初夏の白州
5月。ゴールデンウィークも終わり、観光客やアウトドアを楽しむ人々で少し賑わいを見せた白州も落ち着きを取り戻す。
初夏を思わせる気温の高い日もある。そして、畑に張られたビニールのトンネルの中には苗が植えられていた。
気温の高い日があるとはいえ、夜になれば気温は1桁になり、日によって0度近くまで落ちることもある。
昼夜の寒暖差はすいか作りに重要な要素だが、今年は土の温度がなかなか上がってこない。
夕食後、すいかばかの日課
「今夜あたりは霜が降りるかもしれないなぁ」
寿風土(ことぶきふうど)ファームを営むすいかばかこと小林栄一さん(57)の自宅。
夕飯を取ると、奥さんはその日の作業記録を日誌に克明に記し、そして、すいかばかは昨年の日誌と付き合わせる。
畑と苗の相性を吟味する
どの畑のどの畝(うね)にどの品種の苗を植えるか――。
収穫時期が少しずつずれるように考えながらノートに計画を書き込んでいく。
時折り頭をかきながら鉛筆を走らせては消しゴムをかける。その合間にふと頭を上げると、外の方に目をやり、先の言葉が出てくるのだ。
月明かりの夜。青白く光るビニールハウス。静謐な冷たい空気。かすかに聞こえる釜無川の音。幻想的ともいえる青白く光るビニールハウスの海を、一筋のライトがゆらゆらと揺れている。
トンネルの中の苗の状態を確かめながら、昼間は風の通りをよくするため上げていたトンネルの端を下ろしていく。天気予報などによっては少しでも気になれば、真夜中でも畑を見に行く。
すいかの季節が終わるまで気が休まることは無い。
ロマンチストな男
「月の明るい夜の畑は、綺麗なんですよ」
防寒着を着込んでヘッドランプを頭に乗せて、月夜に輝きうねる海のような畑を振り返る。
いつもより少し低いトーンの語り口は、昼間の顔とは違って見える。そもそもロマンチストでなければ、すいかに夢を追いかけるばかは生まれないだろう。
そよ風を待つばかり
これからすいかは蔦(つた)を伸ばしていく。実を付ける体力を養わせるため、苦労して張ったビニールのトンネルを取り外す。
そのあとは、そよ風が吹いてくれるのを待つばかりだ。
「寿風土ファーム」
address:山梨県北杜市白州町台ヶ原615
営10時~17時
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