おやおやおや、寅子の言動がNGだらけで“アメション”田中絹代と重なる

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2024-07-08 18:20
投稿日:2024-07-08 18:20

NHK朝ドラ「虎に翼」~第15週「女房は山の神百石の位?」#71

 昭和26年。視察のためにアメリカに行っていた寅子(伊藤沙莉)が帰国する。刺激を受けてますます張り切る寅子に、新しい時代の女性の代表として密着取材をさせてほしいという雑誌の依頼が舞い込む。

 家族を巻き込んでの取材に笑顔で対応する花江(森田望智)を筆頭に、猪爪家の面々は様子がおかしいが…。

【人気で読まれています】『虎に翼』脚本家、アニメ界でなぜ高評価?朝ドラ人気の要因は公平な目線

【本日のツボ】 

NG寅子に「おやおやおや?」

 ※※以下、ネタバレあります※※

 アメリカ視察から帰国した寅子。ヒールにストッキングにサングラス、素敵なワンピースに身を包み、メイクも変わり、口紅も濃いめ、すっかりアメリカかぶれしてしまったようです。

 はた目にはちょっとイタく見える寅子に、やはり、日米親善使節として渡米し、それまでは古き良き日本の女性を演じていたにも関わらず、帰国後、報道陣に向かって「ハロー!」と言い、ファンに投げキッスを送るなど、すっかりアメリカかぶれした映画女優、田中絹代が重なりました。

 その振る舞いが顰蹙を買い、「アメション女優」などといって揶揄されることに…。アメションとは「アメリカで小便(ションベン)して帰ってきただけ」という蔑称ですが、少し舞い上がっているような寅子が心配です。

 久しぶりに帰ってきたのに、可愛い娘たちが待つ自宅ではなく、職場に寄ってしまう寅子。やっと帰ってきたのは夜遅く。お土産も、花江に美容クリームは良しとしても、全部英語で書かれた料理本を渡し、「あら全部、英語…」という花江に対して「花江なら読めるわよ」と寅子。花江の複雑な表情にも気づいていないようでした。

 子どもたちへのお土産もお菓子と英語の本でした。「どれも面白そうでしょ。たくさん勉強して世界を広げて頂戴。分からないところは辞書を引くのよ」と。子どもたちもやはり複雑な表情で、花江に「とらちゃんにお礼を言って」と促され、ようやく「ありがとう」と言った感じでした。

 寅子に悪気はないのは重々承知していますが、NG行動の数々に「おやおやおや?」と思ってしまいました。

「お金は私が充分に家に入れてるんだから」

「新時代の開拓者・佐田寅子 理想的な社会をつくる為 格闘する日々に密着…」。雑誌の取材を受けることになり、その担当は明律大女子部時代からなじみの竹中記者(高橋努)でした。

「みんなお嬢ちゃんの言葉を聞きたがってんだよ。あんたは世の娘さんたちの希望の星なんだから」。“希望の星”というフレーズが気に入ったのでしょうか。寅子の目がキラキラとしていました。

 取材がくると家族に報告した時のことです。「子どもたちの洋服も新調しなきゃ。出費がかさむわね」と花江が言い、直明(三山凌輝)が気遣って「僕が買おうか?」と。「いいのいいの。直明ちゃんが気にすることじゃないわ」と遠慮する花江に対して、「そうよ。お金は私が充分に家に入れてるんだから」と寅子。

 なんだか、寅子が「俺が稼いでいるんだから」とエラそうに主張し、妻への気遣いを一切見せないダメ夫のように見えてきます。

 本日の寅子の言動はNGだらけ。波乱含みの月曜日でした。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


「あんぱん」メイコたちの“椰子の実”をどこかで聞いた…ヒロインの妹は歌う法則があるのか?
 のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)を仲直りさせようと、健太郎(高橋文哉)とメイコ(原菜乃華)は千尋(中沢元紀)と共に2人...
桧山珠美 2025-05-13 16:11 エンタメ
吉本退所でも…令和ロマンくるまの謝罪は“最適解”だった。批判される「松本人志の復帰」との対比で見えたもの
 令和ロマン・高比良くるま(30)が吉本興業との契約終了を発表した。オンラインカジノ疑惑が持ち上がった際にくるまが事前に...
帽子田 2025-05-13 12:00 エンタメ
「あんぱん」蘭子らの一夜を想像して興奮が…のぶと嵩の恋はいつ始まる?
 のぶ(今田美桜)の発案で、女子師範学校の生徒たちは慰問袋を作ることに。休日には献金を呼びかけるなど、意欲的に取り組む生...
桧山珠美 2025-05-10 06:00 エンタメ
万博記念! 岡田准一、ツダケン…大阪出身の“キラリと輝く”イケメンたちを見よ
「大阪・関西万博」が始まって早や3週間。最初はさほどでもなかったのですが、ニュースなどで盛り上がっているのを見ていると、...
「あんぱん」健ちゃん=高橋文哉が“変な髪型”だった謎が解けた。ヤムおんちゃんの過去も気になる…
 ある日、嵩(北村匠海)は銀座のパン屋で草吉(阿部サダヲ)らしき人が写る写真を見つける。朝田家では、豪(細田佳央太)の壮...
桧山珠美 2025-05-07 17:00 エンタメ
「アンパンマン」から山ちゃん降臨! あの挨拶が聞けたのは“子どもの日”のサプライズですか?
 東京高等芸術学校に入学した嵩(北村匠海)は、受験の際に出会った健太郎(高橋文哉)と再会する。担任の座間(山寺宏一)から...
桧山珠美 2025-05-05 12:06 エンタメ
「あんぱん」一瞬のヤムおんちゃんに嵩は気づいたか? 寛の名言が“友蔵の俳句”並みに楽しみな件
 東京高等芸術学校合格発表の日。嵩(北村匠海)は結果を見る勇気が出ず、ひとり座っていた。そこに寛(竹野内豊)が現れる。嵩...
桧山珠美 2025-05-03 16:00 エンタメ
田中圭の不倫疑惑にちょっと待った!「令和の価値観」で永野芽郁との騒動を見てみると…
「週刊文春」のスクープで永野芽郁との不倫疑惑が報じられた妻子持ちの田中圭。  恋愛コラムニストであり、恋愛カウンセ...
堺屋大地 2025-07-03 12:04 エンタメ
永野芽郁が「清純派」って誰が言った? 批判するのはお門違いなワケ。江頭2:50への“涙”も大正解!
 日曜劇場『キャスター』(TBS系)で共演中の韓国人俳優であるキム・ムジュンを自宅に連れ込みお泊りし、なんとその翌日に妻...
堺屋大地 2025-05-02 06:00 エンタメ
「あんぱん」蘭子と豪の秘めたる恋に“過去の名作”を思い出す。河合優実は百恵ちゃんによく似ている
 縁談の返事をしに出掛けた蘭子(河合優実)を連れ戻したのぶ(今田美桜)に、蘭子は本心を明かす。季節は巡って秋になり、うさ...
桧山珠美 2025-05-01 19:16 エンタメ
なにわ男子・道枝駿佑は“肉食女子”から守られたのか?「キャスター」男性俳優陣が気になるよ
 芸能界広しといえども清純派と呼べるのは芦田愛菜だけ。長年、そう訴えてきましたが、今回の一件が図らずともそれを証明したの...
共亜事件は「虎に翼」のオマージュか。あんぱん、ブギウギの3人が同時代を生きている
 昭和11年、家族や嵩(北村匠海)に見送られ、のぶ(今田美桜)は女子師範学校の寮に入る。軍国主義の担任・黒井雪子(瀧内公...
桧山珠美 2025-04-28 18:40 エンタメ
「あんぱん」最後まで毒親だった登美子(松嶋菜々子)。去っていく彼女に問うてみたいこと
 受験したのぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)の明暗が分かれる。静まり返った柳井家で、寛(竹野内豊)たちに頭を下げる嵩。そこ...
桧山珠美 2025-04-26 12:50 エンタメ
春ドラマの評判を調査!『最後から二番目の恋』は令和の鬼渡?『あんぱん』『対岸の家事』の感想は
 2025年4月期も話題のドラマが続々スタート! 多すぎてどれを見るのか迷ってしまう…。そんな人のために忖度なしでドラマ...
「あんぱん」千尋(中沢元紀)は本当に良い子…史実どおりの展開なのか。しょくぱんまんのようなイケメンだ
 けんかした嵩(北村匠海)と千尋(中沢元紀)に、寛(竹野内豊)は改めて後継ぎはいらないと告げる。そして、何をしながら生き...
桧山珠美 2025-04-23 17:51 エンタメ