褒め言葉じゃない?「才能あるね」で人を傷つけてしまった話

おくげちゃん 漫画家・イラストレーター
更新日:2022-01-14 06:00
投稿日:2022-01-14 06:00
「すごいね、才能があるんだね」。誰かにこんな言葉をかけられた経験はあるでしょうか。気軽に言ってしまうこのセリフですが、実はものすごく気をつけて使う必要があると私は感じています。それは私が「才能」という言葉で、お姉さんを傷つけてしまったことがあるからです。さて、どろんぱではママがカウンターで常連さんの接客中——。

才能ではなく、開花させた努力に注目を

「漫画家なんです」と自己紹介すると「え! すごい!」と言ってもらえることが多々あります。そして、高い確率で続くのが「才能あるんだね」という言葉。もちろん言われると嬉しいし、私自身も自分には漫画の才能があると思いたいです。

 そして私も、自分ができないこと・苦手なことができたり、それでご飯を食べられている人はすごく尊敬します。きっと誰もがそう思っているし、そういう尊敬を込めて”才能”という言葉を使っているはず。私も同じです。

 だからある時、自分にはできないことを職業にしているお姉さんに「すごいね、才能あるんだなあ」と言ったことがありました。リスペクトの意味を込めた褒め言葉のつもりで。でもお姉さんは少し黙った後、「まあ……これでも頑張ったからねえ」とボソッと呟いたのです。この時、私はすごくびっくりしました。

「え? 褒めてるのになんで? テンション下がること??」

 当時はそう思っただけでしたが、今ならわかります。「才能がある」という言葉が「努力で得たものではない」という風に聞こえたんですよね。そしてきっとその当時、お姉さんはすごく頑張っていたんだと思います。

 私はその努力ではなく、もともと持っていた資質みたいな方を褒めた形になっていたわけです。漫画家になった今、自分が努力している最中にかけられるその言葉がどれほど苦しいか、本当によくわかります。

 神様から与えられた才能(ギフト)があったとしても、それを開花させるためには必ず努力が必要です。私はそれを分かっていませんでした。当時のお姉さんの顔を思い出すと、今でも胸が苦しくなります。これからはギフトの部分ではなく、開花させた努力の部分を褒められる人になりたいものです。

登場人物紹介

ママ
どろんぱのママ。若い頃はとびきり腕のいいホステスで、若い時に店を持った。しかしここまで来るには色んな苦労があったらしい。お客さんから起業の相談を受けることが多い。

ヘビ森さん
どろんぱの常連客。酒乱で横暴な面もあるが、ママのことをとても尊敬している。アパレル会社を運営している独身。今年は年男らしい。

おくげちゃん
記事一覧
漫画家・イラストレーター
酒呑みまんが家。ふしぎで妖しい話を描いています。就活が嫌すぎて3年間ドイツに逃亡するなど放浪癖あり。京都市出身、東京在住。水商売歴10年。XInstagramでは毎日漫画を更新中。実績などはこちら

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


お互いの「子どもの共通点」に愕然。平凡になったのは元彼と私、どっち?
 新川崎の大規模マンションに暮らす真央。「量産型主婦」を自覚しているが、かつての真央はバリバリの個性派女子だった。そこで...
言われたくない! ただのオジサンになった「元彼からの一言」に怒りが…
 新川崎の大規模マンションに暮らす真央。量産型主婦を自覚しているが、かつての真央はバリバリの個性派女子だった。20年前の...
「浜崎あゆみみたい」って褒め言葉? サブカル女からママ友への小さな抵抗
 かつて京浜工業地帯を支えた巨大な貨物列車ターミナルだった新川崎は、今や「品川から3駅に住まう」などというまやかしのよう...
「奢る代わりに…」急に見せた“男”にドン引き! 仲良かった友達が苦手になった瞬間【LINE編】
 仲良くしていた友達と、LINEがきっかけで疎遠になった経験はないでしょうか? 「こんな人だったの?」という違和感から、...
「センスが悪い」ってモラハラじゃないの? かつての「センスがいい人」はどこに…
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(64)。多忙な現役時代を経て、56歳...
これは盲点…!カラオケ苦手な人が乗り切る必勝法。カギは「地元」にあり
 気づけばもう2024年も残すところあと少し…。なんか今年早くないですか?? こうやって時間は過ぎていくのかと思うと、本...
総額いくらなの!? 美的の「スキンケア大充実セット版」は韓国コスメの現物も入ってお得感100点満点でしょ
 毎回、付録違いのVer.を発売している美的。12月号は「スキンケア大充実セット版」を購入してみました。  話題の...
40代、職場で地雷女に?「ソフト老害」流行語大賞候補入り、“10のこじらせ言動”に要注意
 職場に一人でも老害と思われる人がいると、雰囲気が悪くなってしまいますよね。2024年の「新語・流行語大賞」の候補には「...
「嫌われる話し方」5選。無意識にやらかしがちだけど、みーんなイライラしているかもよ?
「この人と話を聞くとなんかストレス溜まるんだよな」「会話していてなぜかイライラするの何で?」こんな風に、話していてモヤモ...
チャールズ・ブロンソンみたい! 草原の激シブ“たまたま”にキュン♡
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
やっべー、既読スルーしてしまった後のLINE3選。返信忘れて気まずさMAXからの挽回方法は?
 もはや日常生活に欠かせない連絡ツールになっているLINE。でも、時にはつい既読スルーしてしまい、大切な人との関係が気ま...
金運ガチで上げたい!「パンジーの切り花」が超絶オススメな理由&“最高のコラボ”の飾り方は?
 猫店長「さぶ」率いる我が愛すべきお花屋は、おかげさまでお客様が途切れることなく(花を買う以外の方が多すぎw)来店くださ...
超エリートな上垣皓太朗アナの使い方を間違えていない? 騒動で露呈したフジ若手社員のキャリア形成
 フジテレビの公式YouTube「めざましmedia」内で公開された動画が、SNSを発端に炎上状態になりました。その内容...
更年期、私はこれで対処しています①漢方薬服用歴15年超、「意味あるのか?」と医師に尋ねた
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まっ...
子どもの「ママ嫌い」発言にショック! 育て方を悔やむ前に隠された心理と対処法を
 子育て中のママが子どもに言われてショックなのが「ママ嫌い」という言葉です。子どもを思うが故に口うるさくなってしまうのは...
試す価値あり!プレ更年期&更年期の揺らぎを整える「リセットアロマ」術【調香師が丁寧に解説】
 女性の更年期は一般的に45~55歳くらいと言われていますが、何かと忙しい現代は更年期が早まる人も増えているそう。更年期...