仏様のお供えは「花」とは限らない! もうすぐお彼岸、仏花にまつわるケンミンSHOW的な話

斑目茂美 開運花師
更新日:2024-09-11 06:00
投稿日:2024-09-11 06:00
 ねこ店長「さぶ」率いる我がお花屋は、神奈川の仏事に手厚い土地柄の片田舎にあります。とりわけ、夏のお盆からお彼岸月の9月にかけて、仏花の調達に頭を悩ませておりますが、近年の異常気象と円高!

仏花の調達が難しい!

 仏花の要である「菊」をはじめ、調達がままならず、手元に届いたものの、箱の中ですでにお亡くなりあそばしている仏花も決して珍しくありません。

 自然相手のお商売は「需要と供給」のバランスが大きく崩れてしまう期間が、年間に何度も巡ってきますが、思い出すのはワタクシの子供の頃に聞いた、信心深い祖父の言葉…。

 今回は祖父の言葉を思い出しながら、「常識ってなに!? 場所が変われば仏花も変わる」の解説です。

【読まれています】あの人気観葉植物が地震を予知!? 植物の異変から事前兆候を察知する話

仏様のお供えは花とは限らない

 衣食住は土地柄というものが色濃く反映されますが、それはお花の世界も同じ。たとえば冠婚葬祭、特に仏様関係は、地域差をとても感じます。

 全国にいるお花屋仲間と話していると、ワタクシがお花屋になった当初のカルチャーショックと同じ現象が変わらず存在し、いまでは微笑ましく感じます。そう、自分の常識は必ずしも世間の常識とは言えないのです。

 どなたでもお墓参りやお葬式など、お供えの植物は、必ずしも花とは限りません。ましてや仏様に「菊」が決まりではないのでございますよ。

 神道においては、神の世界と人間の世界の境の「境木(さかいき)」の役目を果たす神木として、古来より「榊」が供えられますが、関東から北では榊の代用として葉が小さなヒサカキ(緋榊・姫榊)を使用し、東海より南では、仏教用の菊仏花の背中に装着。

 仏花を仏様に見立てるならば、背中のヒサカキは後光を表現しているらしい…。仏花においては、古(いにしえ)より生活に欠かせない花だからこそ、地方色豊か。お土地柄が色濃くでます。

高野槙(こうやまき)ありますか?」

 ごくたまに、和歌山出身の熱狂的真言宗の信者様とお見受けするお客様から問い合わせをいただきます。ウチ、神奈川なんですけどね…。

「禁忌十則」という規則によって果樹・花樹・竹・漆を植えることが禁止されている高野山。かの弘法大師が花の代用品として、高野山に自生する高野槙を供えたことが始まりらしいのですが、これがなかなか入手困難。パッと見は普通の木なのですが、そのお客様は高野槙を墓前や仏壇に供えると仰るのです。

忘れられない祖父の言葉

 関西の地方によっては、お墓参りや葬儀、仏壇にシキミを飾るところもございます。ワタクシの実家は神奈川の城下町ですが、昔から仏壇もお墓もシキミ。決して嫌な香りではありませんが、仏間にはお線香と独特なシキミの香りが漂っていました。香木なので、シキミと呼ばずに香の花(コウノハナ)と呼んでおります。

 徳島を訪ねた折、スーパーの店頭で売られていたシキミは、ポリバケツから盛大に飛び出し、根っこがついていました。「これは何?」と聞けば、「シキミじゃなくてシキビな。根っこごと墓の花立にお供えじゃ」とおっしゃる。あまりの豪快さにビビりました。

 仏様の世界には青蓮華(ショウレンゲ)という花が咲いていて、シキミはこの青蓮華の葉に似ていると言われておりました。シキミも青蓮華もどちらも天竺(仏様のいる国:インド)に生えておりますな。

 子供心になぜ我が家の仏壇の中に木が生えているのか(生えているのではなくお供えだったのですが)、信心深い祖父に聞いたことがありました。すると祖父はこう答えたのです。

「香の花(シキミ)は仏様の国の植物で日持ちもするからね。昔は人が死んだら棺桶の中に香の花を敷き詰めて匂いを消したんだよ。でも本当はどんな花でも仏壇に絶やさないことが一番大切なんだ」

 子供の頃は「ふーん」でも、お花屋になったいま、祖父の言葉は身に沁みます。

暑さ厳しい日本の仏花事情

 調べれば調べるほどケンミンSHOW的展開の仏花ですが、“常夏”のような日本の仏様事情は大きく様変わりしました。

 仏花をお求めになるお客様の決まったリクエストは「日持ちする花」ですし、最近では本物の植物でなくてもOK! な風潮でございます。

 毎日お墓参りが当たり前な土地柄では、お墓の花立には枯れない造花がインされています。手間もかからず、ずーっとキレイよ~。ドライ・ソープ・プリザーブドと生花ではない仏花が選びたい放題の世の中です。

「どんな花でも絶やさないことが大事」と話していた祖父にあの世で巡り会えたら、“予言していたの?”と聞いてみたいと思っています。

 今月は、ご先祖様を身近に感じるお彼岸がやってまいります。ご先祖様がアナタをあの世からお守りしてくださいますことを…遠いお空の向こうからお祈りしておりますよ~。

斑目茂美
記事一覧
開運花師
半導体エンジニアを経て花業界に転身。イベント・ホテルなどの装飾も手がける生花店を営む傍ら、コンテストで優勝・入賞を重ね、雑誌・新聞等に作品を発表する。神奈川各所にて花教室を開催。障害者支援も花で実践。悩ましくも素敵なお客様を「花」で幸せへと導く道先案内人。ブサかわ猫店長「さぶ」ともに奮闘中。Facebookやってます。

ライフスタイル 新着一覧


気は優しくて力持ちってこんな感じかな
 そして、  思わずほっこりしてしまうのはなぜ?  
ダークヒーロー参上! 木の上から睨みを利かせるアウトロー“たまたま”
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
息抜きは絶対必要!忙しいワーママが自分時間を確保する4つのアイディア
 世の中のワーママは、仕事や家事、育児と朝から夜まで大忙し! 自分の時間なんてほとんどありませんよね。しかし、人には息抜...
「糟糠の妻」の意味は? 出世しても〇〇してはいけないんだゾ
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「校閲婦人と学ぶ!意外と知らない女ことば」では、女性...
ほっこり癒し漫画/第85回「食べる! 食べるでござるーッ!」
【連載第85回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽのお...
酔っ払い同士の胸熱&ちょっと恥ずいLINE3選。きのこたけのこ戦争の和解にもおすすめ?
 人はお酒を飲むと日頃心に秘めている本音が出てきますよね。酔っ払い同士のLINEをのぞいてみると、本音同士の面白い会話が...
お互いの「子どもの共通点」に愕然。平凡になったのは元彼と私、どっち?
 新川崎の大規模マンションに暮らす真央。「量産型主婦」を自覚しているが、かつての真央はバリバリの個性派女子だった。そこで...
言われたくない! ただのオジサンになった「元彼からの一言」に怒りが…
 新川崎の大規模マンションに暮らす真央。量産型主婦を自覚しているが、かつての真央はバリバリの個性派女子だった。20年前の...
「浜崎あゆみみたい」って褒め言葉? サブカル女からママ友への小さな抵抗
 かつて京浜工業地帯を支えた巨大な貨物列車ターミナルだった新川崎は、今や「品川から3駅に住まう」などというまやかしのよう...
「奢る代わりに…」急に見せた“男”にドン引き! 仲良かった友達が苦手になった瞬間【LINE編】
 仲良くしていた友達と、LINEがきっかけで疎遠になった経験はないでしょうか? 「こんな人だったの?」という違和感から、...
「センスが悪い」ってモラハラじゃないの? かつての「センスがいい人」はどこに…
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(64)。多忙な現役時代を経て、56歳...
これは盲点…!カラオケ苦手な人が乗り切る必勝法。カギは「地元」にあり
 気づけばもう2024年も残すところあと少し…。なんか今年早くないですか?? こうやって時間は過ぎていくのかと思うと、本...
総額いくらなの!? 美的の「スキンケア大充実セット版」は韓国コスメの現物も入ってお得感100点満点でしょ
 毎回、付録違いのVer.を発売している美的。12月号は「スキンケア大充実セット版」を購入してみました。  話題の...
40代、職場で地雷女に?「ソフト老害」流行語大賞候補入り、“10のこじらせ言動”に要注意
 職場に一人でも老害と思われる人がいると、雰囲気が悪くなってしまいますよね。2024年の「新語・流行語大賞」の候補には「...
「嫌われる話し方」5選。無意識にやらかしがちだけど、みーんなイライラしているかもよ?
「この人と話を聞くとなんかストレス溜まるんだよな」「会話していてなぜかイライラするの何で?」こんな風に、話していてモヤモ...
チャールズ・ブロンソンみたい! 草原の激シブ“たまたま”にキュン♡
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...