公共便所どうなる?波紋広がるジェンダーレストイレ問題、誰が我慢すべき

ミクニシオリ フリーライター
更新日:2023-06-29 06:00
投稿日:2023-06-29 06:00

「トイレ問題」の余波広がる

 結局、歌舞伎町タワーのジェンダーレストイレはトイレ内に仕切りが仮設置され、すべての性別の人とトイレ内で顔を合わせる仕組みは廃止されました。

 今回のジェンダーレストイレ設置の目的は「多様性を尊重しトイレを使いづらいと思う人がいなくなる」ためでしたが、誰もにも使いやすいはずのトイレは使いやすいものにはなりませんでした。

 そして、歌舞伎町タワーのジェンダーレストイレの失敗は、各所が取り組むトイレ改革にも波紋を呼んでいます。

 東京都内の公園にある区管轄の公共トイレでは、女性用トイレと多目的トイレの一括型の建設が進んでいましたが、反対意見が目立つように。渋谷区内の小学校に設置が検討されている地域開放ユニバーサルトイレにも様々な意見が寄せられています。

 人々がトイレに求める声の多くは「安心感」です。誰でも使える場所かつ、必要不可欠なものだからこそ、安心して使用できることが前提だと再認識されました。

誰が我慢するべきなのか

 しかし、「LGBTQの人たちに使いやすいトイレがない」課題が改善されたわけではありません。教育機関にユニバーサルトイレの設置が検討されていたのも、幼いうちから自身の性自認を抑えなくてもいいようにという配慮です。

 多くの人々の不安をなくすために「トイレはこれまでどおり男女別であるべき」という声があがっていますが、明確に男性用・女性用と分けられているからこそ、LGBTQを持つ人や、性自認の定まらない子どもたちにとって心の傷を作る場所になってしまう可能性があるのも、また事実です。

 歌舞伎町タワーのトイレは「全員に配慮しようとすると、全員にとって使いやすくないものになる」という多様性配慮でよく起こる課題に直面しましたが、これは日本社会全体でもよく起こることです。

 政治でも、介護や医療費を重視すれば「若者を軽視している」と叫ばれ、若者支援を手厚くすれば中高年からの支持が集まりません。全員に平等に配慮しようと思っても、グレーゾーンの人々が支援からあぶれてしまう可能性だってあるわけです。

 各地で進んでいたトイレ改革は、今後どのように展開するのでしょうか。今まで配慮されてこなかったLGBTQの人たちを優先するのか、多数であるストレートの人たちを優先するのか。

 どちらをも救う方法は現れるのでしょうか。

ミクニシオリ
記事一覧
フリーライター
フリーランスの取材ライター・コラムニスト。ファッション誌や週刊誌、WEBSITEメディアなどで幅広く活動。女性向けのインタビュー取材や、等身大なコラム執筆を積極的に行う。いくつになってもキュンとしたい、恋愛ドラマと恋バナ大好き人間。
XInstagram

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


動物&飼い主のほっこり癒し漫画/第54回「真夏のシンジツ」
 ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、突然「コクハク」に登場! 生きものたち、その生きものたちをこよな...
「売れ残り」って心が折れた…思春期の甥&姪からの切ないLINE3選
 甥や姪が可愛くて仕方ない人は多いでしょう。兄弟姉妹の子供って、特別ですよね。小さい時から見ている人も多く、中にはかなり...
「偽善者か?」歌舞伎町の野良猫に2年間、毎日ご飯をあげ続けた男性の話
「かわいくないんですよ~(笑)。『なんだよ』って文句しか言っていない。好き嫌いは多いし、忙しいときに限って、ご飯を食べて...
小汚いサンダルをやめた女性の成功話!メイクや髪形より「キレイな靴」
 みなさんは“人の足元”って気にして見るほうですか? 私は靴が好きなのもあって、よく見ているほうだと思います。ただし、自...
真夏を彩る花 2023.7.28(金)
 こうも暑いとゲンナリするけど、むしろ過酷な状況を楽しむかのように咲く。  逆境でがんばる花のたくましさに驚く。 ...
皆が皆、社交的ではないよね…懇親会が苦手な人が“極力疲れない”対処法
 会社員だと避けて通れないものの一つが「懇親会」。参加人数が多かったり、他部署と交流をしないといけなかったりと、「正直疲...
対応ミスると悲惨! お盆の義実家トラブル5つの地雷&回避術
 お盆も間近! 義実家への帰省が憂うつという奥様は、あなただけではありません。気を使っているつもりでも、義両親を怒らせて...
華やか! チャトラ軍団のウキウキ上機嫌“たまたま”が大集合
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
手芸初心者が挑戦!思い出の子供服をくるみボタンに 2023.7.27(木)
 子供の思い出の服を手もとに置いておきたいけど、かさばる物は増やしたくない。子育て中のママやパパには地味に悩ましい問題。...
マジで使える! 夏に強い切り花と長持ちさせる秘訣を“開運花屋”が解説
 今夏の暑さは「暑い」より「痛い」の方がしっくりくる感じがいたします。更年期ど真ん中のワタクシ、本当にシビれますわ。 ...
費用0円!「いま暇?」LINEに付き合ってくれる“神友”との暇つぶし3選
 暇で退屈な時に、暇つぶしに付き合ってくれそうな気の知れた友達に「いま暇?」とLINEを送ってしまうこと、ありますよね(...
美術館で「名画の習作」から教えられたこと 2023.7.26(水)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
昔は仲良かったのに…友達との溝ができる5つの理由と対処法
 学生時代から続いている友達とは気心が知れているものですが、だからといって永遠にいい関係が続くとは限りません。また、大人...
業務スーパーが有能すぎる! おすすめ食材5選&飽きないアレンジ方法
 プロ仕様の食材や調味料が大容量で買えると人気の「業務スーパー」。一度にたくさん買うのでお得だし、おいしい食材もたくさん...
4回の引越しで実感!家族で住みやすい土地にする3カ条、転勤族でも安心
 ステップファミリー6年目になる占い師ライターtumugiです。私は10代でデキ婚→子ども2人連れて離婚→シングルマザー...
夕暮れが忍び込む街 2023.7.24(月)
 日差しが落ち着いて、街が暖色に染まる時間。  自分が生まれた場所でもないのに、なぜだか懐かしい気持ちになる。 ...