「おじたちから評判いいよ」で得た自分の価値。パパ活女子の末路は惨め一直線なの?

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2024-12-14 06:00
投稿日:2024-12-14 06:00

カウンターで鮨をつまむ「あの女」って…

 男はその日のお手当をカウンターの下で手渡ししながらつぶやいた。当たり前のように晴乃は受け取り、今年二度目の誕生日祝いとして受け取ったカプシーヌに雑に詰め込んだ。

「あっという間だから、大事にしてるんです」

「大事ねえ…使い時を見極めないと」

 男は、晴乃のタイトスカートの上で指先を遊ばせながら酒臭い吐息を吹きかける。能面の微笑で晴乃はごきげんに応えた。

「ご教授、ありがとうございます~」

「固いなあ。間違うと、ああいうオンナになっちゃうよ」

 彼はカウンターの隅でひとりきり鮨をつまむ女性に視線を投げた。

 薄暗い中、スポットライトが当たったような照明がやたらと目の下のたるみとひとりの存在感を浮かび上がらせている。

 晴乃はその女に見とれ、頷くことはできなかった。

 ――あれ、あの人…?

 ふと、女に特別な気配を感じた。

やっぱりバレていた「ええと、あれは」

 数日後。

 閉店後の片づけをしていた晴乃は、ふたりだけになったタイミングで、友梨佳から突然話しかけられた。

「山本さん、あの鮨屋どうだった?」

 薄暗い死角にいたため、バレていないと思っていたが、やはり存在は認識されていたようだ。

「イマイチじゃなかった? 知り合いの店だし、ご祝儀代わりに伺ったけど」

「あ…ええと、あれは」

「いいのよ、仕事さえちゃんとしてくれれば」

 友梨佳は、うろたえる晴乃をフォローするように告げた。

友梨佳のまっすぐな視線に胸が痛む

 責めているわけでないことは表情でわかる。純粋な日常会話のひとつのはず。まひな曰く、彼女もそんな過去があるということなのだから。

 ただ、自然と謝罪の言葉が出てしまう。

「すみません…」

「なんで謝るの?」

 その通りだ。晴乃は誰に対して謝っているのかわからなかった。

 もしかしたら、自分の中で迷いや後ろめたさがあるのかもしれない。尊敬している人に言われて思い知る。

 そんな気持ちがあるくらいなら、パパ活など手を出す資格はないのかも――迷いながら顔を上げた時、そこには友梨佳のまっすぐな視線があった。

「いいの。堂々としなさい。将来、正当化できる自分になっていれば結果OKなんだから」

 ドクン、と胸が波打つ。

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


発達障害児の長男 児童精神科で勧められた「プレイセラピー」を受けたら
 ステップファミリー6年目になる占い師ライターtumugiです。私は10代でデキ婚→子ども2人連れて離婚→シングルマザー...
ちょいワルと見せかけて…実はおしゃべりな“たまたま”にキュン
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
ソロウエディングってなに? 痛いとは限らない意外なメリットと注意点
 最近流行っている「ソロウェディング」をご存知ですか? ソロウェディングは、一人で結婚式を挙げたり、ドレスを着たウェディ...
太陽のように明るく!「娼」の成り立ち、知っていますか
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
中途入社ちゃん「ご迷惑では ご都合は ご連絡は」接客AIか?気遣いすぎ
 人への気遣いは大切。まったく気を遣わなければ、ギクシャクしたり口論になったりするため、最低限の気遣いは必要でしょう。 ...
眼内コンタクトレンズ「ICL」装着で視力0.1→2.0!最も感動した景色は
 小学生から分厚いメガネをかけていたド近眼人生ですが、37歳で思い切ってICL(眼内コンタクトレンズ)の治療を受け視力が...
新しいことに挑戦してみよう! 40代からのおすすめ習い事6選
 40代になって、「何か新しいことに挑戦したい」と感じる人は多いようです。でも、いざ習い事を探してみると、たくさん種類が...
「空」と「海」と「風」と…すべてが揃った特別な場所
「空」と「海」と「風」と…すべてが揃った特別な場所。  あの電車から、あのヨットからはどんな景色が見えるんだろう?...
今すぐやめたい40代のやばい口癖 ネガティブな言葉で人生ダメになる?
 口癖は、なかなか自分では気がつかないものですよね。ポジティブで前向きな口癖ならいいのですが、中にはネガティブすぎてやば...
【失敗談】人とモメないために重要なのは我慢よりも確認!
 みなさんは人と意見が違ったら、「まあ私が我慢すればいいか」と思うタイプですか?  私はずっと我慢するスタイルで生き...
海外旅行前に確認を!体力・モチベ温存、飛行機内で便利だったアイテム
 コロナ禍が収まりつつあり、海外旅行に出かける人も増えてきました。  ハワイ、NY、パリなどへ向かう長距離フライトに「...
セクシーウインクに悩殺寸前! “たまたま”を拝んで正気を保つ
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
春節に欠かせない「柑橘類」は金運アップの鉄板アイテム!
 まもなく中国圏の方々にとってのお正月「春節」がやってまいります。中国のお正月はワタクシの旦那様がシンガポール駐在時に現...
菜の花を食べると「いけないこと」をしている気分がする
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。  動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシ...
添い寝&ストレス監視!ガーミンのスマートウォッチ「Lily 2」その腕前は
 ストレスや疲れが貯まってくると、口唇ヘルペスができて黄信号を発する我が身体。よくできたヤツめ、と感心しますが、そもそも...
後輩社員の「大丈夫かと」「可能性高いかと」“かとかと”語尾にもやもや!
 誰かと会話している時に、語尾にイライラもやもやしてしまうことはありませんか?  流行り言葉は目まぐるしく移り変...
2024-01-30 06:00 ライフスタイル