更新日:2023-09-06 12:03
投稿日:2023-08-25 06:00
南国の美青年とと手を繋ぎながら泳ぎ進み
――素晴らしい光景でしょうね。続けてください。
「本当に美しくて、熱帯魚と戯れながら泳ぐ自分も人魚になったようでした。『青の洞窟』は、奥行きが60メートル、海面から天井までの高さは10メートルほど。石灰岩の白い海底が日光を反射して、神秘的な青を作り出しているんです。
私がなおも誘導されながら泳いでいくと、彼に手を引かれました。顔を上げて振り向くと、
――ミクさん、青の洞窟は一度奥まで入ってください。入り口を振り返ることで、幻想的なブルーを堪能できますから。
――あ、ありがとうございます。では中まで入りますね。
彼と手を繋ぎながら奥まで泳ぎ進み、同時に入口方向を振り返ると、
(キレイ……これほど神秘的なブルーだなんて……)
感動に体が震えました。カラフルな熱帯魚が泳ぐ海とは全く別の神々しい光景が待っていたんです。
幻想的な光景に不倫相手の顔も忘れて…
南国の美青年と一緒に幻想的な光景を目にする現実――そのころには部長の顔もかき消されていました。
2人で手を繋ぎながら立ち泳ぎで見入っていると、彼が腕を引き、洞窟内の岩場に手をつかせてくれたんです。
――お疲れ様です。一度、ここで休憩しましょうか。
シュノーケルマスクを外した彼が、にっこり笑いました。
――ありがとうございます。あまりにも感動的で……来てよかったです。
私もシュノーケルマスクを外して、笑みを返しました。洞窟内には他の観光客もいますが、私たちのいる岩場に目を向ける者はいません。
――ミクさんは、おひとりで旅行ですか……?
唐突に彼が聞いてきました。
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