#1 「したい側」がひとりで悩んで余計に傷つかないためにも

うかみ綾乃 小説家
更新日:2019-08-26 12:19
投稿日:2019-05-31 06:00

《したい側》の意見が取り上げられる現状

 ほんの十数年前まで、男性はギラギラしていて当たり前、女性は受け入れるのが当たり前、という風潮が強くありました。若者や男性がセックスをしたがらないのは異常で、女性が、しかも中年以降の女性がしたがるのは恥ずかしいこととされていました。

 いまセックスレスが問題視されているのは、ギラギラできない人が《したくない欲望》を貫けるようになり、《したい側》がそのことを、淋しく苦痛だと口にできるようになりはじめているということです。

 それでも、まだ現状では、《したい側》の意見が圧倒的に多く取り上げられています。

 セックスレスのカップルの数だけ、《したい側》も《したくない側》も等しく存在するはずが、たまに《したくない側》の気持ちが俎上に載せられても、「それをどう解消してセックスできるようにしていくか」との文脈で語られることが多いです。

 法的にも、《したい側》の申し出によって離婚が認められるケースは多々あるものの、逆の判例は(私の知る限りですが)いまのところありません。日本の法律では、セックスは夫婦関係を継続する上で重要なものであるとされており、《したい側》の求めを《したくない側》が拒めば、夫婦の義務を果たしていないことになります。

《したくない側》の視点で語ることも重要

 けれど、そもそも《したくない側》の人間は、そのことを主張して通せるとは思っていません。世間的な価値観に鑑みて、自分の気持ちが誰かに肯定されることはないと諦めています。

 気にする人は、パートナーよりも心療内科医に相談する事案だと思っています。

 気にしない人は、ピーマン嫌いの大人がいまさらピーマンを食べたいとは思わないように、セックスをしたいとは思っていません。

 加えて、これも一概には言えませんが、《したくない側》にはコミュケーションの苦手な自己完結型のタイプが多く見受けられます。セックスを断る際も相手の気持ちを労わる言い回しができず、「今日は疲れてる」程度のそっけない台詞しか伝えられません。

 だから《したい側》が余計に傷つき、悩むことになる。

 ──ほかに好きな人ができたのだろうか。

 自分に異性としての魅力を感じなくなったのだろうか。

 ひょっとしたら、この人にはセックスに関するトラウマなどがあり、そのことを自分には話してもらえないのだろうか──

 このように、《したい側》がひとりで悩み、必要以上に傷つかないためにも、《したくない側》の視点でセックレスを語ることも重要だと思います。

  ◇  ◇  ◇

 次回は、《したくない側》のほんの一例ではありますが、私自身の体験談を書かせていただきます。

 セックスレスによって生じた様々な弊害と、それなりに着地点を得るまでの過程を、読んでいただければ幸いです。

うかみ綾乃
記事一覧
小説家
2011年「窓ごしの欲情」(宝島社文庫)で日本官能文庫大賞新人賞受賞。’12年「蝮の舌」(悦文庫)で第二回団鬼六賞大賞受賞。コラムニスト、映画の原作&脚本家としても活躍中。近著に「蜜味の指」(幻冬舎アウトロー文庫)。2020年から原作映画『モンブランの女』(『モンブランを買う男』AubeBooks)が全国で公開中。
ブログ http://ukamiayano.blog.fc2.com/

関連キーワード

ラブ 新着一覧


「俺抜きで楽しく過ごすの?」“君のため”は愛情か支配か。号泣と怒りを繰り返す30歳男のワナ
 最初は誠実で気遣いにあふれていた彼が、気づけば行動を制限し、自由を奪っていく——。「愛情」と「支配」の境界線とは?
おがわん 2025-09-17 11:45 ラブ
恋愛でメンタル崩壊→「ゴムに穴開けた」って何考えてんの? 女たちの“ヤバいLINE”エピソード
 恋愛は、人の心や感情を大きく揺さぶります。恋愛がきっかけでメンタルのバランスが乱れてしまう人も…。  今回は、「...
恋バナ調査隊 2025-09-19 16:53 ラブ
彼女が推しに大金、許せる? 恋人の“理解できない”お金の使い方を調査!「男が奢って当たり前」にイラッ
 恋人がなににお金を使おうと自由。ですが、結婚を考えたとき、金銭感覚の不一致は大きな問題になるでしょう。
恋バナ調査隊 2025-09-16 08:00 ラブ
妻の「専業主夫になれ」にウンザリ。罵倒にメンタル崩壊寸前の47歳夫、家事は手抜きのくせに…とため息
「冷酷と激情のあいだvol.263〜女性編〜」では、15年ほど前に子育てのためにキャリアを捨てた紀江さん(仮名)の憤りを...
並木まき 2025-09-13 11:45 ラブ
「節約なんて楽しくない!」専業主婦になった元バリキャリ妻の大きな後悔。23年の結婚生活で失ったもの
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2025-09-13 11:45 ラブ
どうせ疑われるなら――友人3人の絆が崩壊。束縛女、浮気男、略奪女…本当に悪いのは誰?
 世の中、不倫の話題で持ちきりだ。2024年に実施された調査によると、既婚男性の約2人に1人、既婚女性の約3人に1人が婚...
蒼井凜花 2025-09-24 21:19 ラブ
「裏アカに盗撮写真が…」彼氏がストーカー化。重すぎる愛がこじれた恐怖体験談
 彼女のことが大好きな一途な彼氏って最高ですよね。ところが、ある日を境にストーカー化したという怖い体験談が寄せられました...
恋バナ調査隊 2025-09-12 08:00 ラブ
ブームの“学び直し”は「恋のリスキリング」の絶好チャンス? 講座での出会いで陥りがちな落とし穴
「学び直し」をする人が増えています。これまでならカルチャースクールに通う程度だった熟年層の学びは、大学院に入り直したり、...
内藤みか 2025-09-11 11:45 ラブ
「私はペット代わりじゃない!」“犬ファースト”男が求める伴侶の条件。28歳女性が別れを決意した瞬間
 ペットは家族同然、大切にする気持ちは素晴らしい。けれど、その愛情が恋人関係をも上回るとすれば…? 
おがわん 2025-09-10 11:45 ラブ
許せない! 既婚男性が狙う女性の特徴「自信がない子は落としやすい」要注意の危険サイン6つ
 既婚男性が不倫相手に選ぶ女性には、いくつか特徴があるようです。「なぜか既婚者にばかり好かれる」「今まさにアプローチされ...
恋バナ調査隊 2025-09-10 08:00 ラブ
恋愛対象外です! 男が避ける“NG女”6つの特徴「あの人、キモくない?」は即アウト
 一般的に、男性は女性よりストライクゾーンが広いといわれています。ですが、そんな男性にも“許せない言動”があるようです。...
恋バナ調査隊 2025-09-09 08:00 ラブ
再婚希望の51歳男「アプリの女はレベルが低い」美女と会えない理由を“離婚成立前だから”と考える能天気さ
「冷酷と激情のあいだvol.262〜女性編〜」では、結婚22年目にして夫婦ともに離婚を決断したものの、手続きの面倒さ故、...
並木まき 2025-09-06 11:45 ラブ
48歳妻が1年以上“仮面夫婦”でいるワケ。結婚22年目「もっと若い頃に離婚していれば」と後悔する夏
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2025-09-06 11:45 ラブ
「小遣い月5万じゃ足りません」玉の輿婚を遂げた32歳妻、“メルカリ”バイトで見つけた嬉しい誤算
 世の中、不倫の話題で持ちきりだ。2024年に実施された調査によると、既婚男性の約2人に1人、既婚女性の約3人に1人が婚...
蒼井凜花 2025-09-05 11:45 ラブ
40代、50代の「プチ同窓会」に潜む危険。昔の恋人に遭遇したらどうする?
 暑さが落ち着き、行動しやすい秋口になってくると、お誘いも増えてくるものです。  そんな中、プチ同窓会的な飲み会の...
内藤みか 2025-09-04 11:45 ラブ
行かなきゃよかった! 花火と一緒に浮気バレ…カップルたちの悲惨な夏の思い出4選
 カップルの大きなイベントの1つとして花火大会がありますが、必ずしも素敵な思い出になるとは限りませんよね。中にはこうして...
恋バナ調査隊 2025-09-04 08:00 ラブ