猫が結んだ奇妙な縁
窪塚さん演じる朝秀晃は、ボクシングの元東洋チャンピオン。ボクシングでの後遺症に悩まされながら生きる意味を見出だせず、警備会社でアルバイトとして働いています。独身で、孤独な生活を送っている唯一の癒やしが、野良猫のマル。ですがマルが失踪してしまい、保健所に向かった玄関先で、降谷さん演じる自動車の整備工場で働く、梅津郁巳と出会います。郁巳がマルを引き取り、抱っこして現れるのです。
秀晃「マルは俺の猫だ!」
郁巳「この子は俺がリリィと名づけた。今日からリリィですよ~」
コミカルなやり取りが続けられますが、猫を通じて郁巳(降谷さん)は秀晃(窪塚さん)を「マル」と、秀晃は郁巳を「リリィ」と呼ぶ関係に。その後、お互いに本名を呼び合わないので、「マル」と「リリィ」として作品を楽しんでください。
マルは市川由衣さん演じる元恋人にストーキングされているシングルマザー・土屋冴子のボディガードを請け負います。その場に居合わせてストーカーを殴ってしまったリリィも一緒に行動することになり、3人で東京へ。マルとリリィはバディ関係になります。
『池袋ウエストゲートパーク』の“キング”を思い出す逃走シーン
以降は、バディ×ロードムービー×ストーカー×リベンジポルノ×ドラッグ×汚職×殺人など、内容がてんこ盛り。冴子が隠している事情によりマルとリリィ、冴子と冴子の過去の同僚(柳英里紗さん)が池袋を逃げ回るシーンは、TBS系ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(IWGP)を彷彿とさせ、“キング”を思い出す人もいるかもしれません。
圧倒的な存在感を放つ窪塚さんがいてこそ本作が成立するのですが、降谷さんの熱くてやさしい、天然エッセンスが入ったお芝居も秀逸。撮影中は品川庄司さんに“新人俳優”とイジられたそうですが、窪塚さんからは「建志くんは懐が深くて、僕らにフルオープンハートで接してくれたから、純度と温度を上げていける現場になった」と評しています。一見、コワモテに見えますが実は降谷さんの親しみやすい人柄が、役に反映されたとも言えそうです。
女も見惚れる市川由衣のサービスショット
筆者は本作で、窪塚さんと降谷さん以外にも、市川由衣さんと火野正平さんにも注目。市川さん演じる冴子はヒロインではありますが、泥水をすすってきた女性。“サービスショット”が満載です。「どうしたらこんなスタイルを維持できるのか」と、尊敬の念で見入ってしまいました。冴子が“サービスショット”中のまま、マルが冴子に言った「一生の選択は、いつも一瞬だ」という台詞にも、考えさせられるものがありました。今この瞬間も、なにをするかしないかは、選択の連続。「後悔しない人生を送るために今できることはなにか」と、短い台詞に胸をえぐられたのです。
火野正平の「昭和の色気」がたまらない
登場シーンは少ないものの、火野正平さんの存在感はほかの役者さんには出せないほど重厚。役柄としては色気が必要ないのに、“昭和の色男”や“元祖プレイボーイ”と呼ばれた色気を放っています。低音ボイスと相手を思いやりながらも恐怖心を与えるお芝居が、作品をピリッと引き締めています。
コロナ禍でも緊急事態宣言が明けた地域が多いですが、おうち生活は長引きそうです。自宅ですごすひとときに鑑賞してみては。本作は賛否両論ありますが、筆者はすでに2回鑑賞しました。仕事以外でいつか、もう一度鑑賞する予定です。
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