「ここであきらめたら、試合終了だよ」
奇跡的に着用できた10年前に購入した水着で、いざ、プールへ。確かに芋洗い状態が嘘のように広々としたプール。室内温水プールに加えて、夏の屋外と幼児用タイプのプール、観客席も用意されている。さすが東京はプールまで田舎とは違った設備が整うのか。
まずは手始めにとフリースペースでウォーキング。当たり前だが地上よりも負荷がかかるので、ゆっくりゆっくり…。横向き、後ろ向き、ジャンプをしながらといくつか歩くパターンを用意した。時にはすっと歩き、水中の気持ち良さを確かめる。何日かウォーキングをこなしたあと、ビート板を使ってついに泳ぎ始めた。ここまでは普通にクリア。そして得意の平泳ぎを開始すると、50mをギリギリ泳げるというヒーハー状態…。情けない。昔取った杵柄なんぞ、木っ端微塵。ここにいるのは脂肪増量、筋肉量減のおばさんだ。
「ここであきらめたら、試合終了だよ」
突然、脳内にこだまする、マンガ『SLAM DUNK』の安西先生のセリフ。私は万年運動不足の自分が泳げそうなプログラムを考えた。
・柔軟体操、ストレッチ
・水中ウォーキング500m
・ビート板泳400m
・平泳ぎ400m
どれも続けて泳ぐのではなく、50mを泳いだら休憩なり、ウォーキングなりに切り替える。これなら1時間半以内に収めることもできるので、水中の冷えも心配がない。よし、泳ぐ! 気分だけはマーメイド!
筋肉痛の回復には2日かかる
そんなこんなのほぼ思いつきで始まったような、おばさんスイミング。週2回と決めて、時間を作って通うようにしたら、楽しいことばかり。このことを他人に話すとたいがいは反応が悪い。
「あ~、俺、海パンになるまでのハードルが高いんだよな~」
おいおい。女を抱くためなら秒で脱ぐだろ。確かに着替えるのは面倒かもしれないが、昔から泳いでいたおかげで私は抵抗がない。泳いだ後の夕飯はすこぶるおいしいし、気絶したようによく眠ることができる。欠点といえば筋肉痛だろうか。ネットには「水中なので筋肉痛もない」と書いてあったけれど、とんでもない。回復までに2日はかかるほど痛みと疲労感に襲われるので、始めようと思っている人は覚悟をしてほしい。
楽しい。これは続けよう。そう思って今年の元旦も泳いだ。今年の目標は年末までにクロール泳と背泳ぎの感覚を取り戻すことだ。そんなふうに意気込んでいたが、中年の運動には思わぬ落とし穴が待っていた。この続きは第20話にて。
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