ラブレターズのKOC優勝が下積み中の「オジサン芸人」に与えたもの。夢を追い続けるのはいばらの道か?

帽子田 芸人、ライター
更新日:2024-10-30 06:00
投稿日:2024-10-30 06:00

M-1「錦鯉」優勝とは異なる意味を持つ

 その時のコント師たちは「まあまあ、錦鯉は元々地下でもカリスマだったし、錦鯉になるなんて夢のまた夢だよ」という達観スタイルだった。しかし、今回はそうも言ってられない。

 ハナコや霜降り明星が優勝して第7世代が台頭してきた頃は、ブレイクを夢見て下積みを続けてきた仲間のオジサン芸人たちが「もうこれくらいが潮時かな…」と見切りをつけて辞めていった。華とセンスがある若手芸人を目の当たりにして、何年やっても売れる気配のない現実を受け止められたのだろう。

 仲間が去っていくときは何とも言えない悲しい気持ちで満たされたが、社会復帰していく人たちを引き留めるのも酷な気がした。日本社会全体で見たら「売れない芸人」とは名ばかりのフリーターより、真面目に働く正社員が増えた方が良いだろうし。

 それなのにラブレターズやサルゴリラの鮮烈な優勝をみて、「諦めなければ自分たちも優勝できるかもしれない」という可能性を夢見てしまった。

 それは甘美な夢だけれど、絶望的でもある。また一年売れない芸人生活を過ごしてしまうことになり、再就職の機会を逃し、社会に帰るのが遅くなるからだ。

夢を見続けるのは「いばらの道」か

 そもそも下積みを長く積んだ芸人にとって、「芸人を辞める」という決断はとてもつらい。

 夢を諦めることに対する拒否感はもちろんあるが、「人前でネタをやってウケる」という現象が非常に中毒性が高いからだ。日常生活であの幸福感は味わえない。それを長年経験してしまうと、社会復帰が遅れてしまう。

 だからこそ、お笑いを辞めたくないから、辞めなくていい理由やモチベーションを探しながら芸人生活を続けている。その辞めなくていい理由に「ラブレターズの優勝」が関わってきてしまうのだ。

 賞レースは芸人たちに夢を与える存在である。しかし、その夢を与えた結果、またいばらの道を歩かされる芸人もいるのは事実だ。

 それでも、僕は夢がある人生は不幸ではないと思う。何かをきっかけに、自分がずっと憧れていた場所に手が届く瞬間を夢見て努力することは、正直何ものにも代えがたいくらい楽しいからだ。

 だからこそ言う。「ラブレターズの優勝は、僕たちオジサン芸人に夢を与える素晴らしいものでした」。

帽子田
記事一覧
芸人、ライター
別名義では芸人として活動。一時期は年100本以上のライブに出演、ライブ主催の経験もアリ。一応現役の芸人ではあるが、ただのお笑い、バラエティ番組ファンでもあります。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


櫻坂46渡邉理佐 卒業ライブで欅坂46の封印曲を解禁できた訳
 渡邉理佐(23)が今月21日、22日に東京・国立代々木競技場第1体育館で行われた自身の「卒業コンサート」をもって、櫻坂...
こじらぶ 2022-05-26 06:00 エンタメ
眞栄田郷敦の強みは誠実!マッケンより普通にゴードンが好き
「NHKさん、ありがとう!」  思わず叫んでしまいました。  16日スタートの夜ドラ「カナカナ」(NHK総合...
広末涼子“今でも需要”は「脇役でもコツコツ出演」の賜物
 女優の広末涼子(41)が、5月いっぱいで自身のインスタグラムのアカウント閉鎖を発表した。4月14日に初のエッセー本「ヒ...
神尾楓珠“ワイプ芸”を刮目せよ!「3年A組」出世頭の演技力は
 神尾楓珠が凄いことになっています。水曜22時「ナンバMG5」(フジテレビ系)、金曜23時30分「青野くんに触りたいから...
平手&長濱“欅坂46両雄”ドラマ界本格復帰記念にプレイバック
 元欅坂46の平手友梨奈(20)が今月10日、22年7月期放送のドラマ「六本木クラス」(テレビ朝日系)に出演することが番...
こじらぶ 2022-05-14 06:00 エンタメ
吉高由里子主演「光る君へ」NHK&民放MIX“イケメン再演”の目
 NHKは11日、2024年に放送予定の大河ドラマについて、タイトルは「光る君へ」で、主人公の紫式部を吉高由里子(33)...
神木隆之介は元子役クズ説を覆す男、女性の噂も皆無だけど…
 元人気子役というと悪い印象しかないのは、間違いなく坂上忍と杉田かおるのせいでしょう。  子どもの頃あんなに可愛か...
松下洸平“低視聴率”でも高評価 ゴチで得た天然ポンコツの座
 5月1日に俳優業デビューから12年を迎えた松下洸平(35)がノリに乗っており、ツイッターでは「#松下洸平12周年」のお...
ディーン様は浮世離れしていてナンボ!お宝シーンよもう一度
「あいわらずお美しいこと!」  そう言わずにはいられないのがディーン・フジオカ(41)、通称おディーン様です。4月...
浅香航大は“理想の元彼NO.1”!本人自覚ゼロでも色気だだ漏れ
 昨今、やたらと考察ドラマが多いと思いませんか。前クールの「真犯人フラグ」とか「ミステリと言う勿れ」とか「愛しい嘘~優し...
松潤・キムタク・ニノ…主演作の明暗、私生活切売りがアダ?
「ドクターX~外科医・大門未知子~」など数々の人気作を生み出してきたテレビ朝日の木曜ドラマが2クール連続で苦戦している。...
こじらぶ 2022-06-01 12:36 エンタメ
SixTONES松村が傷物に…「恋マジ」時代錯誤設定にキモイの声
 今月18日にスタートしたフジテレビ系ドラマ「恋なんて、本気でやってどうするの?」(月曜午後10時)が、女性から酷評され...
山P「正直不動産」番宣拒否報道もあったがいいやつじゃん!
「正直不動産」(NHK総合)の山下智久(37)を見ていて、山Pもずいぶん丸くなったなあと思う。  山P演じる主人公...
「芸能人二世」サバイバル! 生き残るための“最大武器”は?
 この春も芸能界は二世が注目を集めるようでーー。タレントの中山秀征(54)の長男・中山翔貴(23)は4月8日スタートのテ...
城田優「カムカム」で甘美な声も…驕る“イケメン”久しからず
 日本人と外国人との間に生まれた子どもを「ハーフ」って言いますが、「ハーフ」は半分という意味だから「ダブル」や「ミックス...
坂口拓が園子温監督“性加害”報道で謝罪 ネットは別の反応も
 映画監督や出演者による性加害報道が相次いでいる。今月4日には「週刊女性PRIME」で園子温監督(60)が複数の女優に出...
2022-04-08 06:00 エンタメ