寅子版「自分会議」はユニークな演出だった! “ラスボス”百合さんに俄然注目

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2024-08-20 15:30
投稿日:2024-08-20 15:30

第21週「貞女は二夫に見ず?」#102

 結婚したら、自分か航一(岡田将生)のどちらかの名字が必ず変わることに、改めて気付いた寅子(伊藤沙莉)。

 自分が星姓を名乗るべきか、佐田姓を名乗るべきかで悩む。そんな寅子の様子を、娘の優未(毎田暖乃)は心配していた。

 寅子は轟(戸塚純貴)の事務所を訪ね、先日、軽はずみな発言をしたことを謝罪。そのうえで、名字についての悩みを相談する。

 そして、答えがはっきりと決まらないまま星家へ向かうが――。


【読まれています】蠢く2組の恋模様。“台所公開プロポーズ”で攻める航一、漢・轟太一は堂々のカミングアウト

【本日のツボ】

寅子の「自分会議」

 ※※以下、ネタバレあります※※

 前日の放送に続き、寅子の夢の中です。場所はなぜか「竹もと」でした。机を挟んで向かい合って座るのは現在の寅子(①)と法衣姿の寅子(②)。

「結婚すれば、夫または妻の名字を名乗る。それはつまり、どちらかの名字が必ず変わる、どちらかの名字を名乗れなくなるということでしょ? 個人の尊厳や平等とかけ離れてはいないかしら」

 現在の寅子(①)が切り出すと、「はて?」「ではあなたが名字を変えたくない理由は?」法衣姿の寅子(②)。

 そこにもうひとり、モンペ姿の寅子(③)が現れ、「申し訳なくなった? 優三さん(仲野太賀)に」「佐田寅子でなくなると優三さんと夫婦だった時間が消えそうな気がする?」と現在の寅子(①)に投げ掛けます。

「怖くはある。優三さんのことも含めて、佐田寅子として生きてきた自分が消えてしまう気がして」と現在の寅子(①)。

「弁護士として生きてきた自分、裁判官として生きてきた自分、たくさん失敗をして、前に進んだ自分」とモンペ寅子(③)が続け、さらに「その経歴、歴史、すべてが」と現在の寅子(①)。

 そこに、「はて?」と現れたのは三つ編み寅子(④)です。「その理屈で言うと、猪爪寅子だった私は佐田寅子になった瞬間、あなたの中では既に消えてしまったということ?」。「いや…そういうわけでは」。「じゃあ、どうして佐田寅子だけが特別なの?」「特別じゃなくて、二度目の結婚で初めて気づいたの」

 そんなふうに、現在の寅子(①)から三つ編み寅子(④)まで4人の寅子がそれぞれの事情や思いを語り合います。

 そして、もうひとり現れたのが5人目の星寅子(⑤)。「星寅子、悪くないんじゃない? だって初代最高裁長官の息子の妻という肩書きも手に入るのよ」と。「つべこべ言わずに星寅子になっちゃいなさいよ。それで丸く収まる」――。

 寅子の大渋滞。①~④の寅子が主張し合い、話はまとまりそうもありません。そんななか、最年少、三つ編み寅子(④)が得意技の「ひっかき」ポーズで威嚇している姿が懐かしく……。

 最後は、寅子が「ワー」っと叫んで夢から覚めるという展開。藤子・F・不二雄先生の「自分会議」を彷彿させるような「寅子会議」、ユニークな演出でした。

百合さん、いよいよ動きだす!?

 そして、ラスト。星家のリビングで、航一が「結婚したら僕が佐田になる」と発言。これまで気配を消していた百合さん(余貴美子)が「いけません。そんなこと絶対いけません。亡きお父様に、朋彦さんに顔向けできない。私は絶対に認めませんよ」と語気荒く…。百合さん、いよいよ動きだす!?

「新宿野戦病院」(フジテレビ系)のイ・オンナことリツコ・ニシ・フリーマンから百合さんまで、この夏は余貴美子さんのふり幅に驚かされています。


桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


渡辺翔太が国宝級イケメンランキング初V!Snow Manはめめだけじゃない
 恒例の「ViVi国宝級イケメンランキング 2023年下半期」が発表されました。  NOW部門1位は、八木勇征(2...
スズ子と愛助「年の差恋愛」に障害…おでん屋台店主・伝蔵の台詞に注目
 愛助(水上恒司)から「恋人になってください」と言われ、スズ子(趣里)は「ちょっと考えさせてほしい」と答える。それ以来、...
桧山珠美 2023-12-16 06:00 エンタメ
手越祐也ポジティブのカラクリ、新曲は微妙も「アイドル」カバーはバズる
 ジャニーズ時代はNEWSに所属し、バラエティー番組でも活躍した手越祐也。退所後は“辞めジャニ”として主戦場をYouTu...
堺屋大地 2023-12-15 06:00 エンタメ
押しかけ暴走気味の愛助(水上恒司)とスズ子の恋もいよいよ
 神戸への巡業の帰り、スズ子(趣里)は久しぶりにはな湯を訪ねる。懐かしい常連客の面々に迎えられ、昔のように庭で話をする。...
桧山珠美 2023-12-13 14:25 エンタメ
水上恒司君臨!デビュー作「中学聖日記」から5年経っても年上好き♡
 昭和18年、アメリカとの戦争に終わりが見えない中、「福来スズ子とその楽団」は地方巡業を重ねていた。  スズ子(趣...
桧山珠美 2023-12-11 15:50 エンタメ
松下洸平は“最弱の目力”が魅力!ネトラレ役が似合う、時代が生んだスター
 松下洸平(36)の主成分は優しさです。現在、出演しているドラマ「いちばんすきな花」(フジテレビ系)を見ていてしみじみそ...
茨田りつ子がまさかの前座!? 「大空の弟」を歌いこなす趣里の表現力
 羽鳥善一(草彅剛)が企画した合同コンサートは、ブルースの女王・茨田りつ子(菊地凛子)とスウィングの女王・福来スズ子(趣...
桧山珠美 2023-12-07 14:30 エンタメ
「大空の弟」は聞き物、りつ子“むっつり顔”のチラシにNHKの芸の細かさ
 弟が戦死してスズ子(趣里)が落ち込んでいるのではないかと心配した羽鳥善一(草彅剛)は、食事でもしようとスズ子を自宅に誘...
桧山珠美 2023-12-06 15:20 エンタメ
「一、二、三、四、五」揃った楽団員名、余計に六郎の不在が際立つ
 役場の職員が梅吉(柳葉敏郎)の元を訪れて届けた報せには、六郎(黒崎煌代)が戦死したと記載されていた。  しばらく...
桧山珠美 2023-12-05 14:00 エンタメ
松嶋菜々子の誇らしげな語りに納得…イケオジ反町隆史を保持するお手柄感
「男の美しさは、肌に出る。」――資生堂「SHISEIDO MEN」のCMに出演する松嶋菜々子&反町隆史夫妻が話題です。 ...
櫻坂46異例の韓国人気賞1位!紅白復活&史上最多動員、大逆転なぜ起きた
 櫻坂46が11月25日および26日、千葉・ZOZOマリンスタジアムで「3rd YEAR ANNIVERSARY LIV...
こじらぶ 2023-12-02 06:00 エンタメ
歌わない福来スズ子はただの人…からの脱却!らしさ炸裂のパクった楽団名
 楽団が解散して数週間、スズ子(趣里)は何をするでもなく日がな一日を過ごしていた。そんな時、スズ子は大阪に戻ってこないか...
桧山珠美 2023-12-01 14:00 エンタメ
茨田りつ子の覚悟、ラスト3分の急展開!弟子入り志願者の名に一抹の不安
 警察から解放されたスズ子(趣里)は、三尺四方の中だけで自分の歌を表現するのは難しいと悩んでいた。  警察署で自身...
桧山珠美 2023-11-28 15:27 エンタメ
日中戦争の影響じわり、スズ子が「カカシみたいなワテ」になった
 スズ子(趣里)と梅吉(柳葉敏郎)が東京で一緒に暮らし始めて1年、梅吉は何をするわけでもなく酒を飲むだけの毎日を過ごして...
桧山珠美 2023-11-27 15:10 エンタメ
羽生結弦を癒すのはプーさん…自由に恋愛もできないなんて気の毒過ぎる
 羽生結弦にはまったく驚かされてばかりです。  今年、8月4日に電撃婚を発表したときも、ビックリでしたが、そのわず...
地殻変動!下剋上球児、うちの弁護士…視聴率では見えないバズり作品は
 シリーズものを除いた主要民放プライム帯ドラマ全12作の全話平均視聴率が5.9%(ビデオリサーチ調べ・関東地区・世帯=以...
こじらぶ 2023-11-25 06:00 エンタメ