寿恵子は妊娠7カ月、十徳長屋の面々の優しさに藤丸も視聴者も胸がジーン

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2023-07-19 15:25
投稿日:2023-07-19 15:25

NHK朝ドラ「らんまん」~第16週「コオロギラン」#78

「トガクシソウ」の一件で、新種の発表をめぐる生き馬の目を抜くような学者の世界に嫌気がさした藤丸(前原瑞樹)は、万太郎(神木隆之介)に「これ以上、大学にいたら窒息する。息の仕方もわからなくなりそうで。万さん、助けてよ」と訴えた。

 藤丸のつらさを知らなかったと謝る万太郎に、「わかんなくて当たり前だよ。万さん運がいいもん。全部うまくいくもんね。運が悪い人間のことなんてわかんないよ」と藤丸。

「運がいいとか悪いとかは違う。ワシは藤丸次郎の話をしとるんじゃ。草花と同じ、優しい人楽しい人いろいろおるけど一人として同じ人はおらん。藤丸は人の痛みがようわかる。そのぶん、競い合うのが性に合わん。それが藤丸次郎の特性じゃ」「この世にただひとつの藤丸次郎の特性に合うたやり方を探したらええ」と助言。

 寿恵子は妊娠7カ月に。田邊教授(要潤)に休学を申し出た藤丸は、万太郎の手伝いを始めていた。そして、ヤマザクラが載った「日本植物志図譜 第二集」が完成した。

【本日のツボ】

「弱さもよう知ったら強みになる」(万太郎の台詞)

 ※※以下、ネタバレあります※※

 万太郎から名言が飛び出したと思ったら、「だとしたら藤丸くん、逃げるんじゃなくて探しに行くんだね。逃げるのと探しに行くのって、離れるのは同じだけど大違いじゃない」とおゆう(山谷花純)の名アシスト。

 そこには福治(池田鉄洋)も、丈之助(山脇辰哉)もいて。十徳長屋の人たちの優しさに藤丸は元気づけられました。

 帰り際、「こういうのはどう? 俺に万さんを観察させてくれない?」と提案。心配なのは、植物学教室の大きな3羽のうさぎちゃん「とうふ」「雪丸」「おもち」たちのことです。藤丸の代わりに、誰かちゃんとお世話をしているのでしょうか。

【おまけのツボ】

「また槙野か……」(田邊教授の台詞)

 藤丸が田邊教授に休学を申し入れた際、何をするのかと尋ねられ、「槙野さんの植物採集のお手伝いを」と言った藤丸に対して、「また槙野か」と苦々しい顔の田邊教授。

 郵便物を持ってきた槙野に対しても、「(『植物図誌』)読んだぞ。見事な出来だった。今、この日本でここまで描けるのはお前しかいないだろう。いや、世界でも同じ人間がいるかどうか」「お前はこの図譜で植物学会をこじ開け、自ら植物学会に名を挙げた。今、この学会でお前の名を知らない者はいない」と矢継ぎ早にまくしたてた。

 田邊の言葉に小さく「ありがとうございます」としか言えない万太郎に、「それほど私に頼るのは嫌だったか? トガクシソウはさぞ愉快だったろう」「言っとくがトガクシソウなどどうでもいい。私はそんなことでは傷つかない」と。

 さらに「残念だな、槙野万太郎。この先は望み通り、お前を一学者と認めてやろう」と。

モーツァルトとサリエリか

 藤丸が言うところの、いつも楽しそうで、周りにも愛されて、「運が良くてすべてうまくいく」万太郎に対して、完璧主義で人を遠ざけてしまい、「うまくいかない」田邊教授。

 この関係、モーツァルトとサリエリのようにも見えます。圧倒的な才能のモーツァルトに対して、その才能を誰よりも理解するがゆえに嫉妬し、才能を潰そうとするサリエリ。嫉妬に絡めとられた田邊の「お前を一学者と認めてやろう」の言葉にゾワリ。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


“おぼこ娘2人”の初々しい恋バナ! つよぽん演じる羽鳥は「まさに笑う鬼」
 スズ子(趣里)と羽鳥善一(草彅剛)の厳しいレッスンは相変わらず続いている。しかし、羽鳥はスズ子の歌に相変わらず満足しな...
桧山珠美 2023-11-09 15:46 エンタメ
BLACKPINKの再契約なるか?「7年目のジンクス」結末に4つのシナリオ
 世界的なK‐POPブームの昨今。「コクハク」読者の中にも、K-POPにハマっている方も多いのではないでしょうか? ...
2023-11-09 06:00 エンタメ
「マイホームヒーロー」を嗜む!なにわ男子高橋“俳優武者修業”に高好感度
 すっかり忘れていました。佐々木蔵之介(55)の存在を。最後の独身大物俳優などと言われ、過去には、小野真弓や丸山桂里奈な...
大和玲子(蒼井優)の戒名に「礼」と「優」、位牌の細部にまで抜かりなし
 スズ子(趣里)たちは、大和礼子(蒼井優)が出産後に病院で亡くなったと知らされる。スズ子はお別れの会で、大和が梅丸少女歌...
桧山珠美 2023-11-03 14:30 エンタメ
スズ子のナレ出世、股野のナレ求婚…感動のシーンを描いて欲しかった!
 昭和12年、スズ子(趣里)が香川から戻ってきて3年。梅丸少女歌劇団は、秋山(伊原六花)のタップダンスとスズ子の歌を二本...
桧山珠美 2023-11-01 15:37 エンタメ
SMILE-UP.(旧ジャニ)俳優部の演技&将来性、飛躍の片鱗見せたの誰?
 嵐の二宮和也(40)がSMILE-UP.(旧ジャニーズ)からの独立を発表しました。  中丸雄一、山田涼介、菊池風...
スズ子出生の秘密に迫る香川編、ナニワの至宝&大地真央のヅカ同期が登場
 スズ子(趣里)と六郎(黒崎煌代)のふたりは、梅吉(柳葉敏郎)とツヤ(水川あさみ)の故郷である香川を訪れる。スズ子が小学...
桧山珠美 2023-10-28 06:00 エンタメ
平手友梨奈に平野紫耀ら事務所移籍組が躍動!俳優と歌手の二刀流はあるか
 平手友梨奈(22)が出演するドラマ「うちの弁護士は手がかかる」(フジテレビ系)が好評を博している。  平均世帯視...
こじらぶ 2023-10-28 06:00 エンタメ
魂のラインダンスに涙、涙…入浴シーンの「四季の宴」趣里、歌うまい!
 山寺でのストライキは団員たちの要求が全面的に受け入れられ、幕を閉じる。  山を降り、ようやくいつも通りの練習を始...
桧山珠美 2023-10-25 16:30 エンタメ
梅丸少女歌劇団による山寺でのダンスシーンはニュースになった“アレ”
 山寺でのストライキが続く中で、大和礼子(蒼井優)はスズ子(趣里)に自分の過去の話をする。両親に反対されて、縁を切ってま...
桧山珠美 2023-10-24 17:03 エンタメ
道枝駿佑“マイハル”の無表情は拙い?いいえ、ラストの笑顔のためだった!
 秋の新ドラマがスタートしています。いくつかチェックしましたが、ミステリーや考察ドラマって疲れて帰ってきた頭と体にはなん...
色恋に敏感なリリー、昭和8年が舞台の朝ドラに「百合」の描写は必要?
 大和礼子(蒼井優)はストライキをするしかないと言い出す。一方、橘アオイ(翼和希)は、お客様が大切だと言い、また、礼子が...
桧山珠美 2023-10-20 16:20 エンタメ
直撃!俳優・藤原大祐の恋愛観「告白するなら年上、1回目のデートで」
 10月20日から全国公開となる新感覚ホラー映画「リゾートバイト」。小さな島の民宿でアルバイトする大学生たちに様々な怪奇...
2023-10-20 06:00 エンタメ
【写真特集】藤原大祐を直撃! ここでしか見られない本編&未公開カット含む全29枚!!
                                        ...
2023-10-20 06:00 エンタメ
労働争議で板挟み…“スズ子の恩人”林部長役・橋本じゅんの意外な一面
 世界恐慌の波が押し寄せ、USKの賃金削減と人員削減が告げられる。一部の楽団員と新人の劇団員は解雇されてしまった。 ...
桧山珠美 2023-10-19 15:40 エンタメ
大和礼子(蒼井優)さまの箴言…誰にも負けないスズ子の個性とは?
 昭和8年。デビューから6年が経ち、スズ子(趣里)は脇役ながら劇団の中心メンバーとして活躍し、新人の教育係にもなっていた...
桧山珠美 2023-10-16 14:30 エンタメ