彼の子どもと名前に「共通点」がある?
ドライブのBGMは彼の友人が編集してくれたというJ-POPヒット曲集。どれも真央の脇を通り抜けていたものばかりだったが、彼の趣味に合わせるように、あゆのSEASONSを慌てて覚えた。そして30歳の時に結婚…。
その頃を思い浮かべながら、ソファの上でスマホを眺めていると、学生時代の仲間で銀二との共通の友人・賢雄からLINEが届いた。
『おっつう~』
川崎で親の代から続く居酒屋を経営している賢雄とは、今でもたまに彼の店で顔をあわせる。映画マニアだが、仕事柄どこか軽さのある陽気な男だ。
タイミングからして、銀二がこの再会をLINEか何かで告げたのだろう。
真央は重たい気持ちで既読をつける。適当なスタンプで返信をするつもりだった。しかし、その内容に真央の目がとまった。
『真央の子どもの名前、リンとタケシって本当? 銀二の子供もレオンなんだろ!? やべぇな』
やべぇな、とは。なにがいけないのか。
答えを探る中で、しばらくしてやっとその理由にたどり着いた。
銀二が投げかけた「本当の」言葉の意味
なぜ気づかなかったのだろう、と真央は再び、奇声を発したくなる。
“武”と“凛”の名は、昔好きだった映画『恋する惑星』に出てくる俳優さんからとった。
金城武と、ブリジット・リン。学生時代から子どもができたらセットで付けたいと温めていた名前だった。親戚や夫には適当に由来をこじつけ、納得してもらった。
――まさか、レオンくんも…?
武と凛の名前を出したときの反応からして、銀二の息子も、あの映画に由来しているにちがいない。
適当にあしらっただけでなく、その意味にさえも気づかなかった。
変わったと言われても仕方ない。
いや、もう変わってしまっているのだ。身も心も、すべて。
時の流れに従っていれば人間が変わるのは必然だ。社会性を身に着けて、服装や言動が成長するのもあたりまえのこと。
だけど自分だけは、どんなに見た目は変わっても、芯は変わらないと思っていた。変わりたくなかった。センスも志向も考え方も、「ちょっと変わり者」を自負していた昔のままであるはずだと。
そんな、平凡な一般人になりきれない自分も好きだった。
でも――。
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