介護施設と病院の違いは? 介護は病院に任せられないんです

東城ゆず ライター・エディター
更新日:2019-07-17 06:50
投稿日:2019-07-17 06:00
 介護士を始めるまで、「虐待をしてしまうくらないなら、病院に入院してもらえばいいのに」と思っていたことがあります。素人から見れば、「認知症も病気だから、入院させちゃえばいいのに」と思うことあると思うんです。しかし、“認知症”という診断だけで、病院にお世話になり続けることは不可能なのです。そもそも「介護施設と病院の違いって何?」とお考えの方も多いと思います。今回は“介護施設と病院の違い”を紹介します。

介護をするなら介護施設じゃなくて病院に任せたい

 介護士からすれば「病院に認知症という理由だけで、入院させるのは無理」というのは当たり前に知られている知識です。突然、親が認知症という診断を受けた家族は、どうでしょう。これまで介護に携わったことがない人であれば、まず最初に「病院の力を借りたい」と考えるのは自然な流れです。

 いざ病院に行って事情を話すと「これ以上、病院で手の施しようがない」と言われてしまいます。認知症が原因で、排泄の介助が必要だったり人の目が届かないところで生活できない本人を前に落胆するのではないでしょうか。「こんなに大変なのに、入院という手段がないのか」と、げんなりしてしまうと思います。なぜ認知症という病名があるのにも関わらず、病院は受け入れてくれないのでしょうか。

介護施設と病院の違いとは

 結論から述べると、介護を病院では引き受けることはありません。認知症という診断がついただけで、病院に入院することはできないのです。介護施設と病院の違いについて、元介護士の筆者がシェアしましょう。

認知症の患者もいる? 病院の介護について

 看護師の話や、実際に病院に出向けば当たり前のように認知症の患者はいます。しかし、認知症が原因で入院しているわけではありません。精神病棟であれば、認知症のために生じた問題行動や感情起伏の対処に薬物を用いている可能性があり、これの調整をつけるために入院していることはありますが、容態が落ち着けば退院させられます。病院とは“具合が悪い人は看るところ”なのです。たまたま他の病気が悪化して、その人が認知症を併発していることは少なくありません。

 しかし、認知症を主訴(主要な病気)として生涯、病院に入院させることはできません。そのあとは家族が本人の看病をしたり、介護施設に入所することが考えられます。「自宅には戻れないけど、病院に入院しているほどでもない」といった場合は、“介護老人保健施設”に入所になります。

 家族は「認知症も病気。病院が見てくれるほど心強いことはない」と思うに違いありません。しかし、病院は医療を優先するためなら、身体拘束することも認められます。点滴を抜去してしまう可能性があるのなら、それを医療的に阻止するために腕を拘束します。高齢者であれば、こうした拘束で身体がより不自由になってしまうこともあるのです。

介護施設とは介護者の日常を送る場所である

 介護施設は医療施設ではありません。そのため、拘束は原則、認められていません。本人の暮らしや性格を尊重しつつ、日常生活のサポートをする場所です。多くの家族が介護に疲れて求めている場所は、病院ではなく介護施設だということが理解できたかと思います。

 介護施設の多くは医療施設とも連携をとっており、訪問診療を行っていたりします。急変時や特変時には、提携医療機関にかかることができます。介護士は、いわば介護のプロ。精神疾患で、妄想や幻覚がみられる時など日常の細かなことを経過観察して、医療に繋げます。

 日常生活をサポートしつつ、的確に必要な医療がもたらされるように常日頃から配慮を欠かしません。そのため日頃から変化を記録したり、病気の進行によって起きた異変についても、よりいい方向に向かうよう認知症の人に寄り添うのです。

あらかじめ介護施設に目星をつけておくこと

 突然、介護を要する事態になった時に、多くの人は動揺します。今までの人生では、病気を治すのにも、多くは病院に入院したことでしょう。しかし、認知症となると病院に長くいることもできないのです。

 両親が高齢になったり、自分の配偶者に介護の予兆があった場合は、なるべく早めに介護施設を複数見つけておくことをオススメします。もしもの時に病状や経済的な事情から、適切だと思われる介護施設を選べるようにしておくと安心だと思いませんか。

東城ゆず
記事一覧
ライター・エディター
1994年生まれ。11歳の頃からブログを運営。ライターやエディターとして、女性誌メディアや地元新聞のコラム枠まで幅広く活躍中。恋愛やママ友問題、介護士であった経験からリアルな介護問題まで幅広い知見がある。年子兄弟を連れ離婚の経験があり、現在は再婚に至る。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


ミルクに難色、昭和育児の「母乳信仰」って何なん? 押しつけがましい上から目線LINEにイラッ
 初めての育児や、何人もの育児をしているお母さんは、とりわけ、毎日大変! そんなお母さんを追い詰める身内、どうにかならな...
セレブ妻が赤羽のサイゼリヤに落ちるまで 上流階級との「品格の差」に絶望
 悠々自適なセレブ生活を送っている医師の妻・大宮由香。ある日、お嬢様学校に通う娘のクラスメイト・愛舞(らぶ)とその母親・...
勝ち組ママ友が放った屈辱的な一言。私を「一般人」と一緒にしないで!
 四ツ谷・番町エリアに暮らす医師の妻である大宮由香は、娘・葵を名門お嬢様学校に通わせている。小学校に入った葵から友人がで...
嘘でしょ…娘の友達が「キラキラネーム」? 玉の輿セレブの大きな誤算
 都会の中心でありながらも、ハイグレードな住宅街として知られる四ツ谷・番町エリア。  大宮由香は、小学校に入ったば...
スメハラ? 90年代の出版社は“異臭”がプ~ン…男と香水と時代の変化
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(64)。多忙な現役時代を経て、56歳...
移住の思わぬ落とし穴。収入激減で大後悔!こんなはずじゃなかった…
 コロナ禍でリモートワークに対応する会社が多くなり、地方への移住を一つの選択肢として捉える人は増えました。でも、あまり調...
直木賞作家・荻原浩氏インタビュー 世にはびこる誹謗中傷「耳の痛い意見が人を成長させるとは言い切れない」
 パリ五輪でも選手や審判などに対する誹謗中傷は深刻な問題となっている。誹謗中傷は、他人への悪口(誹謗)と根拠のない出鱈目...
まるで最高級の餡子玉! 黒猫のプリプリ“たまたま”がキュートすぎる
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
江角マキコ芸能界引退から7年、初めてデビュー作を語る(後編)父を亡くした喪失感を「ゆみ子」に重ね合わせた
 芸能界から引退している江角マキコさんが、7年ぶりとなるインタビュー取材に応じた。目的は、石川県輪島市を支援するために特...
2024-08-07 07:00 ライフスタイル
江角マキコ芸能界引退から7年、初めてデビュー作を語る(前編)伴走してくれた能登の人たちに「感謝と恩返し」を
 芸能界から引退している江角マキコさんが、7年ぶりとなるインタビュー取材に応じた。目的は、石川県輪島市を支援するために特...
2024-08-07 07:00 ライフスタイル
「夏の庭の花・植物の水やり問題」災害級の暑さで1週間留守に…対策は?
「災害級の暑さ」なるフレーズ、耳にする日が続いていますが、気付けば夏休みシーズン到来!  我が花屋は神奈川の片田舎の温...
深夜3時にメッセ連続投下!グループ脱退したい…常識知らず&KYなママ友のお騒がせLINE10連発
 保育園や幼稚園の保護者同士でやりとりするママ友LINE。同じクラスのママに誘われて断るわけにもいかず、半ば強制的にグル...
ふるさと納税について夫婦で考えたら、意見が食い違って爆笑の大喧嘩に…「特別vs日常」何が正解?
 選んだ自治体に寄付をしてお礼をもらうことができるだけでなく、一部の税金が還付または控除される、“ふるさと納税”。  ...
2024-08-07 06:00 ライフスタイル
「子どもの夏休み暇対策」どうしてる? 頑張るママのお助けアイデア7選
 子どもが小学生になると、夏休みの過ごし方で悩む大人がたくさんいます。近年では外遊びも猛暑による熱中症の心配があるので、...
【調香師解説】夏バテ解消アロマでフェロモンも復活!睡眠、胃腸、イライラを鎮める香りは?
 毎日暑いですね。フェロモンは最低限の生命力が維持されたうえで、余力から生まれてくるものです。うだるような暑さが続くと心...