「ある花」を大量に欲しがるお客様
ある年の年末、猫店長「さぶ」率いるわがお花屋さんに一人の男性客からお花のご注文の電話がございました。
この男性、どうやらお目当ての女性にプレゼントする花束に、「とある種類」の花を単品で差し上げたい……とのこと。
きっとこの男性の頭の中でイメージしていたであろう、彼の意中の「花の子ルンルン」が、自分のプレゼントした花束を抱えて花のように笑いながら春の草原をガンガン走り回っている……。
電話の向こうで、「その花」について熱く語る彼の話を聞きながら、ワタクシの頭の中にもズバンとそんな光景がイメージとして入ってまいりました。
しかし、普段だったらなんの苦労も要らないのでございますが、時はド年末。
花市場の入荷状況が、普段と違うのでございます。
加えて、なぜかワタクシ、ちょっぴり嫌な予感がしておりました。
「花に乗せた彼の気持ちは、彼女には届かないかもしれないね」
えぇ、ワタクシの予感は的中。彼の気持ちを乗せる花は入荷できず、伝わらないまま無常にも年が暮れてしまいました。
素朴だけど「清純」と「誠実」がシンボルのこのお花、ひょっとしたら神様が遠まわしに「やめときな」と、男性の失恋を教えてくれていたのかもしれません。
ということで、今回は「全ての女性の守護神に捧げる花 マーガレット」の解説でございます。
マーガレットってどんな花?
マーガレットはキク科の低木植物で、切り花と鉢花が売られております。
一口にマーガレットと言っても種類はたくさん!! 一般的には「白」のイメージが強いのではございますが、「ピンク」や「黄色」「オレンジ」、一重のものもあれば八重咲きもございます。春にポット苗で売られる根つきのマーガレットは、ガーデニング初心者でも全く苦労せずに育てることができるお花でございます。
また、冬の今の時期には、おうちの中で楽しめる花鉢もございます。窓辺に置いていただければ次から次へと可愛らしい花が開花して、アナタの巣ごもり生活に明るい色を添えてくれますのよ。
ちなみに、マーガレットは、「好き」「きらい」と花弁を一枚ずつ外しながら占う、あの「恋占い」に使うお花。
花弁はたいがい奇数で構成させているので、「好き」で始めれば「好き」で終わる……ということを知らなかった子供の頃。「好き」で終わる確率を知りたくて、母が育てていたマーガレットを友人と一緒にたくさん破壊して、母の逆鱗に触れたこともございます。
そんな可愛らしいマーガレットに関する逸話が多いのは、素朴だけれどこの花の持つ魅力にとりつかれた方が多いのね、ということ。
あのフランス王妃、マリーアントワネットにも愛されていたという話は有名。イギリスの田舎風にしつらえられたプチ・トリアノンの庭園にはマーガレットが植えられており、生前マリーアントワネットが心穏やかに過ごす場所として、もっとも愛した場所だといわれておるのでございます。
また、ギリシャ神話にも登場する、月の女神で清らかな処女神アルテミスに捧げたお花としても知られております。
兄妹揃って美しい容姿のアルテミスの双子の兄、太陽の神アポロンの策略により、彼女の愛する狩人オリオンを自らの手で放った矢で殺してしまったアルテミスは、嘆き悲しんだあまり生涯独り身であることを誓い、彼女の側に仕える女の精霊たちにも自分と同じように純潔を誓わせます。
いたずらに不貞をはたらく者には厳しい処罰を与える一方で、本当に愛する人に出会った精霊たちは快く送り出す、ナイスな心意気のアルテミス。
ゆえに彼女は「純潔の女神」「貞操の女神」「出産の女神」として、すべての女性の守護神として知られているのでございます。
「秘密の恋」や「真実の愛」「真実の友情」など、数あるマーガレットの花言葉は、女性の守護神アルテミスにまつわる神話から生まれたものが多く、この花を捧げられるアルテミスは、「誠実」「慈悲」のシンボルでもあるマーガレットのイメージまんまでござんすよ。
マーガレットを一番素敵に見せるコツ
お花屋さんであるワタクシ。「切花のマーガレットって、マーガレットだけまとめてバサっとが一番きれいだな。」と、いつも思っておりました。
個人的感想ではございますが、大きなガラスベースに入って店頭出ししているマーガレット、できれば売らずにこのままお店に飾っておきたいくらい。(笑)
お世辞抜きで本当に可愛いです。
素朴な美しさを持つこの花は、極力手を加えずに無造作に飾るのが、ピッタリな演出でございます。
また、1種活けのマーガレットの花びんの水は、多すぎても少なすぎてもアウト。花びんの中程度がオススメでございます。マーガレットは意外とお水を飲みますので、できれば毎日お水を替えてくださいませ。また、お水を替えるたびに1センチ程度の切り口を切る「切り戻し」という作業をお願いしたいお花でございます。
そしてこれも個人的感想ではございますが、お花屋さんでマーガレットを買う場合、「水上がり」の状態が良いか悪いかで、そのお花屋さんの力量が伺えるような気がいたします。
お花屋さんは、花市場でお花を仕入れたあと、花の種類に合わせた「前処理」という作業をいたします。その作業をキチンとしているかどうかは、そのお花屋さんのお客様やお花に対する「誠意」と「慈愛」の表れ。
特に、マーガレットはその「前処理」をキチンとしていないとたちまちグッタリ・ゲンナリしてしまうため、アナタのおうちにお迎えしたあとキッチリ最後のツボミまで開花してはくれません。
もしも、アナタがマーガレットをお花屋さんで見かけたら、そんな裏話を思い出して、アナタのおうちにお迎えしていただけたら……と思うところでございます。
金運アップの効果があるかも!?
マーガレットは、「金運アップ」に効果があり、お金を呼び込むだけではなく、さらに、貯めるとも言われております。
白いマーガレットは「浄化」の色ですし、黄色いマーガレットは「金」の色。これを相性の良い西や北東へ飾ると良い、と言われております。
もしも可能であれば、白と黄色のマーガレットをコンビで飾ってみてはいかがでしょうか。
金運を意識しなくても、生花を飾ってお世話をすることだけでも、良運をつかむチャンスがやってくると申します。ぜひお試しあれ。
世の中、「ステイホーム」月間。なんだか、春の緊急事態宣言の時とはちょっと様相が違うようでございます。
アナタのおうちに「春」を感じる色を取り込んで、アナタの心の健康がどうか保てますよう……遠いお空の向こうからお祈りしておりますよ~。
ライフスタイル 新着一覧