スリルと隣り合わせの情事に再び溺れ…
――続けてください。
「R美さんは相変わらずインスタで「匂わせ」を続けていました。シティホテルの時などは、ダブルベッドとガラス越しの夜景の画像をアップし、『女の幸せって、男に求められることかも♡』との投稿がありました。一瞬、複雑な思いに駆られましたが、僕はもう『旦那さんは、大丈夫?』などと訊くことはやめました。
むしろ、僕自身が彼女のインスタを見て、興奮や優越感を覚えるようになったんです。ラブホテルの写真を見ては、『ああ、ここで初めて彼女を抱いたんだっけ』とか『この時の、フェラチオ……すごく気持ちよかったな』などと思い出しては、股間を熱くさせました。
今さらながら、男って単純ですね。再びセックスに溺れてしまった。そして、スリルと隣り合わせの情事が、これほど大きな『ギフト』になると思わなかったんです。
――今もR美さんとは続いているのですか?
「続いています。実は、あれからまた妻の働くリサイクルショップに、洋服を売りに行ったらしいんです」
「匂わせ」彼女が抱える孤独
――えっ、そんな……大丈夫なんですか?
「はい、最初は驚きましたが、妻には不倫の件はいっさい匂わせず、『単なるお客』を装ったと言っていました。僕が『どうして、また行ったの?』と、努めて穏やかに訊くと、次のような返答がありました。
『自分でもうまく説明できない。ただ、私は子供もいなくて夫も単身赴任なので、時おり、言いようのない寂しさに包まれてしまう……。そんな時、Wさんの温もりだけが救いなの。一度別れを切り出された時、もう死んでしまおうかと思うほど、とり乱してしまった。今でもふっと孤独で苦しくなってしまう。
で、気づけば、Wさんの奥さんの店に足が向いていた。きっと奥さんに対して、マウンティングしたかったのと、奥さんを通してWさんともっと深くつながりたい気持ちもあったかもしれない……』と」。
家庭と不倫の両立を決意
――R美さんもおつらいんですね。
「そうでしょうね。誰が見てもキレイで輝いている女性ですが、美しさや若さイコール幸せとは限りません。R美さんは、さらにこうも言いました。『心が不安定にならないよう、自分でも気を付ける。だから、私を捨てないでほしい。Wさんには絶対迷惑はかけないから……』と。
その必死の言葉に、僕のほうが情にほだされてしまってね……なるべく優しく接するようにしています。もちろん、セックスも手を抜きません。ただ、彼女が僕を破滅させるスイッチ――あの写真を持っている事実は常に忘れずにいます。これだけは怖い。だから彼女を上手に『手なずける』しかないんです。
いや、もしかしたら、僕のほうが彼女に手なずけられているのかもしれませんね。時々、彼女に好きな人が現れて、僕を振ってくれないかな……とも思いますが(笑)、今の段階では、それは無理そうです。家族と仕事を大切にし、R美さんとも上手に付き合っていこうと思います」
――Wさんはため息とともに苦笑した。これからR美さんとデートだそうだ。人間は誰でも「心の闇」を持っている――そう思わずにはいられないインタビューだった。
Wさんの幸せを願い、筆者はその背中を見送った。 了
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