ナンバーディスプレイを辿るもわからない“怪しい女性”の正体

並木まき ライター・エディター
更新日:2020-08-11 06:00
投稿日:2020-08-11 06:00
 郊外に念願の一軒家を手に入れた、1組の「パワー夫婦」。会社への通勤には少々不便な地でも、テレワークがメインの今は「少し無理をしてでも、家を買っておいて本当に良かった」と感じているそうだ。
 マンションよりも広々とした玄関、近隣住民との適度な距離感。そしてなにより「ここは私たちのお城」という独特の満足感。
 そんな夢にまで見たはずの“城”では、ときに、人生につきものの奇妙な事件も起こりうるーー。これは実在する物件を舞台にした、とある男女のストーリー。

義母からの期待外れな返答

「ええーっと。ナンバーディスプレイって……、どこに出るんだったかしらね?」

 どこの誰だか名乗らない謎の女性から、咲子の夫である陽介の実家にかかってきた不審な電話。「ナンバーディスプレイを辿れば、なにかのヒントがあるかもしれない」と、咲子は義母に着信履歴の確認方法を説明した。

 ところが、機械音痴な義母から返ってきたのは、期待外れな返答だった。

「咲子さんが今言ったボタンを押したけど……。なんにも出てこないわよ!? もう一度やるわよ……? えーっと、やっぱり画面にはなんにも出ないけど……」

 何が原因かは咲子にもわからないが、どうやら義母の家の電話にはナンバーディスプレイが表示されないらしい。義母の使っている固定電話の機種を電話口で聞き、急いでインターネットで取扱説明書をダウンロードしたから、操作方法は間違いないはずなのに。

「そうですか……。お義母さん、この件はもう気にしないようにしましょう。でも、また次に何がおかしなことがあれば、陽介さんではなく私に連絡してください。そろそろ夕食の準備があるので、ひとまず切りますね……。毎日暑いので、お義母さんも暑さ対策は忘れないでくださいね。では、また……」

もうすぐ夫が帰宅するけど…

 ナンバーディスプレイに履歴が残っていれば、見知らぬ番号に電話をかけて直談判ができると考えた咲子だったが、一瞬にしてその計画は無理だと悟らされた。

 義母との電話を切ったあと、いまだリビングの床に落ちたままの白い封筒に目をやりながら、今後の対応をしばし考える。いつもなら夕食の準備にとりかからないといけない時間になっているのだが、封筒や電話のことが気になり、なかなかそんな気分になれずにいた。

「今日は、冷凍食品メインでいっか。どうせ陽介も晩酌するから、あんまり食べないだろうし」

 重い腰をあげながら、キッチンへと向かう咲子。リビングから続いているキッチンスペースは開放感のある作りが自慢で、ここにも咲子のこだわりが詰まっている。

 緑が豊かな地に建てたこの家は、なるべく自然な色だけを使い、キッチンにも木の風合いを取り入れた。いつもなら、そんなお気に入りのキッチンに立つだけで気分が良くなるのだが、今日はやっぱりそういうわけにはいかない。

(あーあ、テンション下がるわぁ〜。そろそろ陽介が帰ってきそうだけど、封筒の件はどうしよう……。今日、本人に話すより、しばらくは様子見して観察したほうがいいのかしら……)

 平穏だった生活の中、まさか夫の浮気疑惑が浮上するなんて夢にも思っていなかった咲子は、こういうときにどうするべきか、なかなか決められずにいた。

並木まき
記事一覧
ライター・エディター
元市議会議員・時短美容家(一般社団法人 時短美容協会・代表理事)の肩書きを有する。20代から見聞きしてきた魑魅魍魎(ちみもうりょう)な人間模様への分析を活かし、美容や恋愛に関するコラムを中心に、さまざまな媒体に寄稿。
Instagram公式HP

日刊ゲンダイ掲載「あの人は今」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/277865

ラブ 新着一覧


彼氏にすると地獄!パートナーに選ばない方がいい男性の特徴
「なんでこんな人と付き合ってしまったのか…」  そんな後悔をした経験はありませんか?  恋愛は、時に楽しく...
若林杏樹 2023-12-20 06:00 ラブ
寝ても覚めてもX漬け…スマホを抱えた「SNS依存症気味の夫」どうする
 仕事から帰ってきて寝るまで、ろくに会話もせずにずっとSNSを覗いている夫…。こちらは、家事や育児に大忙しなのにイライラ...
恋バナ調査隊 2023-12-20 06:00 ラブ
これってDVなのでは?レス妻が夫にセックスを強要しないワケ
 セックスレスや婚外恋愛、セルフプレジャーをテーマにブログやコラムを執筆しているまめです。  私自身、夫が行為を拒...
豆木メイ 2023-12-19 06:00 ラブ
貴女に合う年末年始の幸運下着色&香り術は?フェロモンジャッジで解説
 素敵な女性はいい香りがする――。  そう感じるのは、肌から放たれるフェロモンの効果。フェロモンが高まると色気だけ...
太田奈月 2023-12-19 06:00 ラブ
なぜ妻を女として見れないの? 夫の目線で考えた3つの理由
 恋愛中は、あんなにお互いときめいていたのに、「まったく夫を男として見られない」と思う女性は多いですよね。でも実は、男性...
恋バナ調査隊 2023-12-19 06:00 ラブ
友達の紹介で恋愛を成功させるのに必要な事前情報&厄介な断り方のコツ
 恋人がほしい時、結婚相談所やマッチングアプリを使うのもいいですが、一番信頼できるのは「友達の紹介」です。両者をよく知っ...
恋バナ調査隊 2023-12-18 06:00 ラブ
夫婦の無言は終わりの始まり?会話がなくても長続きする男女の共通点4つ
 会話がない夫婦と聞くと「冷め切っている」「きっと離婚する」など、ネガティブなイメージを連想しますよね。でも実は、会話が...
恋バナ調査隊 2023-12-18 06:00 ラブ
俺いるのに男と飲み会ってどの口が言う!不倫相手との不毛喧嘩LINE3選
「不倫」と聞くと、陰でこそこそイチャイチャしているイメージを抱く人も多いと思いますが、実際には喧嘩も少なくないようです。...
恋バナ調査隊 2023-12-17 06:00 ラブ
「パー活」って何?40代にぴったりな理由&3つの成功術、婚活との違い
 40代の未婚女性は、自由な時間を謳歌している反面、ふとさみしい気持ちに陥ることもありますよね。ひとりぼっちの将来を想像...
恋バナ調査隊 2023-12-17 06:00 ラブ
KANA-BOON脱退メンバーの素行が物議…同時進行恋愛常習男のあるある行動
この投稿をInstagramで見る 古賀 隼斗 KANA-BOON(@kanabo...
遊び目的はパージ! マッチングアプリで男の本気度を見抜くポイント4つ
 マッチングアプリは、スマホで手軽に男性と出会えて超便利。真剣に恋活や婚活ができる場として利用者数が増加し、かなり一般的...
恋バナ調査隊 2023-12-16 06:00 ラブ
悔しさを清算したい! 結婚直前に元カノに連絡する男の思惑
「冷酷と激情のあいだvol.173〜女性編〜」では、別れてから3年も経っているのに、一方的にコンタクトをとってくる元恋人...
並木まき 2023-12-16 06:00 ラブ
警察に相談? 3年前に別れた男からの連絡に困惑する35歳女性
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2023-12-16 06:00 ラブ
既婚者のプラトニック不倫あり?肉体関係なしの仲…成功と失敗の分かれ目
 既婚者であるにも関わらず、配偶者以外の人と肉体関係を持つ「不倫」は、世間の人の反感を買う裏切り行為ですよね。では、肉体...
恋バナ調査隊 2023-12-16 06:00 ラブ
いつもより距離近くない?男友達とのサシ飲み「下心ありなし」の見極め方
 いつもは大勢でワイワイ飲んでる男友達から、急にサシ飲みに誘われたら⁉︎ ただ単に友達として誘ってきているのか、それとも...
恋バナ調査隊 2023-12-15 06:00 ラブ
「クリスマスだから何?」イベントが嫌いな彼氏の心理と一緒に楽しむ方法
 彼氏がいると一段と楽しみなクリスマスやバレンタイン♡ しかし、残念ながら全ての男性がイベントごとを楽しみにしているわけ...
恋バナ調査隊 2023-12-15 06:00 ラブ