歌わない福来スズ子はただの人…からの脱却!らしさ炸裂のパクった楽団名

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2023-12-01 14:00
投稿日:2023-12-01 14:00

NHK朝ドラ「ブギウギ」~第9週「カカシみたいなワテ」#45

 楽団が解散して数週間、スズ子(趣里)は何をするでもなく日がな一日を過ごしていた。そんな時、スズ子は大阪に戻ってこないかと誘われる。

 しかし、大阪でもかつてのように自由に歌うことはできないと聞いていたスズ子は、これからどうしていいのか悩んでしまう。

 スズ子は羽鳥善一(草彅剛)に相談するのだが、やはりなかなか答えが出ない。そんなスズ子に、善一は茨田りつ子(菊地凛子)のコンサートのチケットを差し出す。

【本日のツボ】

福来スズ子とその楽団

 ※※以下、ネタバレあります※※

「飛ばねえ豚はただの豚だ」というのは「紅の豚」の名台詞ですが、「歌わない福来スズ子はただの人」、魅力も半減です。悩むスズ子が駆け込むのはやっぱり羽鳥のところでした。

「帰る家ももうあれへんし、こっちに来て2年も経ってしもてんのに、やっぱり、昔のようにいかへんと思うんです」と訴えるスズ子に、「でも、君は歌うことしかできないだろ?」と羽鳥。

「東京か大阪かなんて関係ない。君が楽しめる場所で歌えばいいさ」とアドバイスします。

 残念ながら羽鳥の言葉は今のスズ子には刺さらなかったようで、「みんながみんな先生みたいに楽しめませんよ」と。「そうかなあ、君も一緒だと思ってたけど」と羽鳥。どんな時も変わらない羽鳥は今のスズ子には眩し過ぎたのかもしれません。

 帰り際、羽鳥の妻・麻里(市川実和子)に、「やっぱり先生凄いわ。こんな時でも前向いて楽しんではる」とスズ子。「そう見えるだけよ。楽団が傾いてから向こう。食事も喉を通らないで悩んでたわ。今だってそう。ああやって仕事してないと落ち着かないのよ」と麻里。羽鳥もまた悩んでいるということに気づかされたスズ子でした。

 そんなスズ子に羽鳥は「仕事が立て込んで行けなくなったから代わりに行って楽しんできてよ」と「茨田りつ子とその楽団」のコンサートのチケットを渡します。

 りつ子の「別れのブルース」を聴いたスズ子。楽屋に行ってその感動を伝えますが、

「誰に何を言われようとも舞台にかじりついてでも自分の歌を歌うのよ」

「ああイライラする。あんた歌いたいんじゃないの。人の歌に感動していないで、歌いなさい。こんなご時世、いつ歌えなくなるかわからないのよ」

 と発破をかけられます。

スズ子らしいド直球のネーミング

“自分の歌”を歌うと決意したスズ子。ラッパの一井(陰山泰)宅を訪ねて、「ワテはワテの楽団で歌うことにしました。一井さん、ワテの楽団に入ってください」と頼みに行きます。

 一井も快諾し、「福来スズ子とその楽団」がスタートします。

 楽団名が、まんま「茨田りつ子とその楽団」のパクリで笑ってしまいました。もう少し、ひとひねりすればよさそうなものですが、そうはしないところがいかにもスズ子らしいですね。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


東海林(津田健次郎)はエラいのかポンコツなのか? ともあれ“ツダケン”の魅力的な演技に惚れ惚れ
 高知新報が夕刊発行の申請をし、のぶ(今田美桜)は編集長を任された東海林(津田健次郎)と先輩記者の岩清水(倉悠貴)と共に...
桧山珠美 2025-07-01 18:19 エンタメ
【再募集】2025春ドラマどうだった?面白かった&ガッカリを教えて!『あんぱん』『最後から二番目の恋』『対岸の家事』etc
 引き続き、2025年春ドラマを対象としたアンケートを実施します。続々と最終回を迎えた4月よりスタートの春ドラマ、あなた...
「あんぱん」竹野内豊らが退場→津田健次郎と倉悠貴が新たに補充。イケメン好きにも優しい朝ドラに感謝したい
 闇市で渡された東海林(津田健次郎)の名刺を頼りに、高知新報にやってきたのぶ(今田美桜)。しかし、東海林は全く記憶にない...
桧山珠美 2025-07-01 17:39 エンタメ
さや香、バッテリィズ…意外と多い「不仲コンビ」にグッとくる理由。仲良し芸人だけが正解なのか?
 千鳥MC『相席食堂』(ABC/テレビ朝日系)の6月3日放送回にて、「カウンセリング相席」と称した、お笑いコンビ・流れ星...
『あんぱん』嵩(北村匠海)に“たっすいがー”の面影はない。のぶへの言葉が胸を打つ「正しい戦争なんか、あるわけがないんだ」
 空襲の焼け野原でひとり佇むのぶ(今田美桜)の前に、嵩(北村匠海)が現れて再会を果たす。釜次(吉田鋼太郎)から事情を聞い...
桧山珠美 2025-07-01 17:39 エンタメ
国分太一活動休止で消えた「TOKIO再集結」の光…木村拓哉に見せていた別の顔
 6月20日、複数のコンプライアンス違反があったとして、TOKIOの国分太一(50)が無期限の芸能活動休止を表明した。出...
こじらぶ 2025-06-25 07:50 エンタメ
大泉洋こそ“真のモテ男”じゃないか?「かくかくしかじか」の圧倒的な存在感に新たな一面を見た
  先日、いろんな意味で話題の映画「かくかくしかじか」を鑑賞してまいりました。「東京タラレバ娘」や「海月姫」などのヒット...
「あんぱん」のぶ、“落とし前”の付け方はそれでいいのか。次郎役の中島歩はあまりにも素晴らしかった
 終戦から5か月が経ち、国民学校ではGHQの指導のもと軍国主義教育からの転換が図られる。のぶ(今田美桜)は病気が一向に回...
桧山珠美 2025-07-01 17:39 エンタメ
『バチェラー6』第8話(最終話)を正直レビュー! ラスト予想、当たった人いるの? 制作サイドにまんまと騙されました
『バチェラー・ジャパン』シーズン6を、シリーズの大ファンである筆者が、正直にレビュー。今回は第8話。本編最終回です。小田...
中村未来 2025-07-25 15:23 エンタメ
曽田陵介、FANTASTICS佐藤大樹と“縁”に驚き「青春時代の人が隣にいた!」甘酸っぱい中学生の頃
 2019年に俳優デビューをきっかけにドラマ、映画、舞台とさまざまな作品に出演。そして先ごろ放送を終了した『いつか、ヒー...
望月ふみ 2025-06-23 07:00 エンタメ
【募集】2025春ドラマの感想は? 面白かった&ガッカリを教えて!『対岸の家事』『最後から二番目の恋』etc
 コクハクでは2025年春ドラマを対象としたアンケートを実施します。4月よりスタートした春ドラマ、「面白かった」作品や「...
72歳、ザ・ぼんち里見まさとに“若い女子”が熱狂。イケジジブームが来るか? 老害にならずモテる大人の魅力
 去る5月17日フジテレビ系で放送された結成16年以上の漫才師による大会『THE SECOND~漫才トーナメント~・グラ...
「あんぱん」ここがヘンだよ、戦争パート。のぶが夫に駆け寄らないのはなぜだ?
 次郎(中島歩)からの便りに顔を輝かせるのぶ(今田美桜)だったが、それは海軍病院からだった。のぶが不安な気持ちで病室に入...
桧山珠美 2025-06-21 12:55 エンタメ
『バチェラー6』第7話を正直レビュー!石森さんの“事実発覚”に全視聴者が驚いた…。辻󠄀本さんの高度な会話テクにも注目
『バチェラー・ジャパン』シーズン6を、シリーズの大ファンである筆者が、正直にレビュー。第7話は、クアラルンプールへ久次米...
中村未来 2025-06-21 06:00 エンタメ
『バチェラー6』第6話を正直レビュー!小田美夢の“あまりにあざとい”テクニック。キス連発は最初から決めてた?
『バチェラー・ジャパン』シーズン6を、シリーズの大ファンである筆者が、正直にレビュー。今回は第6話。前回のラストで、早朝...
中村未来 2025-06-20 06:00 エンタメ
「あんぱん」清(二宮和也)は出る出る詐欺じゃなくて一安心。岩男とリンはやっぱり“チリンの鈴”だった
 銃撃された岩男(濱尾ノリタカ)は、嵩(北村匠海)にリンはよくやったと言って息絶える。八木(妻夫木聡)は、リンは親のかた...
桧山珠美 2025-06-19 17:28 エンタメ