイドル等数々の現場を経験。Xでもご意見を募集しております。

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