性悪&パンストフェチ夫婦が許せん!既婚者合コンが復讐の場と化した#5

蒼井凜花 官能作家・コラムニスト
更新日:2023-12-08 14:26
投稿日:2023-12-01 06:00

いかにも「訳あり」な雰囲気の病院

――続けてください。

「中絶の当日は、朝10時に都内のレディースクリニック前で待ち合わせでした。レディースクリニックと言っても、ユリさんが指定してきたのは風俗街の雑居ビルにある病院です。細い裏通りに面していて、灰色がかった看板は、いかにも『訳あり』的な匂いが漂ってきて……。

 正直、こんな古ぼけた病院で大丈夫? と思ったのですが、ユリさんは約束の時間少し前に現れました。

――沙雪さん、わざわざありがとう。

 私の顔を見るなり、ユリさんはやつれた笑みを向けてきました。

――とんでもない。無事手術が終わるよう祈っているから。ところで、この病院は……?

 私がすすけた色の雑居ビルを見上げると、ユリさんは憂鬱な顔で打ち明けました。

いわゆる「闇病院」での中絶を決意

――実は私がネットで探したクリニックは『中絶には、同意書にパートナーの署名・捺印』が必要で……。


 涼介さんに言ったら『万が一バレたことを考えて、俺は同意書に署名捺印はしない。その分、多めに払うから』と100万円を渡されて……。知人の元風俗嬢に教えてもらったクリニックなの。

 驚くことに、ユリさんの紹介された病院は、風俗嬢や訳ありの患者も通う、いわゆる『闇病院』だったんです。しかも、100万円もだなんて、手切れ金? とも思いましたね。でも、金額には触れず、

――本当にこの病院で大丈夫なの?

 私は聞き返しました。

――平気よ。元風俗嬢の友達も通ってたクリニックだから、腕は確かだし、中絶手術もそうとうな数をこなしているみたい。何よりも同意書不要なことがありがたいわ。

――そう、じゃあ一緒に行きましょうか。

彼女はひとりでビルの中へ

 私が雑居ビルに入ろうとすると、

――ごめんなさい。付き添ってもらう約束だったけど……やっぱりひとりで行く。

――えっ?

――手術は1時間もかからないそうだけど、その後、ベッドで2時間ほど休まなきゃいけないそうなの。

――ええ、それを承知でパートを休んだのよ。

――手術前に来てくれただけでも心強いわ。でも……ここまでで大丈夫。恩に着るわ。

 そう言って、ひとりでビルの中へと消えていったんです」

蒼井凜花
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官能作家・コラムニスト
CA、モデル、六本木のクラブママの経歴を持つ異色の官能作家。近著に「CA、モデル、六本木の高級クラブママを経た女流官能作家が教える、いつまでも魅力ある女性の秘密」(WAVE出版)、「女唇の伝言」(講談社文庫)。
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