二人きりの世界に閉じこめる悪魔のテク 美沙さんのケース#2

神田つばき 女と性 専門ライター
更新日:2020-01-11 07:08
投稿日:2019-04-21 06:00
 飲み会で帰宅が遅くなっただけで、口をきいてくれなくなった年下の彼氏。目さえ合わせてもらえない日が続いた、7日目の朝でした。

職場の人間関係からの“切り離し”

緊張から解放された脳が洗脳に浸食されて…

「これ冷めてるから温めてよ、と私が並べておいたシチューのお皿をキッチンに持ってきたんです。うれしくて……気がついたら、健斗の椅子の足元に正座して、泣きじゃくってました」

 シチューを食べながら健斗が放った言葉は、

「わかった? お前は自分から事態を変えることができないの。何ひとつ変えることができないの」

 許されたことがうれしい、何を言われてもいい――。嗚咽しながらうなずく美沙さんに、

「何でこんな不愉快なことになったか、俺が帰るまでに始末書を書いておいて。原因と対策を入れて」

 そう命令して、健斗はバイトに出て行きました。美沙さんは泣きぬれた顔のまま会社へ行き、上司に隠れて、オフィスのパソコンで“始末書”を書いたのです。

 そんなことをさせられても、美沙さんはうれしさでいっぱいでした。突然、緊張状態から解放された美沙さんの心は、ご褒美でも与えられたようにウキウキしていました。

 人間の脳は、人にほめられたり、目標を達成したりするとドーパミンを大量に放出します。“脳内麻薬”とも呼ばれるドーパミンは脳に快感を起こさせ、依存症を起こさせます。

 このときの美沙さんがまさにその状態。安堵感で無防備になり、健斗からの束縛や命令を吸いこむように受け入れてしまったのです。

外部との遮断、そして睡眠削減のはじまり

 二度と終電まで飲んだりしない、一次会だけで帰る、と美沙さんは書きましたが、始末書を読んだ健斗は露骨に不機嫌になりました。

「お前、いったい何しに会社行ってんの? バカな同僚と飲んで騒ぎたいから行ってるわけ? 飲み会なんて要らないよね?」

 困った美沙さんは思わず言い返しました。

「職場の飲み会ってだいじだよ。お酒の席のほうがスムーズに伝わることもあるし。ちがう部署の人とも理解が深まるし」

「はあ? 程度の低い職場だね。お前、その会社にどんどん汚染されていくわ」

「えっ、ごめん。健斗、怒らないで……」

 健斗の顔色が変わったのに気づき、美沙さんはあわてました。また口をきいてもらえなくなったらどうしよう、とおびえたのです。

「あのさ、理由もわからずあやまるのって俺に失礼じゃない?」

「あ……ごめんなさい、どうしたらいいかわからなくって……」

「飲み会で誰とどんな話したか、全部書けよ」

「ええっ、そんなのおぼえてないよ」

「理解が深まるだいじな話をしたんでしょ? お前、自分で言ったじゃない。だいじな話なら覚えてるはずじゃん?」

 責められて美沙さんはパソコンに向かいましたが、飲み会での会話を順序だてて思い出せるはずはありません。結局、夜明け前にパソコンに突っ伏して寝てしまいました。

神田つばき
記事一覧
女と性 専門ライター
離婚と子宮ガンをきっかけに“目がさめて”女性に生まれたことの愉しみを取り戻すべく、緊縛写真のモデルとライターに。私小説「ゲスママ」、イベント「東京女子エロ画祭」「親であること、毒になること」などを企画。最近は女犯罪者や緊縛表現者に関するZINEの制作・販売を開始。Xnoteblog

関連キーワード

ラブ 新着一覧


飲み会後に声が聞きたくなったの? かわいい猫系男子の脈ありLINE3選
 人懐っこい犬系男子に比べて、気持ちが読みづらい猫系男子。そんな男子に悪戦苦闘している女性も多いのではないでしょうか? ...
恋バナ調査隊 2023-06-25 06:00 ラブ
長すぎた春、「レスより心の距離がしんどい」と婚約破棄を目論む44歳男
「冷酷と激情のあいだvol.148〜女性編〜」では、婚約中の恋人・ユウジさん(44歳・仮名)とのセックスレスに悩み、この...
並木まき 2023-06-24 06:00 ラブ
婚約中の彼と気づけばセックスレス、結婚前から離婚ちらつく37歳の女
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2023-06-24 06:00 ラブ
女友達の裏切り、彼を奪われたら手遅れよ…要注意!“恋愛猛女”特徴5つ
 恋愛に悩んだら、まずは女友達に相談するという人は多いはず。アドバイスがもらえたり、何となく安心するものですよね。しかし...
恋バナ調査隊 2023-06-23 06:00 ラブ
「ラブ トランジット」に夢中! 元彼とヨリ戻せる人・失敗する人の違い
 元彼とヨリを戻したい……! なかなか出会いがない毎日を送っていると、ふっとそんな願いを抱いてしまう時もあります。けれど...
内藤みか 2023-08-03 16:04 ラブ
「あなして」よりリアルかもしれません…“レス夫婦”間の切実LINE3選
 仕事や家事、育児に忙しい現代人にとって、夫婦のセックスレスは大きな問題になっているようです。特に妻的にはしたいけど、夫...
恋バナ調査隊 2023-06-22 06:00 ラブ
パートナーと喧嘩しない方法は?言葉の受け取り方が原因かも
 仲が良いカップルでも喧嘩が多いとストレスが溜まりますよね。 ちゃんと意見を言い合えている証拠だし、喧嘩するほど仲が良い...
若林杏樹 2023-06-21 06:00 ラブ
年イチ女子会、夫の「娘が発熱→なるはや帰宅」にイラっとした私の言い分
 私には年に一回、楽しみにしているイベントがあります。  子供を夫に預けて、女友達3人とホテルステイする日です。 ...
豆木メイ 2023-06-20 06:00 ラブ
【6月後半にベストな香りは?】オスとココロに効くフェロモンジャッジ!
 素敵な女性はいい香りがする――。  そう感じるのは、肌から放たれるフェロモンの効果。フェロモンが高まると色気だけ...
太田奈月 2023-06-20 06:00 ラブ
実は伸びしろあり? マジでセンスが悪い彼氏を自分好みに変える方法
「それ、本気でセンスいいと思ってる?」と、言いたくなる気持ちはわかります。しかし、センスが悪い彼氏には自分のどこがセンス...
恋バナ調査隊 2023-06-20 06:00 ラブ
「離婚しなければ良かった」とならないために…“三行半計画”に必要なこと
 離婚大国といわれる日本では、3組に1組が離婚しているなんて説もあるくらい、多くの夫婦が別々の道を歩んでいます。でも離婚...
恋バナ調査隊 2023-06-19 06:00 ラブ
「え、あなた誰!?」顔にタテ線入った“彼のキャラ変”にドン引きした話
 好きな人と恋人同士になれたら、超ハッピー! 付き合えた安心感から徐々に素を出したり気を使わなくなったりして、交際前と異...
恋バナ調査隊 2023-06-19 06:00 ラブ
ドタキャンLINEくらった時こそ勝負!40代好感度爆上がりの神返信3選
 40代を超えると、なかなか男性とデートにこぎつけるのも難しくなってきますよね。さらにドタキャンでもされようものなら「ど...
恋バナ調査隊 2023-06-18 06:00 ラブ
年下男子への上手な接し方♡ 恋愛対象外にさせない年上のメリットとは?
 年下男子を好きになったときは、接し方に注意すべき。なぜなら、彼よりも年上であることが魅力にも難点にもなるからです。 ...
恋バナ調査隊 2023-06-18 06:00 ラブ
「義親とも家族になる自覚はあるのかな」50代男が抱く婚約者への疑心
「冷酷と激情のあいだvol.147〜女性編〜」では、交際1年で婚約をしたジュンイチさん(53歳・仮名)に対して、マザコン...
並木まき 2023-06-17 06:00 ラブ
「私は介護要員なの?」53歳バツ無し婚約者のマザコン疑惑、動揺する女
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2023-06-17 06:00 ラブ