発達障害、情緒障害、認知症…花をお求めになるお客様から教わること

斑目茂美 開運花師
更新日:2024-09-18 06:00
投稿日:2024-09-18 06:00
 猫店長「さぶ」率いる我がお花屋にはいろいろなお客様がやってまいります。

 学校帰りに「ただいま~」なんて声をかけながら掃除をしてくれる小学生もいれば、猫店長を触りにやってくる幼稚園児もいたり。自慢じゃないけど雑多なイメージの店にはオシャレな方から「はて?」な面白い方、あげたらキリがないお客様がたを接客させていただきながら、日々醍醐味を満喫しています。

 今回は、定期的にやって来る小さくて大切なお客様の話です。

定期的に来店される、小さくて大切なお客様

「お願いがあってまいりました」

 ある日、30代くらいの可愛らしい女性が来店されました。

「どうしましたか?」とお尋ねすると、「これから毎月、息子を連れて買い物に来たいのですが、息子は少し自閉の発達障害があります。ですが、息子に自由に花を選ばせてあげたいのです。選ぶには時間もかかってしまいますし、ご迷惑をおかけしてしまうと思い、お願いとご挨拶にまいりました」。

「いやいや、そんなこと気になさっていたらお母さんの身が保ちませんよ」なんて言ってみたものの、この可愛らしいママは、さまざまな場所でこんな風に心を砕き、頭を下げていらっしゃるんだろうな…。そう容易に想像ができるほど物腰も喋り方も優しい人にお見受けしました。

 そしてほどなくしてママに連れられてやって来たのは、5歳くらいの小さな男の子でした。モジモジとママの後ろに隠れた、ものすごく可愛い顔をした男の子の登場にテンション爆上がりのお花屋オバちゃん軍団たち。

 男の子に「あらー!」と声をかけますが、確かに全然喋らない。そりゃそうだ。変わった生き物のオバちゃん軍団は彼にしてみれば、未知との遭遇に他ならない。

「お花いっぱいあるねぇ。きれいだねぇ。かわいいねぇ」一生懸命ママが話しかけても、息子ちゃんは完全フリーズで無反応(笑)。そうね、オバちゃん軍団は怪獣にしか見えないよね(笑)。

【読まれています】伊藤健太郎は破局して正解! “小栗旬軍団”加入でバーター出演の機会にも恵まれる

「こんにちは」の笑顔に悶絶

 息子ちゃんとママはせっせと雨の日も、風の日も来店されます。そして、男の子は、可愛い花と怪獣オバちゃん軍団との未知との遭遇を繰り返し、いよいよある日、「こんにちは」が言えるまでに慣れてくれたのです。

「えらいねー! こんにちは言えたねー!」ママはまずベタ褒め。お花を選ぶことにも慣れ、花合わせも「お!」とオバちゃん軍団が驚くほどの成長ぶりに「可愛いお花選べたね! すごいねー!」ママがさらにベタ褒め。

 つられてオバちゃん軍団も「えらいねー! すごいなー!」としつこくベタ褒めすれば、息子ちゃんがニッコリ笑って軍団が悶絶。この可愛い息子ちゃんを巡るママとオバちゃん軍団のベタ褒め交戦で、毎月、店内は幸せオーラでむせ返っておりますw。

植物にも大きく響く優しい言葉

 優しい言葉や褒め言葉の持つエネルギーは、植物にも大きく影響を及ぼすことがわかっております。有名なのはサボテンで、優しい言葉をかけたものと、意地悪な言葉をかけたものとでは、トゲの状態に違いが出ると申します。

 ある研究では、褒めたり優しい言葉をかけた観葉植物は元気に育つ一方で、意地悪に罵声を浴びせて育てた観葉植物は元気がなく枯れてしまったという結果が出ました。この原因は諸説ありますが、感情の有無が不明な植物でさえ、そういう結果が出るのであれば、感情を持つ人間がどうなるかなど、結果は明白に思えるのでございます。

優しい褒め言葉の威力

 不思議なもので、美しい花や植物を見た時、「キレイね」や「可愛くてヤバい」は思わず口から漏れちゃいますが、間違っても「バカ野郎!」や「くそっ!」なんて言葉はまず出ません。心の声は無意識に出ちゃうもんです。

 今回のママと息子ちゃんに限らず、お花屋には発達障害、情緒障害を持つお子さん、あるいは、認知症を患ったお母様を連れて多くのお客様が花をお求めにやって来ます。きっと花や植物がもたらす優しい会話が、家族を包む優しい空気を作り出すのだとご存じの方々です。

 正直、そんなお客様の接客は、少々の時間と工夫が必要です。障害や病を患った方が見て、触って、選ぶお花や植物である必要性。それはおそらく譲れない行為であり、忙しぶらずにお手伝いすることがとても大切です。

花を売るだけが仕事ではない

 お花屋という商売は、花を売るだけが仕事ではなく、心優しい生活を守る仕事でもあるんだよ、と、いまではすっかり慣れてバイバイと手を振ってくれる小さなお客様が、毎月、教えてくれています。そのたびにフンドシを締め直すワタクシでございます。

 ささやかな花がアナタを優しい空気で包むお手伝いができますことを…遠いお空の向こうで応援しておりますよ~。

斑目茂美
記事一覧
開運花師
半導体エンジニアを経て花業界に転身。イベント・ホテルなどの装飾も手がける生花店を営む傍ら、コンテストで優勝・入賞を重ね、雑誌・新聞等に作品を発表する。神奈川各所にて花教室を開催。障害者支援も花で実践。悩ましくも素敵なお客様を「花」で幸せへと導く道先案内人。ブサかわ猫店長「さぶ」ともに奮闘中。Facebookやってます。

ライフスタイル 新着一覧


草むらをくんくん…“にゃんたま”君の探し物は何ですか?
 無限に見ていたいパーツNo.1といえば、にゃんたま!  今回は探し物中のにゃんたまにロックオン。  たしか...
苦手な人との向き合い方! 職場の人間関係を円滑にするコツ
 仕事の内容には慣れてきたし、プライベートも楽しくできている。ただ、「職場に苦手な人がいるっ」――。そんな方も多いと思い...
自分で皮下注射も…採卵手術前日までにやるべき3つのこと
 日本は不妊治療の件数は世界一なのに、体外受精で赤ちゃんが産まれる確率は最下位。そんな状況を変えるために、ミレニアル世代...
キリスト教のお盆「ハロウィン」 その由来とカボチャの意味
 ワタクシ、全く上達しないドイツ語の個人レッスンを受けております。上達しない理由は一重にワタクシの不真面目さによるもので...
自然災害に巻き込まれた…子どもとどう向き合ったらいい?
 台風19号の爪あとが各地に深刻な被害をもたらしていますが、近年は相次ぐ自然災害で被災住民が避難生活を余儀なくされるケー...
月吹友香さん<後>41歳専業主婦が小説家を目指して見えたもの
 第18回(2019年度)「女による女のためのR-18文学賞」(※)の大賞受賞作「赤い星々は沈まない」は老女の性を大きな...
今日の議題はにゃに? 夕暮れの猫集会でポロリ“にゃんたま”
 猫の島、日暮れ近くに猫の集会にお邪魔しました。  おのおの一定の距離を保って、茶白、黒白、サビ、三毛、キジ、サバ...
“生活習慣病”も予防して! 介護は認知症だけじゃないんです
 日本は長寿大国です。誰しも安心して生涯を全うできるとしたら、高齢であることはとても素敵なこと。しかし、介護士でもある筆...
月吹友香さん<前> 私がR-18文学賞で高齢者の性を描いた真意
 読書の秋到来。直木賞や芥川賞、日本推理作家協会賞に本屋大賞……国内には数多の文学賞がある中で、「R-18文学賞」(※)...
犬でなく人間だったらと思うと…モラ気質なワンコの実態3選
 モラハラ気質は、人間だけに限ったお話ではないのかもしれません。「うちの犬が人間だったら、モラ男(モラ女)に違いない…」...
子宮全摘だけでもつらいのに…腸閉塞で長さ190㎝の管を挿入
 私は42歳で子宮頸部腺がんステージ1Bを宣告された未婚女性、がんサバイバー2年生です(進級しました!)。がん告知はひと...
お日様パワーでモテにゃんに…ぽかぽか日光浴“にゃんたま”
 きょうのにゃんたまωは、雨上がりの日光浴。  濡れた毛を乾かして、お日様パワーでぽかぽかリラックス♪  気...
魔法の鍋! 自動調理鍋の購入でキッチンはどう変わったか?
 最近話題の自動調理鍋。材料を入れてスイッチを押すだけで、料理ができてしまうという優れもののようです。少しでもラクをした...
癒し系の彼女になって? 恋愛はそういうサービスじゃない!
 あなたには理想の恋人っていますか? 「優しい人がいい♡」「背が高くて色白がいい♡」「お金持ちがいい♡」  好きなタ...
共感されないけど…子どもを欲しいと思わない女の4つの理由
「子どもが欲しいと思わない」――。女性がポツリともらすと、男女問わず「どうして!?」「なんでほしくないの?」と質問責めに...
人はなぜ死者に花を手向けるのか? 古代から続く花のチカラ
 お花屋さんという御商売は、本当にさまざまなお客様のいらっしゃる場所でございます。ワタクシのお店は神奈川でもちょっぴりカ...