発達障害? もしかして…と感じる子と向き合うことについて

小阪有花 子どもの心スペシャリスト
更新日:2019-04-05 01:59
投稿日:2019-03-10 19:45
 最近よく耳にするようになったADHDや自閉症スペクトラム。私は発達障害の専門家ではないので、それらの症状を持った子とそうでない子を見分けることはできません。でも、もしかして?と気になる子供たちとの出会いは、保育園の現場でありました。今回は、自分がその時どんなことをしたか、何を感じたかをお話ししようと思います。

発達障害は「向き合っていく」もの

 一般的に、4歳を過ぎてからでないと正確な診断が難しいといわれてる発達障害。

 だから、たまにその可能性を秘めた子供に出会っても、もしかして?と思うだけで、私たち保育者にはどうすることもできません。しかしだからと言って、何もしないわけではありません。

 そもそも発達障害は「治す」ものではなく「向き合っていく」ものだと私は考えています。その意味では、定型発達の子供たちと、かかわり方は何も変わらないのです。

 保育園で変えていったことは、まずは子供との接し方でした。

 ある日、ひとりの先生に相談されました。

「〇〇ちゃん、自由時間ずっと立ち尽くして、ボーッとしたままなんです。好きな遊びをしていいよと言っても、動かなくて……」

 その話をされた時、最初はまだ保育園に溶け込めていないだけかと思っていました。でも、それ以降も様子に変化はなく、こちらが一方的に与えるのも違うし……と悩んでいました。

 今の保育園は、ひと昔前の“指示出し保育”ではなく、子供たちが自分のことを自分でできるよう、環境を整えてあげることが主流になってきています。とくに自由時間などは文字通り、自由に遊べる環境をつくって、子供たちの主体性に任せているのです。

 しかし、もし立ち尽くしているこの子が、発達障害だった場合は?その子にとっては、とても混乱してしまう場になってしまっているのではないでしょうか?

もしかして?と感じる子供との接し方

 発達障害の子には、決められたルーティンでないと、どうしていいかわからなくなってしまうという子もいます。いつもと同じこと、同じ場所、同じ人に安心を覚えるんですね。

 大抵の子供はそうですが、発達障害の子の場合は、この“同じこと”がより「ピンポイント」なのです。

 確かに、今の保育園は多くの選択肢があり、子供たちの意思の尊重につながる良い環境です。けれども、発達障害の子には、かえって選択肢が多すぎて困惑させてしまう環境なのでは?

 保育園で現場を見ていた当時の私は、こうした発達障害かもしれない、もしかして?と気になる子供たちについて、いつも考えていました。

 そうして、自由時間になると立ち尽くしてしまう子に、あるルーティンをプラスしてみたんです。

「〇〇ちゃん、今からママが来るまで遊ぶ時間なんだけど、これとこれ、どっちと遊びたい?」

 目の前に遊具を2つ置いてみました。すると、その子は1つを選択し、遊び始めました。もちろん、このやり方が正しいのかどうかは分かりません。そんな中での手探りの日々でした。

 2つの選択肢から始まって、3つ4つと増やしていき、増やしすぎて困ったような顔をされたら、また遊具を減らす。その繰り返しでした。

 ボーッとしたり遊びに集中しだすとこちらの話も聞けなくなるので、どうしても行動を切り替えなくてはいけない時だけ、人形を用意して話かけたりもしました。

 保護者にも、こういったことをしている、とお話ししていましたが、お母さん自身、初めての子供だったので、ちょっと奥手なだけ?皆こんな感じ?と思う程度で、まだ疑問を持ったりはしていませんでした。

 私たちも“発達障害かも”なんて言葉は絶対に言わないし、事実、本当に分からないので、それ以上は触れません。

 しかし、経験として感じたことは、発達障害かもしれないと感じた段階で、振る舞い方を変えてみたことは正しかったと思っています。

 結果として、最初は動けなかった子が、選択肢が増えていく中で、おもちゃを選べるようになり、最終的にお気に入りを見つけ、自らそれを探して遊べるようになったのですから。

発達障害と決めつけず、目を背けもせず

 保育園で働いていると、こうした子供たちとの出会いは必ずあります。その時、私たちはどう接していけばいいのか?

 発達障害と決めつけることなく、しかし、目を背けることもせず考える。保育園で時間をかけて話し合っていただきたい課題だと強く感じています。

小阪有花
記事一覧
子どもの心スペシャリスト
保育コンサルタント。アイドル時代の旧芸名は小阪由佳。「ミスマガジン2004」グランプリで芸能界デビュー。09年に引退後、保育園の先生を経て現職に。チャイルドカウンセラー、幼児食インストラクター、ベビーシッター、家族療法カウンセラーなどの資格を持つ。
XInstagram

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


見ず知らずの人に電車代を貸せる? 一生大切にしたい人が分かった話
 みなさんは人を信用しやすい方ですか? それとも疑い深い方ですか?  私はどちらかといえば後者で、人を簡単には信用で...
切り取られた街を見上げる 「もっと見たい」は人間の性かな
 ふと見上げたら、切り取られた街が隙間からのぞいていた。  これもチラリズムなのか。全体を見せられるよりも刺激され...
海外駐在妻の驚愕実態!閉鎖的な女のドロドロ、とかくママ友が面倒くさい
 海外駐在ママというと、どこか華やかで羨ましいイメージがありますよね。でも、中には、現地でのママ友との面倒くさい関係に疲...
パワハラ認定は回避を…叱り上手な人が実践するコツ5つ&間違った叱り方
 人を叱るというのは、意外と難しいものですよね。部下や後輩が失敗した時「ビシッと言ってやろう」と思いながらも、パワハラだ...
「俺を撮ってくれよ」な“たまたま”様、地を這うカメラマン冥利です
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
球根いつ仕込む?「秋」の今でしょ!植えっぱなしにオススメの花は7種類
 猫店長「さぶ」率いる我がお花屋は、神奈川の真ん中の片田舎で商売をさせていただいておりますが、今年も悩ましい秋でございま...
とことん落ちないと浮上できない 放っておいてあげる優しさ
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
「花屋前にいる」「どこ?どこにでもいる顔だから」実は傷つきLINE3選
 誰かの何気ない一言に深く心が傷ついた経験は誰しもあるはず。  相手の性格にもよりますが、ほとんどは相手に悪気がな...
お疲れ様はNG、お元気様はOKのナゼ…職場のうざいローカルルール5選
 社会一般ではない通じない「職場独特のローカルルール」が存在する会社って多いですよね。入社したての社員からすれば、ドン引...
青空に踏切の音が映える 季節は秋でも絶対に手放せないもの
 ここ数年ですっかり浸透したものに男性の日傘がある。 「男が日傘なんて」という謎の気負いも、死を覚悟する日差しには...
たまたまもゴロンと全開!幸せそうなにゃんたま様に昭和CMを思ふ
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
中年のババア、もとい「中年女性」になった私たちへ
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
「聞いてよ!」「で、結論は?」せっかち君のLINEはタイパ重視ですって
 世の中には、1秒でも時間を節約したい「超せっかちな人」が存在します。なぜ生き急いでいるのかはわかりませんが、とにかく少...
#1 芸能界に執着する35歳女の密かな楽しみ。裏アカで吐き出す腹黒い本音
「いらっしゃい、シゲさん今日は早いんだね」  阿佐ヶ谷駅の北口の飲み屋街・スターロードにひっそりたたずむ小さなスナ...
平日夜8時、話題のオーケー銀座店の惣菜コーナーに行き完全敗北した件
 10月17日、東京・銀座3丁目のマロニエゲート銀座2内に「オーケー銀座店」がオープンして話題になっていますね。銀座の一...
#3「バカにされてる?」元彼のイヤミがつらい。女が椎名林檎を歌う理由
【#1、#2のあらすじ】  阿佐ヶ谷のスナックに勤務している紘子は、役者を目指しながらもくすぶっている日々。そんな...