今年もあと少し
猫店長「さぶ」率いる我が愛すべきお花屋にも、年末に向けた商品が続々と業者さんから届き始め、早すぎる一年の流れに驚きながらも一気に“年末戦闘モード“になってまいりました。
そうなると不思議なもので、猫店長も邪魔にならないための気遣いなのか、ご自分のハウスの中でぬくぬくと毛布に包まれて“年末ロングタイム昼寝モード”に突入しております。
花市場で扱われる商品はお正月商品が増え、心なしか市場のお兄様たちの鼻息が荒くなってきた様子。フラフラと歩いていると、まさに山から切ってきたばかりの年末商材納品現場に遭遇。その場で仕入れた一年ぶりのキラキラ商材が、ワタクシのすっかり緩んだフンドシを締め直してくれました。
今回は「今年もビッチリ実ってます! 開運の赤いイイギリの実」の解説でございます。
イイギリってなんですか
イイギリとは樹高10~20mにもなるヤナギの仲間で、秋になるとブドウの房のような赤い実をたわわにつけ、とても目立つ存在の落葉樹でございます。
お花屋さんの間では「南天桐(なんてんぎり)」と言われ、お正月商材として欠かせないものの一つ。南天桐というからには南天なのか桐なのか。
南天桐の南天はイイギリの実が南天の実に似ているから。そして樹皮や木を桐の代替え品として使われていたこと。
葉も桐の葉に似ていたためで、別にどちらとも全く関係ござらん「なんちゃって」ではあるものの、南天桐と聞いただけでものすごく格が上がった感じでございます。
寒いのは少々苦手で、割と暖かい地方の山や街路樹、公園などで見かけるイイギリ。漢字では「飯桐」と書きます。昔はこの木の葉でおにぎりを包んだり、器にしていたことから付いた名前ですが、イイギリの木といえば、なんと言ってもたわわに垂れ下がった赤い実が魅力的!
ではあるのですが、雌雄別株のイイギリは実が付くけど花がお地味な雌と、実が付かないけど花が綺麗な雄、花は綺麗で数年に一度実がなる“おいしいとこどり”の雄雌合体です。
とても大きくなる木なので庭木というわけにはいきませんが、街路樹や公園などに植えられたイイギリが春には緑の花が咲き、美しい紅葉を楽しんだあとには枝いっぱいに印象的な赤い実が残り、一年通して季節の移ろいを知らせてくれます。
散歩の途中に暗い冬の空を見上げるとワクワク、たわわになった赤い実が視界に入るだけでも気分が上がる心持ちですな。
お正月の大きな生け込みにも欠かせないイイギリ。ワタクシのお店では、毎年やたらと大きな樹形のものを大量に仕入れます。そのたびに店内には収まりきらず、大騒ぎしながら結局、店外の軒先にて保管。
そして知らぬ間にやってくる「あるもの」と闘う日々でございます。それは可愛いけれど意外とデカい、鳥軍団!
イイギリはおそらくおいしくない
お正月に飾る実物といえば千両・南天・万両がド定番ですが、どれも赤い実がついていて、赤色は厄除け・邪気除けとして知られております。
厄除けに加え、商売繁盛や金運アップなどを願うものでもあり、庭木の開運植物として、その効果は東・南東・南に植えると良いとされています。
とはいえ、お庭に植えた千両や南天の実は、鳥たちに食べられてお正月には無いー! なんて経験をなさってる方がとても多い。早い時期から網をかけたり、囲ったりしながら鳥たちに抵抗なさっている方も多しw。
ワタクシは「たんとお食べなさいよ」と食べさせてしまう派ですが、千両や南天はあっという間に実がなくなってもイイギリは残っている。
冬でも食べられることなく、たわわになっている……。おそらく相当マズイんだろうな、と思います。
だがしかし! 猫店長「さぶ」がロングタイム昼寝中なのをいいことに、ヒヨドリやツグミなど近くで見ると割とデカい鳥たちが、せっせとワタクシのお花屋さんの軒先にやってきて売り物のイイギリをお召し上がりになっている――。
止めるべきか否かを迷っているうちに枝のてっぺんがなくなって、短く切り詰めて無事店内に収納。なんてことを毎年繰り返しているのでございます。
お正月には大活躍
お正月の生け込みには欠かせない開運素材のイイギリですが、普段でも使うんですよ。いずれはドライフラワーになることを見越した、壁掛けなどのスワッグ材料として重宝します。
これからの季節、クリスマスやお正月飾りを玄関の扉に装飾する方が増えてきますが、オススメは束ねたエバーグリーンにイイギリの実を付けただけのシンプルスワッグです。
エバーグリーンは檜やヒムロ杉などを使えばクリスマスに。松を使えばお正月です。
クリスマス用に束ねたエバーグリーンの束でも、これに100円ショップでも手に入る小さなしめ縄をプラスすれば、そのままお正月飾りに変身。花言葉はお正月に相応しい豊かな言葉「恵まれた人」「豊穣」です。
難しいことは考えずアナタの心のおもむくままの花遊びでもなぜかオシャレに見えます。お試しあれ。
イイギリの赤い実がアナタを災いから守ってくれますことを……遠いお空の向こうからお祈りしておりますよ~。
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