「早く孫の顔が見たい」義父の言葉に戦慄
――続けてください。
「世間ではなに不自由ないセレブな家族に見られるでしょうが、時々、ふっと空恐ろしくなるんです。
実は昨日の夕食時、『早く孫の顔が見たい』と義父がつぶやいたんです。
――楽しみよね。できるなら男の子がいいわ。病院の跡取りにさせたいの……私はA太郎を二十歳の時に産んだのよ。
E美さんが嬉しそうにワインに口をつけました。
――僕は一人っ子だったから、男の子と女の子が欲しいな。
A太郎さんも笑顔でうなずいています。
私も笑みこそ浮かべましたが、同時に恐怖感が背筋を這いあがってきたんです。
もし子供が生まれたら
――もし、子供が生まれたら、私は自分の子供とセックスをするの? そして、その結婚相手とも交わるの?
それを思うと、言いようのない不安に駆られます。
それでも、愛するA太郎さんとの子供は欲しい……私は今、天国と地獄を行ったり来たりしています。
時々、E美さんに『お義母様が嫁いできた際も、新婦の儀式を経験したのですか?』と訊きたくなります……。でも、どうしても訊けなくて……何も知らずに、このまま洗脳されてしまうのが、一番幸せなのかもしれません」
しなやかな手指に隠された秘密
――洗脳ですか……。今はおつらいでしょうが、徐々に良い方向に変わっていくといいですね。
「そうですね。もう後戻りはしないと決めたので……。今回、誰にも言えなかった家族の秘密を、じっくり話せる機会をもらえて、心が楽になりました」
――そう言っていただけると、こちらも救われた気持ちになります。
R子さんは目じりに滲む涙をハンカチで押さえた。
品のいいフレンチネイルとしなやかな手指が印象的だ。家事を一切することのない手は、しかし、近親相姦の際には大いに淫らな行為を求められるのだろう。
筆者は少しだけ、息苦しくなった。
「また進展があったり、つらくなったら話を聞いてください。人間、ため込んではいけませんね。人に話すという行為が、どれだけ心を軽くするかがよく分かりましたので……」
R子さんがほほ笑み、席を立つ。
◇ ◇ ◇
今回の取材が、彼女にとってはセラピーになっていたとしたら、こんなに嬉しいことはない。近親相姦の件はもちろんだが、そう遠くない未来に彼女が子供を持つ日が来たら、彼女はどのような気持ちで我が子を抱くのだろう。
それを思うと、胸の奥が締めつけられる。
筆者はR子さんの幸せな未来を願うばかりだ。
(了)
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