え…? 優雅な御茶ノ水ママ友会をブチ壊した、地方出身者の悪気ない一言

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2024-01-13 06:00
投稿日:2024-01-13 06:00

【御茶ノ水の女・鈴木綾乃33歳 #2】

 御茶ノ水駅が最寄りの持ち家に住む薬剤師の綾乃。2歳年上の夫・孝憲と4歳の娘・香那と3人家族で余裕ある生活を送る彼女は、同じような価値観のママ友と共に充実した生活を送っていた。綾乃は、自分が世間のヒエラルキーの上位に位置する存在だと信じている。【前回はこちら

  ◇  ◇  ◇

「あわれともーいうべきひとは おもおえでー」

「みのいたづらに なりぬべきかなー」

 教室に響く幼児のかわいい暗唱の声。その背後で穏やかに見守るのは綾乃ら、子供たちのパパとママである。

 綾乃の娘・香那たちが通うのは、個性と好奇心を伸ばし、地頭をよくすることに重点を置いたカリキュラムを擁する総合知育教室だ。

 月4回のレッスンで月謝は約2万円。年度初めに教材費で5万円近く、年度末の総合発表会では任意の寄付金はかかるが、子供の将来のことを考えれば、安い出費である。

――なにより、自分と同じ価値観のママ友と知り合えるのが嬉しいのよね。

 平日のほとんどは仕事をしている綾乃。香那を通わせている保育園の保護者たちは皆忙しそうで会話の暇もなく、ママ友と呼べる人はいない。

 なぜわざわざこの場所に住んでいるのか不思議な類の人々もいるため、あえて避けている部分もある。これは、孝憲の前赴任地で付き合いに苦労した経験があってこその、学びである。

地方都市ゆえの世界の狭さに消耗

 北関東のその都市では、結婚直後から5年ほど過ごしていたが、綾乃はそこで友人を探すのに苦労した。

 ランチに誘おうものなら、単価2000円でも高いと言われ、ブランド物のバッグを持っているだけでマウントと陰口を叩かれてしまう――地方都市ゆえの世界の狭さに綾乃は苦しんだ。

 地方都市特有の閉鎖的な価値観の人も多く、しかも治安がいいとは言えない地域だったため、心に余裕のない人々も多かった。

――私は好きなものを食べて、好きなものを持ちたいだけだったのに…。

 だからといって、自分の希望を貫くほどの強さはなかった。異動を迎えるまで周囲の様子を伺いながら、個性を押し殺して、他人のレベルに合わせて過ごすことを綾乃は選んだ。

御茶ノ水界隈の住民は穏やかで優しい

 その点ここは、綾乃の感覚を解放できる場所だ。先日は知育教室のママ友たちと、グランドハイアットのレストランでランチ会をした。それはそれは優雅な空間だった。

 綾乃が仕切ったが、この提案に文句を言うメンバーは誰もいない。むしろ計画を立てた綾乃にお菓子等のお礼や、次回の仕切りを申し出る優しい言葉もあった。それから森さんも進んで自宅を提供してくれるようになった。

 みんな穏やかで、優しい世界――生まれてこの方、自分はそんな場所に身を置いたことはなかった。

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


心に響かないアドバイスが有益なチャンスに変わる神マインド
 みなさんは素直に聞けないアドバイスはないですか? 私はぶっちゃけいっぱいあります……。もったいないですよね。スッと入っ...
超絶カッコいい!木登り“たまたま”の完璧ポージングにキュン
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
職場のコミュ障さんに悶々…上手に距離を縮める5つの接し方
 職場では様々なタイプの人が働いているため、気が合わない人がもいるのもよくあることでしょう。コミュ障(コミュニケーション...
45歳女、5年越しにワイヤー矯正を決断! 2023.4.20(木)
 新型コロナが流行する前、医師から「健康的な自前の歯」を維持するべく、ひとつの選択肢として歯科矯正を勧められたアラフォー...
行き詰まった時は「料理」をするといいよ 2023.4.19(水)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
花にたとえるならスズランで!幸せ・愛・喜びを全部きやがれ
 細かいことは気にしない性分とはいえ、若い頃に付き合っていた彼氏から「花にたとえるなら、君はドクダミの白い花だね」と言わ...
「ささって」って何ナニ? 混乱必至!県民性ダダ漏れLINE3選
 小さな日本という島国に住んでいるのに、出身地が違うだけで、話し方も習慣も文化も大きく違うものです。違いすぎて、会話が聞...
白と青が眩しい季節 ぶらつくには良い日和 2023.4.17(月)
 この季節はなぜだか白と青が眩しくて、ぶらつくには良い日和。  家に籠もっていた人々が、外を動き回る自由を楽しんで...
“たまたま”も春うらら♡おんにゃの子と素敵な恋が始まる予感
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
念願のドラム式洗濯機!良かれと思ってホコリを取ったら1.6万円の大出費
 ステップファミリー6年目になる占い師ライターtumugiです。私は10代でデキ婚→子ども2人連れて離婚→シングルマザー...
昔の自分の写真を見て「かわいい」と思った 2023.4.16(日)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
アラフォーにして保険について初めて考えた 2023.4.15(土)
 皆さん、保険って何か入っています? 私は自分にはあまり関係ないものだと思っていました。ついこの間までは……。保険外交員...
余った片栗粉の使い道!ごま豆腐レシピから入浴剤、お風呂のカビ掃除まで
 料理に大活躍する片栗粉。でも、ついつい出しすぎてしまったり、賞味期限が切れて使えなくなってしまったりと、余りがちですよ...
スマートな大人の復讐ルールって? 泣き寝入りせず、仕返ししたっていい
 みなさんは、復讐や仕返しってどう思いますか? 私はものすごく執念深いので、イヤなことをされるといつまでも忘れず、仕返し...
明るい日差しのもとに春の色が溢れる 2023.4.14(金)
 ついこの間まで一色で塗られていた大地に、明るい日が差して春の色が溢れる。  冬に眠っていた反動で腕を伸ばす植物た...
“たまたま”の不思議な1枚を発見!あれ…片手が消えている?
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...