握手会会場は「密閉、密集、密接」の3密
2010年代より握手会を売上、人気の基調とし隆盛を誇ってきた秋元康氏プロデュースのAKB48グループ(以下、48G)や、乃木坂46、欅坂46、日向坂46からなる坂道シリーズ(以下、坂道)。今後、彼女たちのような握手型アイドルのあり方が問われる事態になってきた。
新型コロナウイルスの影響で今年2~6月に予定されていた握手会のほとんどが開催延期になった。日本全国の緊急事態宣言が解除されても、これまでと同様には開催できない可能性もある。
彼女たちの握手会会場は多くが室内で、1日に数万人単位でファンが押し寄せ、「密閉、密集、密接」の3密を完璧に備えているからだ。
握手券付きで同一CDの複数枚購入を促し、数十万枚、はたまた、ミリオンヒットを連発してきた秋元系グループ。このシステムは「AKB商法」と呼ばれるものだ(坂道もシステムは同じ)。
果たして彼女たちの握手会が今後、行われないとなったら、CD売上はどうなるのか。大所帯グループである彼女たちは存続することができるのか。
筆者は48Gと坂道のファンを対象に緊急アンケートを2つ行ってみた。1つ目は「これまで同一タイトルのCDを何枚購入してきたか」、そして2つ目は「今後握手会等メンバーと会えるイベント券が付かなくなったらCD購入枚数はどうなるか」というものだ。
AKB48、坂道グループのファンに聞いた「同一タイトルCDの購入枚数」
まず1つ目のアンケート。総投票数193票中、
1. 握手参加有無に関わらず1枚=24%
2. 握手参加有無に関わらず2~5枚=60%
3. 握手参加で6~10枚=9%
4. 握手参加で10枚以上=7%
選択肢1.については、同一タイトルにつき1枚しか買わないライト層や握手会などのイベント現場には出向かない在宅系ファンも当然いることの表れだ。
最も多かった選択肢2.については、同一タイトルでも初回限定盤Type-A~Dおよび通常盤などタイプ別の多種形態があるので、握手会に関係なく複数枚買いするファンが存在することを表わしている。
このアンケートでは秋元系グループファンでも、1枚しか買わない層と多種形態2~5枚購入の層を合わせ、合計84%が握手会の有無に左右されないことが明らかになった。
AKB商法は「ジャニーズ商法」をお手本にした
多種形態販売については、同一タイトルでファン一人当たりのCD購入枚数増を、AKB48結成以前の2000年代初頭から成功させた「ジャニーズ商法」を踏襲している。
その成功はもちろん、メンバー自身の人気や作品の質の高さが根本にあるのだが、当初「ジャニーズ商法」は純粋な同一商品の売上ではないので、他アーティストなどの音楽ファンの間で批判されることもあった。だが筆者は、タイプ別に創り手の想いや労力が込められたコンテンツや特典が入っているので、商売をする上では「上手い工夫」だと捉えている。
ミリオンヒット連発だった90年代のCDバブルが弾け、どのアーティストも売上が低迷し始めた2000年代以降も、ジャニーズの多くのグループは安定的に10万枚~60万枚程の売上を達成してきた。
ただ、今回の上記アンケート選択肢で3番目と4番目の割合となった、選択肢3.(6~10枚購入)と4.(10枚以上購入)の計16%の層が「ジャニーズ商法」に上積みをする、握手型「AKB商法」の肝だ。この層のファンが多種形態を購入したうえで、さらに握手券のためだけに完全な同一商品を複数枚購入する。
ジャニーズデビュー組より大所帯
加えてジャニーズのデビュー組は1人~9人ほどの一桁であるのに対し、48Gと坂道は1グループ20人~100人以上の大所帯だ。
“握手要員”と言われることもある彼女らそれぞれにファンが付き、多種形態買いをする。それに加えて2割弱のコアファンが数十枚~数百枚、果ては数千枚購入し売上を押し上げる。
これによってジャニーズ人気グループでも近年なかなか果たせなかったミリオンヒットをAKB48が通算39作、乃木坂46が通算9作、欅坂46が通算2作達成している(いずれもオリコン調べ)。批判の多いこのAKB商法だがメンバーの努力とファンの想いの結集だと筆者は捉えている。
続いて、2つ目のアンケート「今後握手会等メンバーと会えるイベント券が付かなくなったらCD購入枚数はどうなるか」の結果を見てみたい。
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